表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪魂転生 〜不運の象徴が征く異世界破呪の旅〜  作者: 鷹藤ナス
唸れ闘魂 汝、武王と成れ【武王祭篇】
52/84

ダブルブッキングは世の常

『少しいいですか、ご主人様』


『どうした、急用か?』


『はい。この記入用紙ですが、所持スキルの欄は苦痛耐性と抗魔力だけにしておいた方が良いかと思われます』


『それまたどうして。何、俺は真の実力を隠して〜的なやつか?』


『何れにしろそうなってしまう可能性はありますから、それがやりたいならそれでも良いかもしれないですけど、今回の場合は少々意味合いが違います』


あれ、割とネタ的な感じかと思ったけど真面目な感じかこれ?


『ご主人様の場合、所持しているスキルのほとんどは“獲得”や“授与”されたものではなく、“習得”されたものなので、あの水晶玉にはそれらが反映されない可能性があります。そうすればご主人様は所持スキルを詐称したとして、下手したら罰せられる可能性も有り得るかもしれません』


『な、なるほど………じゃあその通りにさせてもらうよ』


思っていたのより割としっかりした理由に少し驚きつつ、俺は所持スキル欄に『苦痛耐性』と『抗魔力』の二つだけを記入する。


『ってかナビさん、これ『抗魔力』も“習得”したものだからダメなんじゃないか?』


『いえ、このスキルは割と一般的に普及しているのでさほど問題はないかと思われます』


なら良いけど、これで犯罪者め! とか言われたらたまったもんじゃねぇぞ。






「エフティミアさん、これでいいですか? 取り敢えず書けるところまでは書いてみたんですけど」


「はい、お預かりします。わざわざ私のこと名前で呼んでくださるなんて親切にありがとうございます。あ、お兄さんはキョーヤさんって名前だったんですか! 素敵な名前ですね。これからよろしくお願いします!」



わざわざ名前で読んでくださる………??



「もしかして、名前を呼ぶのは一般的ではないんですか?」


目の前に置かれた水晶玉に手をかざしながらエフティミアさんに尋ねる。


「はい、大抵の方は『受付嬢』か『ねぇ、』や『おい』、『なぁ』、『そこの』としか話しかけてくださらないんで新鮮でしたよ!」


ハハハハハ、それは良かった。でもそんな笑顔で言われると、ちょっとこっちも困るってもんだ。


「はい、特に問題は無かったようなのでこれで登録完了です。入会試験は今日と明日の二日の中のどちらからかお選びいただけますが、どちらになさいますか?」


特に何をする予定もないし、今日中にやっておくか。


「今日でお願いします」


「分かりました。では昼過ぎ頃から始まりますので、その時間になったらまたここにお越しください。あ、あとキョーヤさん、本日泊まる宿などはご予約されてますか?」


「いえ、全くしてないですね」


「それなら、ここを出て正面にギルド直営の宿があるんですけれども、冒険者登録をしてから2週間の間は無料でご宿泊いただけますので是非ご利用ください!」


マジで助かるなそれは。龍獄の杜から出てきたばっかりで一銭も持ってない俺からすると本当に感謝しかない提案ですよ。やったぜ野宿回避!


「今この時間からでも部屋開いてますかね?」


「おそらく大丈夫だと思いますよ」


「色々親切にありがとうございました!」


「いえいえ、こちらこそ! またお昼過ぎにお待ちしております」






俺はエフティミアさんの丁寧な対応にとても満足しながらギルドを出て、目の前のギルド直営の宿とかいう所に入る。


「あら、兄ちゃんいらっしゃい。宿泊予定かい?」


少しふくよかで元気そうな受付のおばちゃんが大きな声で俺に話しかけてくる。


「あ、はい。つい先程目の前のギルドで冒険者登録をした者で……」


「おぉ、新規さんかい! これから頑張りなよっ! そんで部屋なんだけどね………」




ん? この流れはもしや―――


「もう既に満室なんだよぉ! ごめんねぇ、ちょうど改修工事とパーティ単位での宿泊が被っちゃってて」


だと思ったよ。よくあるよね、旅先で部屋がダブルブッキングされてるとか、急に水漏れして使えなくなったりとか。おのれ不運!! ってかエフティミアさーん、全然大丈夫じゃなかったですよぉ!!


「無一文だし野宿決定かぁ………」


「兄ちゃん金も無いのかい? そんなんじゃすぐに野垂れ死んじまうよ! あぁ困った、このお兄ちゃんをどうにかしないと、あたしゃ心配で安心して日課のお昼寝ができないよ」


その絶妙に心配してるんだかしてないんだか分からないラインなの何なんですかね?


