第14話
アラームが鳴った。一度止めて、ティッシュをとって鼻をかむ。泣きすぎて目は腫れてる。
ティッシュも減りがはやい。仕事に行く気は、もうなかった。
スマホを手に取って、会社の連絡先を開く。指が少しだけ迷ってから、体調不良で休みます、と短く打った。理由を考える気力もなかった。送信して、画面を伏せる。それ以上、何も考えなかった。
今日は動かなきゃいけない日のはずだった。死ぬと決めたなら、準備をしなきゃいけない。天の川を見に行く場所を調べて、服を選んで、外に出て。頭では分かっているのに、体がついてこない。
ソファに座ったまま、ぼーっとする。時間が、勝手に流れていく。時計を見る気もしない。ただ、窓から入る光が、少しずつ変わっていくのを眺めていた。
喉が渇いて、水を飲む。それだけで、少し疲れる。またベットに戻って、何もしない。考えようとすると、頭の中が重くなって、思考が止まる。
気づいたら、眠っていた。目を覚ますと、部屋は暗くなっている。夜だと分かるまで、少し時間がかかった。
また水を飲む。体が私が動くのを否定しているように感じた。
結局、何の準備もできなかった。天の川のことも、ホテルのことも、家の整理も、遺書も頭の中にあるだけで、形にならない。
気づいたら、また夜中になっていた。今日も、何も進まなかった。決めたはずの一日が、ただ、過ぎていった。




