神なる龍を超えるは真なる強者 其の十
『ご主人様! ご主人様! 起きてくださーい!!』
『キョーヤ! 起きてー!!』
「………俺、生きてんのか?」
『生きてますよ! もう丸一日もの間ずっと目を覚まさないので少し心配しましたが』
『やっと起きたー!!』
地面に寝っ転がってる俺の上でプニタがぴょんと跳ねる。
「そうだ。ゼロノス!! あいつはどうなった!?」
『おう、我ならここにいるぞ?』
聞き慣れない声に驚いて急いで上体を起こし、声がする方を振り返るとそこには―――エッグいイケメンがいた。
「え、誰よアレ。……まさかあのイケメンがゼロノスとか言わないよな?」
銀色の長髪から覗く美しい双角。真紅の瞳。
なんかすげぇゆったりした古代の人々が着てそうな服、アレは確かキトンだっけか?
背丈は2mくらいかな、俺の二回りくらいはデカい。
『あれはゼロノスの人化した姿だよー! ボクも見るのは二回目くらいかなー』
「…………」
『ハハッ、なんだ? 我のこの姿に見惚れでもしたか?』
体感、自分の中ではつい先程まで死闘を繰り広げていた相手が大きく変容したであろうその姿に、脳の情報処理が追いついてない。
「………するかボケェ! ってか何でお前そんなに急にフレンドリーになってんだよ? ついさっき(?)まで『貴様の息の根を止める!』的な感じだったのに」
『お前は我を見事倒したからな! もう敵対する理由はあるまい!』
だからなんでそんなニコニコしてるんだって………むしろ怖えよ!
だけどここで一つ疑問が生じる。
「倒したって言っても、お前死んでないじゃん。いいのかそれで?」
『うむ。別に何も、必ず“殺せ”と言っているわけではないしな。それに最後にお前が投げた剣、あのおかげで我は今すこぶる調子が良いのだ! ここ200年で一番と言っても過言ではない!』
「いや、俺特に何も狙ってないんだけど……強いて言うならあの刀、ってあれ? どこ行った?」
『はい、これ! 拾ってきたよー!』
プニタが鮮変萬果をその丸い体に乗っけて、俺の側まで持ってきてくれた。
「お、サンキュープニタ! そうそう、でこの刀が勝手にお前の中っていうのかな、まぁなんて言ったらいいか分からねぇから取り敢えずそう呼んどくけど、そこに見えた黒い靄みたいたいなやつ目掛けて飛んでいったんだよ」
『ほう? やはりお前にも見えていたかアレが』
「見えちゃマズいものなのか?」
『いや、普通の人間には見えないはずだが、お前の中に眠っている4つの絶大な呪いのせいで知覚できているのかもしれないな』
「確か破天丸も同じこと言ってたな。俺の魂が上位の存在に呪われてるって」
『奴も気づいていたか。我も先程の戦闘中のお前の状態に違和感を感じてな、お前がまだ目を覚ます前にお前の精神世界に入ってみたのだ。
そしたらすごく安定はしているものの、それ一つを施すだけでも一国の民すべての命を対価として捧げないといけないくらい強い呪いが4つもあって、それはそれは驚いたさ。
それにお前が我の中に見たと言った黒い靄、アレはお前の中に眠る呪いを弱めたようなものだ。だからこそ見えたのだと思うぞ?』
「そんなヤバい呪いを破天丸の奴、一人で丸々一個破壊したんだろ?」
『それは初耳だが、初めに我に会ったときに言っていた『俺を助けて消滅した』というのはまさかこれのことか?』
「あぁ、そうだよ」
『成る程、流石は冥鬼だと言わざるを得ないな。まぁその剣の活躍も大きいみたいだが』
「鮮変萬果の活躍?」
『あぁ、我の中の呪いも、どうやらその剣が破壊してくれたようだぞ』
「こいつに呪いを破壊する機能なんてあるのか………?」
『我はそういった事の専門ではないから分からんが、もし武具に詳しそうな奴に出会ったら尋ねてみると良い』
「分かったよ。その口振りだと本当に俺をこの杜の外に出してくれそうだな」
『勿論だ。初めは冥鬼の力などを宿した悪人を外の世界に出すわけにはいかないと思っていたが、どうやらお前はそのような類の者ではなさそうだからな。
それに、お前に掛けられている呪いを解くならば、こんな場所にいるよりも外の広い世界を巡った方が良いだろう』
「ありがとな。なら言葉通りそうさせてもらうよ」
俺がそう言うと、ゼロノスが何かを手渡してきた。差し出された手に、反射的に俺はそれを受け取る。
「ん? これ………指輪、だよな?」
『あぁ、別にどこに填めても構わんぞ?』
「ここは無難に左手の人差し指だろ」
試しに付けてみると、指輪が眩しい光を放ち出した。
【神龍:個体名“ゼロノス”より『龍獄の鍵』の譲渡を確認―――『龍獄の鍵』が個体名“荒木 京也”に帰属化されます】
【『龍獄の鍵』の帰属を確認―――称号『龍獄の管理人』を獲得しました】
【『神龍の加護』を獲得しました。それに伴いユニークスキル『時空の理』が肉体に刻まれます】
【条件未達成のためユニークスキル『時空の理』の使用が制限されます】
「うへぇ」
『何だその情けない気の抜けた声は』
