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第4話 現れた姉命の妹

「お姉さま……ここにいらしたですね!それに神前曹長まで!お姉さまと『許婚』である神前曹長の凛々しい姿を見られるとは、僕は今、本当に最高の気分だよ!」 


 誠の背後から黒糸縅の渋い大鎧を着込んだ中性的な面立ちの美しい女性士官が突如現れた。かなめの妹にして嵯峨惟基の義娘、実働部隊第三小隊隊長日野かえで少佐だった。その青糸縅の甲冑姿は、まるで一の谷の合戦で敗れた(たいらの)(あつ)(もり)を想像させる美しい面差しで場の注目を集めていた。


 誠はかえでの母と誠の母である神前(しんぜん)(かおる)の気が有ったと言うことでかえでの『許婚』にされていた。しかもその誠の母とかえでがかえでの変質的な趣味を薫が興味を持ってしまったため、かえでは両親公認の完全にまことの『許婚』と言うことになっていた。


 ただ、誠自身はかえでの性的嗜好が汚物表現を含むほどのあまりにも変態的なのと、かなめをはじめとする誠の周りの隊の女性陣が全員かえでを『許婚』として認めていないのでなんとかかえでの毒牙から逃れることが出来ていた。


「やはりよくお似合いですね、かなめお姉さま。凄く凛々しくていらっしゃる。公家である僕達がこのような格好をすると言うのも興のあることです。今日は祭りを楽しみましょう」 


 そう言ってかえでは自然な風を装いかなめに手を伸ばそうとするが、かなめは逃げるように思い切り後ろに身を引いた。その姿を確認するかえでの頬が赤く染まった。


 幼いころ、かなめに散々いじられているうちにかえではそれを愛と勘違いしてしまった。彼女は一途にかなめのサディスティックな一面に陶酔している最上限度に振り切れてしまっているマゾヒストだった。


「向こう行けよ。アタシはもうすぐ着替えるんだから……しかも鎧を着てるんだ。ぶっ叩かれるのが大好きなオメエでも鎧越しじゃあ気持ちよくねえだろ?あっちに行け」 


 誘惑するようなかえでの視線から逃げようとするかなめだが、かえではあきらめようとはしない。


「それなら僕がお手伝いしますよ。ああ、神前曹長の着替えも手伝おう。できれば君の裸体も見てみたいんだ……特にうわさに聞く君の立派なあそこが……ね」 


 そう言ってかえではかなめの後ろについていこうとした。誠は舌なめずりをしかねないかえでの妖艶な笑みにやられて顔を引きつらせてなんとかその場を逃れようとした。


「だあ!かえでは神前から離れろ!かえで、オメエは女に免疫のねえ神前には危険すぎる!神前はカウラとか鎧の脱ぎ方も分からねえだろうから教えてやれ!あと、かえで、今日は放置プレイの日だ!節分から盛ってるマゾには最高の御褒美だろ!」 


 そう言うとかなめはかえでから逃げるようにして人ごみに飛び込んでしまった。ガチャガチャと響く鎧の擦れる音だけが残された。


「神前君。君は付き合ってくれるよね。戦場で傷ついた男女が愛によって結ばれる。それはそれは絵になる光景じゃないのかな?僕達は『許婚』なんだ。今日君の童貞を僕が奪っても何の罰も当たらない。そう思わないかい?ちなみに今日は僕は下着をつけてきていない。早速そこの草むらで……二人っきりで……思う存分愛し合う。ああ、野外プレイは久しぶりだから興奮してきてしまう……」 


 誠は苦笑いを浮かべながら自分の野外プレイを想像して身もだえるかえでを見てドン引きしていた。妖しいかえでの流れるような金色の前髪に誠は思わずドキリとしてかえでの言うようにこの場の雰囲気に流されてしまうのも悪くないと思うようにもなってしまう。


 さすがにここまで拒絶されるとかえでにも誠の真意は通じたようで、真顔に戻り、付き従うかえでの腹心第二小隊二番機担当の渡辺リン大尉の方に目をやって、手にした弓を手渡した。


「なんだか、堅い顔をしているね、神前曹長。その顔を見ていると(きょう)も殺がれた。今日の所は野外プレイはやめておこう。君は道場の跡取りだと聞いたからベルガー大尉とクラウゼ少佐の着替えを手伝ってやってくれ。僕はあの観光客気分の連中を何とかする」 


 そう言ってかえでは無邪気にじゃれあうアンと西に向かっていった。ため息をついてカウラとアメリアの顔を見た。


「よかったわね、あの変態のかえでさんの誘惑から逃げることが出来て。かえでさんもああ言ってることだし、手伝って。私も買ったはいいけど脱ぎ方とか良く分からないのよ。その点誠ちゃんは道場の跡取りなんだから知ってるんでしょ?」


 アメリアはそう言うと誠の肩を叩いた。


「そうだな。ここでは邪魔になるだろう」


 カウラはと言えばそう言うとさっさと着替えの為に建てられた仮設のプレハブに向けて歩き出した。


 誠が振り返るとそこにはアンと西の襟首を捕まえたかえでの姿があった。何も知らない観光客はその手際のよい組打ちに拍手をおくっている。


「まあ……あれは祭りの趣向の一つと言うことにならないだろうか?」


 そういうアメリアに同意するように頷くと誠は先を歩くカウラの背を追って走り出した。


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