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I'm back!

『キョーヤー、このあとどこ行くのー?』


「うーん、とりあえずここに初めて来た時に出てきた森かな。ハラルドから貰った地図によると“魔の森”って言うらしい。あそこなら多分、何かしらは生えてるだろ」


『あの薄暗い森に生えてますかね? もうすこし陽当たりの良いところを探した方が……』


「陽当たりの良い場所ねぇ……」


ん? 陽当たりの良い……群生してる薬草……誰も手を着けてない……豊潤な魔力………いいところがあるじゃん! というかあそこなら、例の薬草も生えてるかもしれないしな。



『どこか心当たりでもあるんですか?』


「あぁ! 多分俺くらいしか自由に出入りができない、とっておきの場所だぜ!」


『まさか……!』


「ハハッ、そのまさかだよ!」






取り敢えず30分ほど歩いて魔の森の奥の方までやってきた俺達は、周囲に人がいないことを確認してから一旦その足を止める。


『つい昨日までいたっていうのに、本当にまた行くんですか?』


「その方が収穫多そうだし、いいだろ別に」


ふうっと一息ついた俺は呼吸を整えて、手を何も無い空間に向かって真っ直ぐ突き出す。


「『世界の扉よ、開けオープン・ザ・ワールド』!」


手を突き出した先の空間が歪み、ワープホールのようなものが形成される。くぐり抜けるとその先に広がるのは、つい先日まで居た思い入れのある場所。


たった一日離れていただけだったけど、なぜかすごく懐かしく感じる。呪いの破壊とかいうクソみたいな使命がなければ、老後はこの空間で小屋でも立ててのんびり暮らすのも悪くないかもしれない。


それにしてもやっぱりここは外界と比べて魔力濃度が遥かに高い。しかも何て言うか、草の一本でさえも外のモノより輝いているような気がしなくもない。やっぱり見立通り、ここなら質の良い薬草を探せそうだ。


「じゃあ早速あの辺りを―――」





………己の存在を誇示するかのように放たれているこの気配。他者を圧倒するこの強すぎる魔力の波動。間違いない、奴がこの近くにいる。


サッと見回したけど見当たらないってことはおそらく人化状態なんだろうな。だけど、魔力の波動が強すぎてどの辺にいるのかがイマイチよく分からない。


でもまぁ多分()()()にいるだろうという予想のもと、俺は木々の間をくぐり抜け、例の樹木が育たず、薄っすらと草が生えるだけの開けた場所に出る。





離れていてもすぐに視認できる、そよ風に(なび)く美しい銀髪。

俺の気配に気づいたのか、その御髪の主が腰掛けていた切り株から立ち上がりこちらを振り返る。


『おぉ、お前もう戻ってきたのか!? なんだ、外の世界が合わなかったか?』


「違ぇよ、単にこの森に生えてる薬草を少し貰いに来ただけだ。少しくらい採っていってもいいだろ?」


『我はもう、この龍獄の杜の正式な管理人ではない。だからそこら辺は全部お前の裁量に任せる』


「分かった。あとさ、この辺にエリクシール草って生えてたりしねーか?」


『うーむ、そのエリクシール草とやらが何かは知らんが、そこの我の後ろに群生している白銀の花弁のやつが見えるだろ? アレは空気中の豊潤な魔力と我から溢れ出す神気を吸収して育っているせいか、かなり質は良いと思うんだが』


ゼロノスの指さす方には、まるでそこだけ自ら光を発しているんじゃないかと錯覚するほどの輝きを放つ花々。

いかにも凄いです、って感じだけど、本当にこんなの採って大丈夫なのか?


