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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第三十六章 終業時間が来て

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第153話 ここは先輩として

 滅多に人を褒めない島田に褒められて誠は舞い上がっていた。その浮かれぶりは自分の財布の軽さを忘れさせるレベルのものだった。


「あ、ありがとうございます。じゃあ気持ちよくおごらせてもらいますね」


 我ながら単純な奴だと思いながら誠はそう口にしていた。 


「まあそれじゃあ行くか。ちょど今月はバイクの部品を買ってピンチだったんだ。サラも新しい服を買いたいって言うしな。感謝してるぜ」 


 立ち上がろうとした島田の首筋に外から手が伸びてきてそのまま入り口に引っ張られた。


「ほお、島田。後輩に飯をおごらせるとはずいぶん了見の狭い先輩じゃねえか……え?島田准尉……ずいぶんと出世したもんだな……アタシは大尉、テメエは准尉。軍隊は階級がすべて……その大尉殿が部下におごらせるような恥知らずを黙って見逃がすと思うのか?」 


 ぎりぎりと島田の首を締め付けながらそう言ったのはかなめだった。


「西園寺さん、ちょっと……首!」 


 不死人の島田とは言え、痛いものは痛いし苦しい時は苦しかった。身もだえ、青ざめ、誠に助けを求めてきた。


「おう、神前。こいつとサラとアンの飯代はアタシが出すぜ。まあその分こうして……」 


 さらに締め上げるかなめの腕に島田がばたつく動きを弱め始めた。


「おい、西園寺。殺すなよ……ああ、島田は死なないんだったな。じゃあ一回ぐらい殺しても構わん。不死人が窒息死するところは一度見てみたいと思っていたところだ。一度くらいいだろう。やってしまえ」 

 

 茶色いコートに長い明るい緑のポニーテールを光らせるカウラが笑顔でかなめにそう言った。


「た……た……」 


「正人、自業自得よ」 


 思わずサラに助けを求めようとした島田だが、サラもまたこの状況でかなめを説得できるなどとは思ってはいない。


「ちょっと!死んじゃいますよ!やめてくださいよ!顔が青くなって来ましたよ!」 


 誠の言葉を聞いて初めてかなめは手を離した。そのまま島田は四つんばいになって咳き込んだ。


「大丈夫?正人」 


 そう言って駆け寄るサラだが、本気で心配しているような様子は無い。


「じゃあいいわ。アタシのおごりだ!吐くまで飲めよ!」 


 そう言ってかなめは女子更衣室に消えていった。続いて入ろうとするアメリアを誠は呼び止めた。


「どういう話し合いをしたんですか!また二日酔いで出勤は嫌ですよ!」 


 真剣な顔でそう言う誠だが、アメリアはそれに楽しそうに笑みを浮かべただけで彼の手を振り切って更衣室に消えた。


「まあ、残念としか言えないな。とりあえず胃薬を用意しておいたが……飲むか?」 


 カウラはコートのポケットから錠剤の胃薬の入ったビンを取り出した。彼女がこういうものを必要としない自制心のある女性だとは知っていたので、それが自分に飲ませるために買ったものだと言うことは誠にも分かった。


「とりあえず後で頂きます」 


「いや、これは食前に飲むのが良いらしいぞ」 


 そう言って少し笑みを浮かべながらカウラは錠剤の蓋を開けた。そのまま彼女から三錠の胃薬を受け取るとそのまま誠は一息にその錠剤を飲み下した。



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