「そうだ! 長らく物置としてしか使われてなかった屋根裏部屋があるんだけどそこでも構わないかい?」


「えっ、そんな所あるんですか?」


「あるにはあるんだけど、家具類が一切なくってねぇ。だから一緒に掃除と家具の搬入を手伝ってくれるんならその部屋を使わせてやることはできるよ。ただ、()()()大変だと思うけどね」


「喜んでやらせていただきます!」


掃除と家具の搬入だけで野宿回避できるんなら喜んでやるわ。


「じゃあ兄ちゃん、あたしについてきな!」





おばちゃんの後についていくと、一部屋にしてはかなり大きいであろう屋根裏部屋に到着する。だけど―――


「ここを掃除するんですか………?」


クモの巣だらけの天井。

色んな所に落ちているよく分からないゴミ。

窓は半分割れかけていて、当然の如くネズミみたいなのがそこら辺をすばしっこく走り抜ける。


確かにかなり大変だとは言ってたけれども、これ本当に人が生活していい空間か?


「そうだよ、ここの掃除を兄ちゃんにやってもらおうと思ってね。あたしは一足先に家具類の準備をしておくから掃除は頼んだよ! バケツとブラシはそこの扉を開けたらあるからよろしくね! あ、あと水はこの建物の裏にある井戸から汲んでちょうだいね」


そう言い残すとおばちゃんはバタバタと階段を降りていってしまった。


「……………マジかよ」


『うわぁ、中々に酷いですねー』


『ねーキョーヤ、これならボクにまかせてよ!』


ポケットの中からプニタがぴょんと飛び出してくる。


「プニタ? お前がこの惨状をどうにかできるってのか?」


『ふふふー、忘れちゃだめだよキョーヤ。ボクはスライム、どんな毒だろうと危険なものだろうとボクに食べられないものなんてないんだよ!』


「すっげぇ頼もしい発言だな。んじゃあこの部屋全体をくまなく綺麗にできるか?」


『うん! ちょっと離れててねー』


プニタが部屋の中央に向かって跳ねていき、俺はプニタの指示通りドアを開けたまま一旦部屋の外に出る。

中央で止まったプニタは段々と巨大化していき、屋根裏部屋を隙間無く埋め尽くした。




『いくよー、【暴食(グーラ)】!』




あれかぁ………なるほどね。

龍獄の杜にいた時、食べた動物の骨なんかは全部プニタが吸収して溶かしてたもんな。


本来なら敵の攻撃を喰らったり、自分より弱い敵ならその存在ごと喰らい尽くして消化してしまう危険度MAXな技なんだが、まさかこんなことにも使えたとは驚きだ。


部屋にこびり付いていた、ありとあらゆる汚れやゴミなどが全てプニタの中に取り込まれては瞬時に消化されて消えていく。

20秒程で全ての汚れを吸収・消化しきったプニタは再び元の小さなサイズに戻ってドアの外で待つ俺の所にやってきた。


『おわったよー!』


瞬く間に天井までピッカピカになった部屋を見回して俺は感嘆の溜息を漏らす。


「すっげぇ、埃一つ落ちてないよ」


先程まで埃が積もりに積もっていた窓枠もツルツルと言っていい程に綺麗になっている。何だか空気も澄んでいる気がするし、ここなら申し分なく2週間暮らせそうだ。






その後掃除完了の報告をした俺は、それを見に来て驚いて腰を抜かしたおばちゃんの代わりに一人で家具運びをやる羽目になり、決してふかふかとは言えないベッドの上で一眠りしたのだった。


(あとがきで暴食と龍喰の違いを入れる。暴食は単に消化するだけ。龍喰はそれを栄養分として己に還元する)

【教えてナビさん、暴食グーラと龍喰って何が違うの??】


破天丸の使用していた【龍喰】は喰らった対象を詳細に解析し、分解する。

細かく分解して吸収することで、喰らった存在を余す所なく己の成長の糧とし、より一層強くなる《成長型》。


プニタの使った【暴食】は吸収した対象をそのまま消化するだけ。

別に成長の糧にするわけでもない。すなわちただの《滅却型》。


だからこそ、【暴食】は【龍喰】よりも吸収速度が早く、副作用もほとんどと言っていい程無い。【龍喰】は吸収しにくい存在を喰らったらデバフが使用者に掛かるけど、【暴食】はそれがないと言った具合に。



両方「吸収する」という点では同じだけど、目的がそれぞれ成長と破棄で異なるから面白いよね。


え? 結局【龍喰】と【暴食】どっちが強いかって?

いつか番外編で語られるかもしれませんなぁ………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