「ナビさん、これなんて名前の草か分かる?」


『……すみません、私のデータベースには登録されてないものですから分かりません』


「そっかー、ならコイツが安全かどうかを確かめる方法はある?」


『あ、はい! それならその草を一本引き抜いてすり潰した時に出てきた汁を皮膚に塗布してその反応を見ればいいんです! もし毒草だったら皮膚が被れたり、爛れたりしますけど、そうならなければ大抵は薬草って感じで見分ければいいんですよ』


「なるほど、パッチテストで試せってことね」


『そのパッチテストなるものが何かは分かりませんが、今ご主人様が頭の中に浮かべてるものがそうならそれであってますよ!』


『キョーヤー、ボクもね薬草と毒草を見分けられるんだよー!』


「へぇ、どうやってやるんだ?」


『簡単だよー! とりあえず食べてみて美味しかったら薬草、美味しくなかったら毒草って! ボクは今まで色んな種類の草を食べてきたからそーゆーのが分かるんだー!』


「すげぇじゃん! なら俺と一緒に試してみようぜ?」


それ多分プニタにしかできない判別方法だぞ、というツッコミは他所に俺達は一株ずつ白銀に輝く花を摘む。

これを絞るん……だよな? こんな綺麗な花を握り潰すのには少々気が引けるが。


となりであーんと大きな口を開けて花を放り込み、むしゃむしゃしてるプニタを見て、なんかこれしきのことで悩んでるのがバカらしくなってきた俺は迷わずその手を強く閉じた。


握られた拳がじんわり熱くなってきたな。痛みは無いからもう少しこのまま続けてみよ―――


『ご主人様! すぐに手を開いて下さい!!』


突然響いたナビさんの声に、俺は慌てて握っていた花を空中に放り投げた。


「急にデカい声出すなよぉ、ビックリするじゃんか」


『へぇー、今私が止めなければご主人様の手、爆発してましたよ?』


「んなわけ―――!?」


赤く爛れた右手を見て思わずギャッと声が飛び出た。

別に出血があるわけじゃないし、痛みも感じない。でもこの症状どこかで―――


「過剰回復か!」


かつて俺がこの龍獄の杜の洞窟の奥にあった泉の高濃度魔力水。アレを怪我もなく、魔力もほとんど使用してない状態で飲んだときの感触に近い!


『ご主人様の想像通り、この花の汁には過剰回復の効果があるようです。しかもその効能は例の高濃度魔力水の約三倍程もあるかと思われます!』


「あの水の三倍ィ!? それは控えめに言ってヤバくないか?」


『ヤバいですよ? でもその代わりと言ってはなんですが、高濃度魔力水より性能も上がっているみたいです』


「アレ以上に性能上がることなんてあんのかよ」


『高濃度魔力水が可能なのはあくまで肉体の損傷の治癒のみであって、病気の治療は不可能です。しかしこの花なら適切な方法で抽出し製薬すれば病にも効く、それこそその言葉通りの“万能薬”として使えるかもしれません』


「ならこの花をもって帰るのは『アリ』だな?」


『はい! ですが、使用方法を間違えるとそこのプニタのようになりますから十分注意が必要かと』


振り返ると地面にぐでーっと溶けてるプニタが目に入る。


「え、お、おい! プニタ! しっかりしろ!」


『キョ〜ヤ〜、これーすっごくおいし~い! けどぉ、なんか眠くなってきちゃった〜』


「ナビさん、これ大丈夫なのか!?」


『まぁ特に問題はないと思いますよ? ただの酩酊状態ですからね』


「モンスターって酔っ払うのか?」


『人間が酒に酔う酩酊とは少々意味合いが違いますが、気分が良くなって思考能力が低下するという点ではそうですよ!』


「はぁーっ、それならとりあえずプニタが回復するまでここにいるしかなさそうだな」


『むっ!? それなら我と戦闘でも………』


「誰がするかーッ!!! 俺の体が保たねぇよ!!」


どーせ今のお前はこの間より格段にパワーアップしてんだろ?

気配っつーかオーラからして、レベルアップした今の俺でも一切歯が立つ気がしねぇ。


体内に巣食ってた呪いも無くなったって言ってたし、今のこいつは多分この世界で一番強い……気がする。“神龍”ゼロノスだし、名前の通りだと言われりゃ妥当っちゃ妥当だが。

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