その姿は鬼神の如く
鬼滅の刃の映画観てきました。
めっちゃ泣きました。
感動の更新です。
穿天丸の体が纏う黒い火花が雷へと変化し、身体能力と思考速度が格段に跳ね上がる。
赤くなった眼、金色に染まった角。その姿はまさしく“鬼神”と言って差し支えない。
計り知れないエネルギーを孕んだ弾に重なり合って螺旋を描くように迫りくるブレス対し、半身に構えた穿天丸は虚空を一蹴り。
その芯を捉えた後ろ回し蹴りによって弾とブレスの内部が諸共消し飛び、攻撃は対象に届くことなく空中で爆散した。
『なっ!?』
自身の攻撃が消し飛ばされたことに魔龍が驚いたのも束の間、頭部に凄まじい衝撃が走り、そのまま地上に落下する。
攻撃を蹴り飛ばした直後、思い切り地面を蹴って頭の上に飛び乗ってきた穿天丸に、首ごと吹き飛んだのではないかと錯覚するような威力で頭部を殴られたのだ。
枷が外れた穿天丸の攻撃はとどまるところを知らない。地に堕ちた魔龍の首にある宝玉を破壊すべく、その周辺の鱗ごとただひたすらに殴り続ける。
『小癪なッ!』
魔龍の振り払った右腕が腹にしっかりと食い込み、穿天丸は首から引き剥がされる。
邪魔者を弾き飛ばすと同時に、魔龍はブレスを放つため再び空へと翔け昇る。そして上空から穿天丸を見つけようとするも、その姿は確認できない。
『あの鬼、一体どこへ行った?』
「お前の背中の上だっ!!」
声のする方を振り返れば、その広大な背に鱗より少し大きいくらいの人影が見える。
「しこたま殴っていくぞォ!!」
穿天丸がどんどん背中周りの鱗を破砕していくも、当の魔龍はどうせそんなものすぐに修復できるからと特に気にも留めず、何故吹き飛ばしたはずの穿天丸が自分の背の上に乗っているのかを考えていた。
「よし、このくらいでいいかな?」
やたらめったらに殴りまくったせいで、そこら中クレーターだらけになった魔龍の背。それを見て穿天丸は満足そうに頷き、その手を天に向かって掲げる。
「雷術、万雷ッ!!」
空中に展開された数え切れないほどの雷の矢が、鱗が破壊されて剥き出しとなっている生身に容赦なく降り注ぐ。
『ぐおぉぉぉおおおおっ!!』
一瞬で全身を駆け巡った痺れるような激痛に、魔龍は大きな叫び声を上げながら、その痛みを紛らわすかのように天空をうねるように飛び廻る。
傷口から入った幾千もの雷が体内の魔力回路を破壊し続けるため、急いで回復を試みるも、治した先からすぐに破壊され、修復が追いつかない。
『貴様ァ! よくも我が魔力回路を壊してくれたな!!』
「隙を見せるほうが悪いんだよ」
『ぬぅん!!』
こうしている間も穿天丸は、更に全身の鱗を砕かんとして様々なところをひたすらに殴り続けている。
背中にいる穿天丸に魔龍は攻撃ができない。今のところただ一方的にやられているだけだ。だが、それで諦めるような魔龍ではない。
『貴様が我から離れぬというのなら、こうするまで!!』
魔龍は急に方向転換したかと思うと、地面に向かって真っ逆さまに急降下していく。
「なっ!?」
一秒にも満たない時間で地面へとその巨体を打ち付け、穿天丸は掴まっていた剥がれかけの鱗とともに空中に身を投げ出された。
不安定な空中だが、即座に体勢を整え、反撃の用意をしつつ地面に着地する。
穿天丸と距離が開いたことで再びエネルギー弾をブレスで撃ち出す機会を得た魔龍は、今度は一撃必殺の威力ではなく、弾数を増やし、追尾機能を備えた小規模の爆発を伴うものへと指向を変える。
『弾け飛べ!』
小規模とはいっても一発で軽く民家の一軒二軒は吹き飛ばす威力を持ったエネルギー弾。更に追尾機能を持ったが故に、全方位から穿天丸に襲いかかる。
「クソッ! 全部捌き切ってやるッ!」
一番初めに前方から来た二発の弾を殴り飛ばし、その爆発で周囲の弾も誘爆させる。
爆風で吹き飛ばされた先に背後から近づいてくる五個の弾。流石に一度に五個は手に負えないため、真ん中の一つだけ上に蹴り上げ、ほか四つはギリギリまで引き付けてから素早く避け、弾同士を衝突させる。
それでもなお、まだこちらに向かってくる数十の弾に穿天丸は覚悟を決める。
「うおおおおぉぉぉぉおおおおおおおっ!」
死に物狂いでただひたすらに迫り来る弾を目掛けて打撃を放つ。五秒間にも及ぶ絶え間ない爆撃の嵐が、鼓膜が破れんばかりの轟音とともに穿天丸を呑み込んだ。
激しい土煙が上がり、しばしの間、場は静寂に包まれる。
『フッ、口程にもない。やはり貴様は羅刹とは違―――』
煙の中から躍り出た黒い影が、魔龍の首にあるその生命の核に拳を突き立てる。
(この奥義、“破天”は自身の生命力と魔力のすべてを代償に一時だけこの体に許された限界を超えて戦うことができるものだ。
発動と同時に肉体の崩壊が徐々に進行し、途中攻撃を食らうごとに、さらに完全に崩壊するまでの残り時間が短くなっていく。先の爆撃で大分削れてもうほとんど時間は残っていないだろう。
今ここでこいつに大きな傷を負わせれば、咲楽と破天丸が逃げるのに十分時間は稼げる。それに、俺が散ったとしてもきっと破天丸がいつか仇を取ってくれるさ。
家族を護った父として、最後に派手に散るのも悪くない!!)
もとが赤い鬼だとは想像できないくらい黒く染まったその肌は、最期の時が迫っていることをありありと示している。
己の全身全霊の最後の一撃を繰り出さんと、全身の力が突き出した拳一つに集約する。
「砕けろぉぉぉぉぉおお!!!」
ゼロ距離から放たれた、穿天丸の命さえも含むすべてを乗せた一撃が、魔龍の宝玉を破砕しようと閃光を放つ。
(咲楽、破天丸、あとは頼んだぞ―――)
色調が反転し、空間が歪む程の爆発の中、赤鬼のか細き願いが理不尽な巨悪を打ち砕いた。




