なんかやわらかくてまるくてかわいいもの
「ナビさん、そういえばこの『龍獄の杜』の主って何者なんだ? 破天丸が消えても俺が外に出られてないってことはあいつが主じゃなかったってことだろ?」
『はい、ここの主は神龍ゼロノスです』
「しんりゅうって、まさか神の龍と書く方のか?」
『その通りです!』
龍ってだけでも危険度MAXな感じがするのに、そこにさらに神を冠する龍ときますか。それ、破天丸相手に瞬殺された俺が挑める相手じゃないだろ?
「ちなみに今の俺が戦って勝てる確率は……?」
『限りなく0に近いですね』
即答で完全敗北って断言ですかい。
「……でも、限りなく0に近いってことは0ではないってことだろ?」
『えぇ、私の識る限り、ゼロノスの手脚がなぜか全て失くなっていたり、急にゼロノスの首が切り落とされたりすれば、2パーセントくらいの勝ち目はありますよ』
そこまでの大惨事でたったの2パーセント! 何だよその理不尽さは!
「…………それはどう考えても0だろうが」
すると突然、ぴょん! と金色に光る何かが脇の茂みから飛び出してきた。また変なモンスターが現れたのかと身構えるが、その緊張もすぐに解れる。
ぽよんと跳ねて、ぷるんとした弾力のありそうな体。あの見た目からしておそらく―――
「ナビさん、あれ…………もしかしなくてもスライム、だよな?」
『はい、そうですよ!』
「本当だな? 今度は中に何かまた別のやつが隠れてるとかは無いよな?」
『えぇ、それはないんですけど…………あのスライム、レベルがおかしいです』
「おかしいって?」
『スライムは基本的にモンスターの中でも最も脅威が低いとされていて、その理由がレベルの低さにあるんです。それなのにあの金色のスライム、レベルが800もあるんですよ』
「800!? 破天丸自身のレベルは分からないけど、確か破天丸の着てた着包みのレベルが250だったから単純計算で少なくともアレの3倍以上ってことだろ?」
『いえ、あまりにも高いレベルになるとその差は3倍どころでは済まないと思われます。なので、この場から即刻退避をおすすめします!』
「マジかよ! そんなこと言ったって、どこに逃げれば―――」
その時、左足にぷにっと柔らかいものが当たる感触がした。
『あぁっ、ご主人様!! 体液で溶かされてしまいます! 早く足を―――』
【エンシェントスライムエンペラーのテイムが可能です】
「えっ!?」
突然頭の中に響く創造神様の声に、思わず変な声が喉から漏れる。
「テイム………この場合だと従魔にするってことか? ナビさん、これどういうこと?」
『……………こんなことあり得るんでしょうか?』
いや知らねぇよ!! 逆にこっちが聞きたいわ!
「ちなみに、この場合俺はどう応えるべきなんだ?」
『えーと、この場合はするかしないかの意思を示せば大丈夫だと思います!』
こいつ仮にもレベル800のバケモノスライムなんだろ?
しかも古代級とか皇帝とかいってるし、どう見ても「私、スライム最終進化形です!」みたいな名前じゃん?
そのお誘いを断ったら俺問答無用で殺されるんじゃねぇの? 仲間になるなら殺さない、だがならないなら殺す、的なやつでは??
えぇい、そのキュルルンとした目でこっちを見るな! 困惑する!!
「……………テ、テイムします!」
【エンシェントスライムエンペラーのテイムに成功しました】
「よ、よかったぁ……成功したぞ!」
『こんな偶然あるんですねー。普通モンスターは自分より弱い者に懐くことなどないですから驚きですよ!』
一歩間違えれば俺死んでた説、濃厚だぞ。
「というかさ、仲間になったんならエンシェントスライムエンペラーなんて長い名前じゃなくて、もっと簡単な名前の方が良いんじゃないか?」
従魔といえば名付けイベント。カッコイイ名前考えてやるぜ!
『うーんそうですね………プニタはどうでしょうか?』
「それエンシェントスライムエンペラーのどこにも掠ってないように思えるけど、俺の気のせいか?」
『そんなの見た目から考えたに決まってるじゃないですかー! よく見るとぷにぷにしてて可愛くないですし』
「確かに、一理あるな。でもそれだとせっかくのエンシェントスライムエンペラーっていう、いかにも強そうな名前からかけ離れちまってるんだが……」
『えっ、可愛ければいいじゃないですか! じゃあ逆に聞きますけど、強そうな名前って何ですか?』
「うーん、カイザーとかコウテイとかはどう?」
『微妙ですねー』
「よし分かった。こうなったらご本人様に決めていただこう!」
俺は金色スライムに顔を近づけて、幾つかの案を出していった。スライムは気に入ったときはぴょんぴょんと飛び跳ね、気に入らなかったときはぺちゃんこに潰れるので分かりやすかった。
そして、いくつか案を出した結果―――
「金色スライム、今から君の名前は………プニタだ」
【エンシェントスライムエンペラー個体名“プニタ”との契約が完了しました】
【契約に伴い、スキル『テイム』『魔物意思疎通』『魔物召喚』が肉体に刻まれます】
「なんでプニタなんだよぉぉおお!! カイザーの方がカッコいいだろがぁぁああ!!」
『フッ、私のネーミングセンスが大変よろしかったということですね』
それはないだろ、断じて。
『何か変なこと考えました?』
「いいえ、何もー」
俺は改めて体に刻まれたスキルを確認する。
「この『魔物意思疎通』ってこれプニタと話せるってことか?」
『早速試してみましょうよ!』
ものは試し。ナビさんと話す要領で話せばいいかな?
「おーい、プニタ! 聞こえるか?」
『聞こえるよー!』
おっ! プニタの声かわいい。これならカイザーよりむしろプニタの方が似合ってるってもんだ。
「俺は京也! よろしくな!」
『よろしくねー!』
体を伸ばして手みたいに動かしてくれるの、マジかわいいんですが!?
とてもこれがLv800のつよつよスライムだとは思えねぇ………




