第129話 弁当を待つ人々
「西、そこの弁当。ハンガーで待っている連中が居るんじゃないのか?連中は今の我々と違って飢えている。早く届けてやれ」
そんなカウラの言葉にひよこと西は気がついたというように詰め所の入口に向かった。
「それじゃあ……アメリアさん、用があったら呼んでくださいね。整備班は島田先輩がへそを曲げてますけど別に協力したくないわけじゃ無いんで。その辺は分かっていてくださいますよね?」
気遣いの人である西はそう言ってアメリアに笑いかけた。
「ああ、そこらへんは新藤さんの裁量なんで。まあ、台本的には後半の雑魚キャラとして協力してくれればいいだけだから。それまでに島田君の機嫌が直ってると良いんだけど」
出て行く西に一同はやる気のない手を振った。
「それじゃあ、私も戻ろうかな。あっちのおはぎももうなくなったことでしょうし」
そう言ってアメリアは手に痛いカップを持って立ち上がった。
「なんだ、貴様は甘い物から逃げていたのか?ぜいたくな悩みだな。いつもは糖分が足りないと文句ばかり言っていると言うのに」
カウラはあきれ果てたと言うようにアメリアに向けてそう言った。
「時と場合ってものが有るわよ。私だってたぶん数時間後にはまた甘いものが食べたくなっておはぎが恋しくなるわ。でも今は駄目。見るのも嫌」
うんざりした様子でアメリアはそう言った。
「まあ、なんだ。その数時間の間おはぎで補給した糖分を使ってがんばってくれ」
カウラは複雑な表情を浮かべた。誠もまたさわやかに手を振るアメリアをぼんやりと眺めながらカップのそこに沈んだ茶葉の濃いお茶を飲みこんだ。




