第17話
次の日も、会社を休んだ。理由を深く考えずに、昨日と同じ文面を送る。送信してから、胸の奥が少しだけ軽くなる。逃げている気もするけど、今は、それでいいと思えた。
昨日、あの子にLINEを送ったことを思い出す。全部が解決したわけじゃない。死にたい気持ちが消えたわけでもない。それでも、一人じゃなかった、という感覚が残っている。これからも、何かあったら話そう。お互いに、そういう約束をした。
少しだけ、外に出てみようと思った。部屋にいると、考えすぎてしまうから。寒くて、コンビニに寄って、ホットミルクティーを買った。手に伝わる温かさが、じんわりと広がる。
夜の公園は、人が居なかった。
ベンチに座って、ミルクティーを飲みながら、ぼーっと空を見上げる。星は多くないけれど、それでも、ちゃんとそこにあった。
しばらくして、ふと視界の端に、電灯に照らされた桜の木が入る。何気なく近づいて、枝を見上げた。何もないように見えたその先に、小さな、小さな蕾が膨らんでいる気がした。
まだ冬なのに。こんなところで、もう準備をしているんだと思う。
そのとき、今死んだら、桜は見られないな、と思った。満開の桜を、今年は見ないまま終わるんだな、と。
不思議と、その考えが、胸の奥に静かに落ちてきた。死ぬなら、桜を見てからにしよう。そう思った。
いつでも死ぬことはできる。だから、今じゃなくてもいい。そう考えると、少しだけ、息がしやすくなる。
先延ばしでもいい。自分が楽になるための考えでもいい。誰にどう言われても、これは私の人生だ。
桜が咲くまで。それまでは、生きていよう。ベンチに座ったまま、私は、そう決めた。




