たのしいたのしい二者面談・驚愕
「ユニークスキル? あぁ、持ってるさ。【雷霆】ってもんなんだが、こいつのおかげでSランク冒険者になれたと言っても過言じゃない」
………ん? は? 今サラッととんでもないこと言わなかったか、このオッサン!? ここで更に二発目の爆弾情報投下か?
「………え? 俺の聞き間違いじゃなければ、今Sランク冒険者って言いませんでした??」
「うん? 言ってなかったか? もう引退はしたが、俺は元Sランク冒険者だぞ」
そういう重要な情報は模擬戦をやる前に教えてくれよな!! まぁ、教えてもらったから何だという話ではあるが。
だが、これで納得がいった。道理であんなに強かったわけだ。というか、引退してあの実力なら現役時代はどんな化物だったんだか。
「おいおい、そんな変な顔するな。今の俺と十分にやり合えた時点で、君は最低でもAランク程度の実力は持ち合わせているんだから、もっと自信を持て。規則でDランクからしか始めさせてやれないのが非常に口惜しい」
俺の今の力が丁度Aランクか……Sランクとやり合うにはまだまだ修業が必要そうだ。
「ハハハ、いきなり新人がそんなに高いランクから始めてしまっては、先に登録した人達から恨みを買いますからね。Dランクは妥当だと思いますよ」
「そうか? 君ならそんなことにケチつけて来る奴らなんぞ一蹴できると思うんだが」
「そんなことしたら増々俺の立場が悪くなるじゃないですか」
「それもそうか。ならこの話題はこの辺にして二つ目の質問に移ろう」
俺とマスラルの間に再び緊張が走る。如何にして上手く情報を引き出すか試行錯誤するマスラルに対し、俺は如何に上手く尋問をかわすかという、水面下での静かな戦いが始まった。
「まず君が今まで言ったことを時系列順にまとめるとこうだ。一人きりで家から追い出され、割とそのすぐ後にモンスターに襲撃された。そしてその後旅をしてこの街に流れ着いた、と。間違いないな?」
「はい、合ってます」
「となると、君は野宿しながら鍛えたとはいえ、その実力をモンスターに襲われてから一文無し状態で旅している最中に身につけたことになるんだ。野宿の用意もない丸裸の状態ではもって1、2週間が限界だろう」
「そうですかね?」
「普通ならそうだな。もうこの際、率直に聞こう。……君は何処から来たんだ?」
流石キルドマスター、鋭いぜ………だけどこういう場合のテンプレ回答もあるんだよな。
「遠い東の国からやってきました。ほら、この辺りではあまり見かけない髪色でしょう?」
髪を一束ほど掴んでマスラルによく見えるように軽く振ってみせる。
「いいや、東国から来ているのは何となく分かっていたが、俺が聞きたいのはそこじゃあない」
ってことは、まさか―――
「―――聞き方を変えよう。君はこの街に来る直前まで一体何処にいたんだ?」
やっぱりそう来たか………
さて、俺はこの問いにどう答えるべきだ?
馬鹿正直に「龍獄の杜から来ました〜」って言うか、もしくはそこら辺の森からとでも言うか。後者の場合だと100%さらなる追求が来るのは分かりきっている。だからといって前者を選べば、これまた深ーい追求が待ってるに違いない。
そして仮に、この問いに対して嘘を吐いて一時逃れたとしても、この契約による制約上、俺の命が危険になる可能性もある。
つまり、この状況を一言で表すと………そう、詰みってやつだ。
「……………」
「この質問には答えられないのか? それとも答えると何かマズいことがある………そうだな、君は犯罪者ギルドからでも来たのか?」
「え? 犯罪者ギルド……??」
「所謂不法者の集まりだ。まぁ、その様子だとギルドの存在自体知らなそうだし、今は深くは言及しない。ただ、もしこの問いにどうしても答えないというのなら、そう認定せざるを得ないかもしれないがな?」
「俺を、脅してるんですか?」
「こっちは高い金払ってまで契約を準備したんだ。ならそちらも事実を話すのが筋ってものだろう?」
マスラルは何も間違ったこと言っちゃいない。元よりこの契約は俺から持ち掛けたものだ。それに俺が応えないってのも、不義理でしかないよな。
「………分かりました。ですが、俺自身にもよく分からないことが多いので、マスラルさんが満足できる情報かは分かりませんよ?」
「それでも良い。取り敢えず言ってみろ」
「はい。まず家を追い出されて直ぐに―――」
俺はできる限りの情報を伏せて、その場の景色のみをマスラルに説明した。“龍獄の杜”なんて名称も出してはないし、まずもって気づかれる可能性は低いだろう。
「ふむ、家を出た直後に意識を失い、目が覚めたら見知らぬ森にいた。そしてその直後にモンスターに襲われ、命からがら逃げ出し、その森にあったキノコと木の実だけで命を繋いでいた。だが、また急に意識を失って再び目覚めたら今度はこの街の近くの森にいた、ということか?」
「要約するとそんな感じですね」
「非常に信じ難いが、君がまだ生きているところを見る限り嘘ではないようだな」
やっぱりこの契約、嘘吐くと即死するのか………
よかったぁ、ぼかしはしたけど正直に言っといて。人間正直に生きてナンボだよ。嘘って良くないよね、うん。
「俺が知る限り、そういった現象が起こり得るのは古代からある迷宮か上位存在の支配領域くらいだ」
「上位存在?」
「俺達人間の理の外側にいる者たちの総称だ。神に仕える神獣や天使、もしくは最上位の悪魔なんかがそれに該当する。君が迷い込んだ場所は聞いた感じ迷宮ではなさそうだから、恐らく何かしらの支配領域だろう」
流石ギルドマスター、この情報だけでそこまで辿り着くか! あの龍獄の杜だって元は、神龍ゼロノスの領域だったっぽいし、マスラルの予想は間違ってはないと思う。
「へぇー、あそこがそんな場所だったなんて思いもしませんでしたよ」
「俺も今、上位存在の領域からの生還者を目の当たりにして内心驚きが止まらないさ。かつてその場所に足を踏み入れて、帰って来られた者の記録なんぞ見たことないからな!」
「偶然ですよ、偶然」
そう、偶然なんだ。俺が龍獄の杜に初手でいきなり飛ばされたのも、そこで最初に遭遇したのが破天丸だったのも全て偶然だ。不運に引き寄せられるように偶然が重なっただけの話。
「なら余程幸運だったんだな」
「それはないですよ、穏当に幸運なら始めからそんな場所に迷い込みませんって」
「それもそうか。よし、なら次で最後の質問にしよう」
マスラルがついに“最後”という言葉を口にする。
つまり、これさえ乗り切ってしまえば俺は晴れて自由の身ってわけだ。




