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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第十二章 誠に眠っていた欲望

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第66話 日頃のストレスからくるもの

「それにしても……神前。一々いつも護衛している女全員にあいさつする気だよ……苦労してんだな。なんだかアタシは泣けてくるよ、ここまで来ると」 


 ランはそう言いながら他人事のように誠達を見つめていた。


「おい!上官だろ?介抱ぐらいしろよ」 


 かなめの言葉にランは首を振るとグラスの底に残ったビールを飲み干した。


「大丈夫なんじゃねーのか?いつもはオメー等にケーオーされて言えなかった神前の本音も聞きてーしな」 


 明らかに他人を装うランにかなめは頭を抱えて自分の行為を悔いた。


「それにちゃんとテメーの尻はテメーで拭けよ。知らねーぞ、あいつカウラにも同じことするつもりだぞ。そうなりゃこういうことに免疫のねーカウラだ……まあアタシはかまわねーけどな」 


 ランの言葉にかなめとアメリアは目を見合わせて立ち上がった。


「カウラひゃん!」 


 そんな誠の声にかなめとアメリア、そして野次馬達は階段を駆け下りた。壁際に水を入れた瓶を持ったカウラを追い詰めて立つ誠。その姿を見て飛び掛ろうとするかなめをランが引っ張った。


「野暮なことすんな」 


 そう言うと先頭に立ち階段に伏せてランは二人を見つめた。アメリアもその意図を悟って静かに伏せていた。


「なんのつもりだ?神前。私もクバルカ中佐と一緒で貴様の裸には興味が無い」 


 カウラは冷たい調子で言った。だが、かなめもアメリアもその声が僅かに震えていることに気がついていた。完全に傍観者スタンスのサラがアメリアの顔を覗き込んだ。


「どうですか、クラウゼ少佐。このまま神前君はがんばれますかね」 


「いやー無理でしょう。彼はどこまで言っても根性無しですから。根性があれば……」 


 ルカの言葉に思い出されたさまざまな自分の誘いのフラグをへし折ってきた誠の態度にアメリアはこぶしを握り締めた。


「僕は……僕は……」 


「僕がどうしたんだ?飲むか?水」 


 そう言うとカウラは誠の頭から氷の入った水をかけた。野次馬達の目の前には、誠でなく自分達を見つめているカウラの冷たい視線が見えた。


「つっ!つっ!つっ!冷たい!」 


 思わず誠はカウラから手を離した。同情と自責の念がその場を支配した。思わず自分達の想像した破廉恥な場面に照れながら野次馬達は立ち上がった。


「クラウゼと西園寺。いい加減こういうつまらないことを仕組むの止めてくれないか?」 


 かなめ達と違って下心の無いカウラは真顔でそう言った。


「そうだ!止めろっての!」 


 立ち去ろうとする二人の手を掴んで拘束するルカと菰田。かなめとアメリアが振り返った先では彼女達を見て囁きあう隊員の顔が見えた。かなめもその攻め立てるような視線に動くことが出来ずに立ち往生していた。


「なにするのよ!菰田君!」 


「離せ!」 


 ばたばた足を持ち上げられて長身のアメリアは暴れた。カウラは二人を簡単に許すつもりは無いというように仁王立ちした。


「わかったから!こんどから誠ちゃんで遊ぶの止めるから!」 


「無理に脱がすのは止める!だから離せってーの!」 


 かなめの懇願に菰田は二人の足から手を離した。カウラはそれだけではなくそのままかなめ達のところまで歩いてきた後、野次馬組を睨みつけた。


「まったくオメー等がはっきりしないのがいけねーんだ……って、寝てやがるぞ、あいつ」 


 そんなランの言葉にかなめとカウラは誠に目をやった。誠は酒に飲まれて倒れこんだまま寝息を立てていた。


「風邪引くからな、そのままにしておいたら。アメリア、カウラ、かなめ。こいつの体を拭いて部屋に放りこんでこい。それとあくまでつまらねーことはするなよ。コイツが自分から脱いだんならそれはこいつが馬鹿だからで済むが強制的に脱がすのはわいせつ行為だからな」 


 頭を描きながらランはそのまま呆れたような顔をしてビールを求めて図書館へと帰って行った。


「結局これか……」


 かなめはそうつぶやいて苦笑いを浮かべるカウラに目をやった。



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