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〈閑話〉そう、これは偶然散歩道が重なった的なアレ(後編)


―――森の奥に向かって歩くこと10分。

予想通りというか何と言うか、キョーヤは多数のグレイザーディアに囲まれていた。


一頭一頭ならCランク程度の弱いモンスターだけれど、群れとなればその分難易度も格段に上がる。

個体数は、1、2、3………11、12頭!? かなり多いほうだわ。

さて、この状況をどうやって切り抜けるのか……お手並み拝見ね。


ピタリとその歩みを止めたキョーヤが、彼を取り囲むグレイザーディアたちの数と位置を把握するかのように周囲を見回す。

ゆっくりと腰に携えた剣の柄に手を掛け、一思いに鞘からその刀身を抜き放ったと同時に、彼を取り囲んでいたモンスターたちが一斉に彼を目掛けて突撃し始めた。

抜き放たれた刀身に恐れをなしたのか、グレイザーディアたちが一斉にキョーヤに向かって迫る。




―――いざという時いつでも助けに入れるよう、私も準備を整えていたけれど、それは杞憂に終わった。


勝負は一瞬だった。



他の個体に比べ若干早く突撃してきた一頭の頸をすれ違いざまに刎ね上げるように落とし、即座にその隣の個体のも振りかぶった刃を切り返して切断。

さらに背後に近づく二頭の頸をまとめて横一文字に斬り飛ばし、残る個体目掛けて空中に跳躍。


八頭が見上げる中、そのド真ん中に華麗に着地し、円舞を舞うかのような一閃が彼らの頭と胴体の間を走り抜ける。

同時に鮮血を吹き出した八つの頸が地に落ち、それを支えていた体も崩れ落ちるようにして横たわった。



彼が初めの一頭に向かって駆け出してから12頭すべての頸を切り落とすまでにかかったのは実に3秒程。あの数のグレイザーディアの群れならBランク上位に相当してもおかしくないレベル。なのにそれをたったの3秒? 悪い冗談ね。


それに、この私でもギリギリ目で追える程のスピードと剣捌き。

アレは間違いなくモンスターとの戦闘を幾度も経験していないとできない動きよ。決して一昨日冒険者になった“初心者”の人間ができるものではないわ。そう考えるとやはり彼、Dランク以上の力を持っているのは確かなようね。



「よしっプニタ、またいつものやつ頼むわ」


彼がそう言うと、肩に乗っていたスライムがぴょんと飛び降り、薄い水色から金色へと体の色を変色させる。


体色を変化させるスライム? まさか変異個体!?


呆気にとられていると、その“プニタ”と呼ばれたスライムは差し出された剣を包み込み、瞬く間に血の汚れを綺麗にしてしまった。


確かにスライムには捕食した獲物を体内に取り込んで溶かす習性がある。でもまさかあんな使い方があったなんて……! これはスライムの獣魔化が流行るかもしれないわね……


でもキョーヤ、本番はここからよ。

冒険者の依頼はモンスターを倒すだけでは終わらない。今回みたく、その肉を必要とする場合は丁寧に村まで持って帰らないといけないのよ。その12頭ものグレイザーディアをどうするつもり?



「プニタ、今から()()開くからちょっと離れてろよー?」


彼が何かブツブツと呪文のようなものを唱えると、地面が歪み先の見えない黒い空間が出現する。


「ほらどんどん入れてくぞー、それっ!」


キョーヤとプニタの二人作業であっという間に12頭ものグレイザーディアを投げ込むと、何事もなかったかのようにその黒い空間は綺麗さっぱり消滅した。




―――う、嘘ッ……まさかあれ、空間魔法!?


あまりの出来事に思考がフリーズする。


だとしたら昨日彼にこのポーチを自慢した私がバカみたいじゃない!! 家一軒分は入るとか言ったけど、魔法ならその容量は無限に近いはず。

彼、私のポーチを見てきっと内心笑っていたに違いないわ。くっ……覚えておきなさい!




◆ ◆ ◆


無事に村にグレイザーディアを運んだ後、キョーヤはまた再び森の中に入っていった。おそらくは二つ目の依頼、バーニングボアの討伐のため。


彼らは単体では然程強くない方に分類されるけれど、それには理由がある。常に体毛に炎を纏っているバーニングボアは、なぜかは分かっていないけれど水に恐ろしいくらいに耐性が無い。

どれくらい弱いかと言うと、水を飲むために川に近づいた際、誤って川に身体を深く浸けてしまっただけで死んだ例が確認されている程。


しかしその一方、纏う炎の勢いは凄まじく、斬り掛かっていった剣士の持つ剣を一瞬で溶かしてしまうくらいの高温を放っている。


あ、噂をすれば何より。

早速現れたわ。さて、物理職であるキョーヤがどう立ち回るかは見ものね。







「水が弱点か……なら、ほいっと」


大量の水が空中で球状に生成され、プチッと弾けたかと思えば、滝のように一気にバーニングボア目掛けて降り注ぐ。一歩も動かず、勝負は呆気なく着いた。


「ふぅ、少量の水で水蒸気爆発起こされても困るからこれで済んでよかったぜ」


な、な、なぁぁぁあ!?


驚きの連発に危うく声を出しかけたけど、すんでのところで耐える。


なんでこの人普通に魔法まで使ってるのよ!! しかもあれ程大量の水を瞬時に生成できる魔力量があるってことでしょう?

仮に空間魔法はスキルとして元々所持していたとしても、今使用した水魔法は何? 後天的に習得したとでも言いたいわけ? あの剣術の腕前に加え、魔法の使用……もう何がなんだか分からなくなってきたわ。




情報過多で思考回路がパンクし、しばらくその場でぼーっと立ち尽くしていた私は本来の自分の受注した依頼である薬草採集を無心で手短に片付け、オリージネへの帰路についたのだった。

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