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目覚めは必然か?

 不意に意識が戻るのがわかった。

 だが、周りを見回しても、何も見えず、何も感じることができなかった。それでも、左手に鎖が絡みついているのだけがわかった。

 それだけが頼りだったので、勢いよくそれを引き寄せると、ガラスが割れるような音が周囲を包むと、光が差し込んだ。

 その光に身体が引き込まれるように、何もない空間から脱出することができた。

 ガシャリと装備の鎧の音がしてから地面の硬さが身体に帰ってくる。少し気だるげだが、意識を失っていたので、どれぐらいの時間が立ってるのかはわからない。

 とりあえず、身体を起こすと周りを確認する。

「どこかの廃村か…」

 ボロボロの建物と人気の無さですぐわかった。こうした村は魔王の侵攻の時によく見た。

 戦いの後の気だるげな感じがあるが、今は寝てもいられない。俺はここがどこかを調べる為に色々と探し回る。

「これは…アルジャーノンの…銅像か?」

 見慣れた顔だから見間違えるはずがない。そうしてから、自分が次元に封印されていた時間の長さに嫌な予感がした。

 少し焦るように、銅像の元に掲げられているプレートに掘られている内容を確認する。

{皇帝歴112年 勇者パーティーの偉業を祝して、イリア公爵がここに建造}

 そうか…、これが建てられた時点で2年が過ぎている。魔王を倒した時が皇帝歴110年だった。劣化具合を考慮すれば、最低でも10年は過ぎているように感じる。

 力なく座り込んでから、空を見上げる。

 どうしようもなく晴れて気温もよく、世界に置いて行かれたような感覚が際立った。

「アイツ…幸せになったかな…」

 考えるのを放棄した頭は、妙に素直で馬鹿なことしか出力しない。

「これからどうするか…」

 本来なら仲間達を探すだろうが、アイツらがどうなったのかを知るのが怖い気持ちもある。

「俺らしくねぇな。どんな事になってても、笑顔で会いに行くか」

 違和感があっても言葉にすると、すんなり心は落ち着く。そうしてから俺は歩みだした。


 ただ仲間達の行方はすぐにわかった。

廃村を抜け出し、着の身着のまま、轍のある街道を徒歩で放浪しようと思っていたのだが、廃村を出た直後に魔物に襲われている商いの一団がいた。

 魔物を倒し、そいつらを助けると感謝の言葉と共に、今の時代と情勢を教えてもらえた。

 曰く、今は新皇帝歴350年であり、王都の近郊であるとのことだった。

 これには流石に膝から崩れ落ちた。これは仲間の誰も生きていられる期間ではない。

 あまりに気落ちしていたので、商人達に心配された。

だが、少しは予想していたことなので、今は現状の確認が優先と何とか気を持ち直す。

伊達に死線をくぐり抜けてきてはいない。これぐらいで絶望していては、魔王を倒せてはいなかった。

 曰く、皇帝歴は200年まで続き、新暦になったとのことだ。ということは…、俺は440年の間封印されていたのか。

 銅像の風化と辻褄が合わない気もするが、あれには浄化のルーンが刻んであったので、人の往来があった間は魔力が補填されていたのだろう。

 曰く、今は伝説となった勇者達の話は、誰もが知る所ではあるが、話が各地方によって少しずつ異なっている所もあるのだとか。

 これは各地を転々とする商人に聞いたからこそだな。だが、一つ一つの話を教えて貰い、自分の知っている実際の歴史と照らし合せて、一番真実が伝わっている地域が勇者一行が最後を過ごした地域ではないかと予想した。

 それが王都の伝承であったのは幸いだった。

これらの話を聞いた今、明確な目標はないが、勇者達が魔王討伐後どうしたのかと、どこで生きて死んだのかを知りたいと思った。できれば墓参りぐらいはしたい。

そう決意を新たにした後に、王都方面に向かう商いの馬車に護衛として相乗りさせて貰うことにする。

 護衛の冒険者の代わりに、出てきた魔物を一人で一掃したりしていると、商人の団長である気のいい爺さんから

「ウチの孫娘を嫁にやるから婿に来んか?」とは言われたが、

「まだ、先に会わないといけない人がいるんで、すんません」とだけ言っておいた。

 

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