「いやだって、こんなヤバいものいきなりホイって渡されてビビらない奴がいると思うか?」
『ハハッ、もっと精神を鍛えるのだな』
「というか、この『龍獄の管理人』ってお前のことじゃないのか? 確か最初に会った時にそう言ってたよな?」
『掟では我を倒した者にその役割が移行するようになっていて、それがたった今、履行されただけのことよ』
「じゃあお前の今の役割は何なんだ?」
『…………』
「もしかしてニーt―――」
『我はここから出ていくお前の代わりにこの杜の“代理”管理人になるのだ』
おうおう、今急いで考え出した感凄いけどな。
本当かそれ? とは思っていても口に出さないのが礼儀である。
適当に相槌を打つと、ゼロノスが何か思い出したようにポンと手を叩いた。
『おっとそうだ、お前に我の加護とは別に渡しておく物がある』
「アレだけでもヤバいのにまだ他にあるのか………?」
『ほら、受け取れ』
ゼロノスが俺に手渡してきたのは白基調の上下の服とブーツだった。
【神龍:個体名“ゼロノス”より『天威武萌』及び『タラリア』の授与を確認―――両武具が個体名“荒木 京也”に帰属化されます】
「これは………?」
『ご主人様!! それ、大変な代物ですよ!?』
ナビさんのすごく驚いたような声が脳内に響く。
『驚くなよ? その服とブーツは我の龍鱗から造り出したものだ』
「……というと?」
『我が龍鱗は物理攻撃と魔法攻撃に絶対的な耐性がある。しかもお前の意志一つで自由にモードを選べるようにしておいた。見た目はただの服だが、そこらの古代龍の鱗などで作った鎧よりも軽く、数十倍は頑丈なはずだ』
何その超便利機能!? 確かに俺この世界に来てから服なんて換えたこと無いからずっとボロ布だったけどさぁ! これはあまりにも凄すぎねぇか??? 俺自身は全然違うけど、服だけチート説あるぞこれ。
『万が一壊れても自動修復機能が付いているし、防汚機能も体温調節機能も完備してある。色や形、大きさは自分で好きなものをイメージすればその通りになるだろう。これぞ文句無しの我の自信作だ!』
凄すぎて言葉が出てこねぇ………買い直す必要もなし、洗濯の必要もなし、ってお財布に優しすぎません???
◆ ◆ ◆
早速着替えてみたけど、体にジャストフィットしていてとても動きやすい。
まぁ、色は上下ともに真っ白なままだとアレだし黒く変えておこう。
『なんかゼロノス、旅に出る子どもを見送るおじいちゃんみたいだねー』
ぴょんと肩に飛び乗ってきたプニタがニコニコ顔でポロッと言った。
「…………」
『…………』
ピクッとゼロノスの動きが止まる。
周辺の気温が一気に下がった気がした。今までのあたたかい空気が急に吹雪に変わった気分だ。
プニタぁ、爆弾発言っていうんだぜソレ。
「そ、そうかもしれないけど、俺すげぇこれ嬉しいぞ!? カッコいいし、なぁ?」
そうかもしれないとか言うなよ俺の口!! 俺も動揺しまくりじゃんかよ、オイ!!
『そ、そうか! それは良かった!』
ゼロノスもなんか動揺してるし。まぁ何とかなったっぽいしこれでいいか。
「ゼロノス、こんなにいい装備を本当にありがとうな!」
『あぁ、何かあったらまたここに戻って来い、すぐに直してやる』
「えっ、ここに戻ってこれるのか?」
『その指輪、『龍獄の鍵』の持ち主はこの杜への出入りを自由にできる他に、この杜を自由に改造をすることもできるんだぞ?』
「へぇ、じゃあまた何かこの杜に用があったら戻って来るよ」
『そしたらその時は我の処にも顔を出せよ?』
『ゼロノス一人ぼっちでさみし―――』
俺は慌ててプニタの口をホールドする。危ない危ない、また爆弾を投下するところだったぜ………
「あぁ! ここに来たときは寄るとするよ」
『よし、では行って来い。見聞を広め、呪いを解く鍵を探すのだ!』
「出るときはどうすれば―――」
ゼロノスに尋ねようとした俺の頭の中に自然とそれ専用の呪文らしきものが浮かんでくる。
「なるほど。こう言えばいいのか。よしプニタ、俺の肩に乗ってー」
『はーい!』
「それじゃあ行こうか異世界、『世界の門よ、開け』!!」
【ステータス】
個体名:荒木 京也
種族:人族
体質:龍鬼体
年齢:18
Lv:8
HP:300000(+100000)
MP:250000(+100000)
スキル:
(剣術系統)剣術
(魔法系統)火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、闇魔法、聖魔法
(その他)苦痛耐性、抗魔力、魔力転換、テイム、魔物意思疎通、魔物召喚
ユニークスキル:ナビゲート、破天、狂龍化(使用制限中)、時空の理(使用制限中)
加護:転生神の加護、冥鬼の加護、神龍の加護
称号:不運の象徴、異世界人、苦痛に耐えし者、ドM気質、呪滅者、龍獄の管理人
帰属装備:鮮変萬果、龍獄の鍵、天威武萌、タラリア
従魔:エンシェントスライムエンペラー“プニタ”




