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新時代と、かつての悪友

 王都は魔族と人間が行き交っていた。酒場で一緒に酒を酌み交わすものもいれば、人間の男と魔族の女で腕を組むものもいる。時折、喧嘩も見えるが、周りは人間と魔族が取り巻いて、囃し立てている。喧嘩も俺たちが経験した殺気だった戦いとは違って、素手での取っ組み合いしかしていない。

 俺達の時代では考えられない。魔族を見たなら敵だと思っていたし、魔族側もその認識だったから、この風景が新鮮でならなかった。

 これが勇者とアイツらが作った時代なのだろう。

 建物も俺達の時代と違って、所々で華やかさが違う。戦時下であったことや、統制があったので仕方ないが、この時代は商店通りを見ているだけでも心が躍る。

 まぁ、観光をしにきたわけではないので、そうした浮いた気持ちには少し蓋をする。


 まずは、そうだな。どこかで歴史を学べないだろうか。思案していると、まずは歴史書が思いつく。

 だが本屋はそう簡単には見つからない。この時代でも紙は高価であるし、前の時代よりも識字率が大幅に上がるなんてことはないようなので、本という物自体が一財産に値したりもする。

 買い出しの為も兼ねて、どうにか関連書籍を閲覧できないかと情報を集めることにした。

 商人達を護衛した報酬で、いくらか今の時代の銀貨を得ているので、数日分の食料は買いだめできるだろう。

数店目を回ったあたりで、王都には図書館があるので、そこなら可能性があるだろうと教えて貰う。やはり店を出せる奴らなら識字率は高い。

 かなり都の中心地に当たるが、王都の図書館はかなり大きい建物だった。貴族だけに向けた施設なのだろうかとも思ったが、どうやら庶民向けらしい。子供達が入り口で遊んでいたので、どうやら間違いない。

 建物を見上げられる所まで着き、建物名が確認できた時、なるほどな…となる。

「賢者ガルマ王立図書館」

「あのなまぐさ坊主…やりやがったな」少しニヤッとしてしまう。


 ガルマはパーティの魔法攻撃を担っていた、知り得る限り外法の聖職者だった。

女癖が悪く刺されそうになるのは毎度のことだった。それだけで聖職者は辞めとけ、となるのだが、酒癖まで悪いとなるといよいよクズの烙印(らくいん)が押される。

ただ、そこら辺の聖職者よりも、ガルマが一番の聖職者だというのは知っている奴は知っている事だった。

参加した対戦では、ガルマは必ず戦う奴らの為に祈りを捧げていた。聖職者ならば当たり前の事のようだが、俺達の時代の聖職者は戦い自体を否定する奴らの方が多かった。

戦いは何も生まないという聖職者達と、何回も言い争いになることもあった。

そんな中で、ガルマは俺達と一緒に戦う選択をしたのだ。

そして、戒律を全て度外視して、戦う奴らのために神への祈りを捧げていた。

人間側の軍にも、この宗派の信仰心が強い奴らが多かったからだった。故郷が蹂躙される中で悩みながらも剣を取った奴らがいたのだ。

そして、そういう奴らの為にガルマは

「この戦いで貴方達が犯すであろう、我らが神への罪は俺が全て背負う。一生を掛けても僕が、神へと償おう」と言って退けた。

そのすぐ後の大戦の直前、その宗派に於いて大罪人を示すというシンボルを腕と顔に刻んだ。本来ならシンボルそのものを憎むことで犯罪者を許す心を持つというのが、宗派での教示らしいのだが、それを身体に刻んだらしい。

「もう、どこの教会にも絶対入れなくなったね」とだけ言い、ガルマは少し落ち込んではいた。


「あの入れ墨かっこいいな」と事情を知らない誰かが、そうポツリと言ったのは覚えている。

「ああ、俺もそう思うぜ」とその独り言へ相槌を入れた。

 

 

 そういえば、ガルマは、戦後は学びを広めたいと言っていたなと思い出す。布教かと思ったが違うらしい、生きる力をつけるという意味で学ぶことを広めたいと言っていた。

 やりたかったことを成し遂げて、名前が残ったのだ。性格はアレだが、偉人というのはそういった奴らが多いのは確かだ。

「マジで偉人じゃねぇか」そう呟くことしかできなかったのは、悔しさだろうか。

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