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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第二十一章 慣れない酔っ払いと

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第98話 酔いつぶれて眠るまで

「まったく便利な奴だ。神前、とりあえず運んで来い」 


 苦笑いを浮かべるかなめに言われて誠はカウラを抱き上げた。細身の彼女を抱えてそのまま車の助手席に向かった。


「本当に寝てるな、こいつ。まったく便利な奴だぜ。それにしてもさっきはこいつ妙なこと言ってたな。神前はやらねえ?神前は自分のもの?なんだよ、コイツはテメエに気が有るみてえだぞ。良かったな、かえでの変態以外の選択肢が出来て」 


 苦笑いを浮かべたかなめが助手席のシートを持ち上げて後部座席に眠るカウラを運び込んだ。


「お前が隣にいてやれよ。手伝わなかったせめてもの詫びだ。それにカウラもそれを深層心理じゃ望んでいるってことだ。いつもは鉄面皮で隠してはいるがな」 


 そう言ってかなめは誠も後部座席に押し込んだ。そしてそのままかなめは有無を言わせず助手席に座った。


「運ちゃんやってくれ頼むわ」 


 そう言って金髪の青年に声をかけた。その声が沈うつな調子なのが気になる誠だがどうすることもできなかった。カウラは寝息を立てている。引き締まった太ももが誠の足に押し付けられた。助手席で外を見つめているかなめの横顔が誠にも見えた。時々、彼女が見せる憂鬱そうな面差し。何も言えずに誠はそれを見つめていた。


「大丈夫なんですか、あの方は?かなり酔ってるように見えるんですけど……病院とかの方が良いんじゃないですか?」 


 さすがにカウラの様子が気になったのか金髪の運転手が誠に尋ねてきた。


「ええ、いつもこうですから……慣れてますんで」 


 そう答える誠にあわせるようにかなめが頷いた。だが、いつもならここでマシンガントークでカウラをこき下ろすかなめがそのまま外を流れていく町並みに目を向けて黙り込んでしまった。気まずい雰囲気に金髪の運転手の顔に不安が見て取れて誠はひたすら申し訳ないような気持ちで早く寮に着くことだけを祈っていた。


 豊川駅前の繁華街から住宅街へとカウラの『スカイラインGTR』は走った。つかまった信号が変わるのを見ると金髪の運転手は右折して見慣れた寮の前の通りに入り込んだ。


「ちょっとその建物の入り口のところで止めてくれるか?」 


 かなめはそう言うと寮の門柱のところで車を止めさせた。そしてそのままドアを開くと降り立って座席を前に倒した。


「おい、神前。そいつ連れてけ」 


 表情を押し殺したような調子でかなめが誠に告げた。


「カウラさん、着きましたよ」 


 そう耳元で告げてみてもカウラはただ寝息を立てるだけだった。誠は彼女の脇に手を入れて車から引きずり出した。


「まったく幸せそうな寝顔しやがって」 


 呆れたような表情でかなめはそう言ってそのまま車に乗り込んだ。隣の駐車場にゆっくりとカウラの銀の『スカイラインGTR』が進んでいった。誠はそれを見送るとカウラを背負って寮の入り口の階段を上った。


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