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連なる怨毒4

 リオンの降り立った島は荒れ果てた場所だった。島の中央部分は海面よりも低く、島を縁取る海岸から少し進んだところまでは盛り上がっているが、そこから先は徐々に斜面になっていき、中央付近までそれが続いている。

 帽子を反対にしたようなこの島は、中央へ向かうにつれて木々が生い茂り、中央に見える大きな湖を囲むようにして住居が見える。


 見通しの良い海岸から島のあらましを観測したリオンは、早速中央の湖に向かうため海岸に支柱を打ち、小船と支柱を紐で繋げた。斜面を進む場合アイテムボックスは邪魔になるがどれだけ滞在する事になるかわからないため、アイテムボックスを抱えるように持ち包むように風魔法で支えた。


 坂を下る途中の道は草木一つも生えない荒地で、海から少し離れた場所になると地面が渇きひび割れが目立って見えた。生き物どころか、生き物の死骸すら無い一帯は島の外周をぐるりと囲んでいる。

 風が砂を掴み、風が巻き上がるたびに肌を切り付けるような砂嵐が巻きたつ。地形の特徴なのか、砂嵐は簡単に消える事なく勢いを持ったまま右往左往と行き来する。

 こんな場所では寝ることすら難しいだろう。気温に恵まれた現在でも少し熱いと感じるこの場では、夜になると一変して身を縮こませるような寒さに変わるはずだ。


 砂漠地帯で生活した経験から、この手の地形はなんとなく理解しているつもりだ。いち早く荒地を抜け出すために身体強化と風魔法を背に抱えて歩く速度を高めて進む。


 リオンの起こす風にぶつかる風の勢いが弱まってきたのは、中央の湖に近づき遮蔽物となる木々が増えてきたからだろう。踏みしめる大地も乾燥した粉っぽい土壌から、踏みつけると跡が残るような柔軟性を持ったものへと変わっている。

 青々とした草木が生えているのはもう少し行った先だろうが、この辺りは見通しがよく適度に生える木々の下で小休止を取ることにした。


 湖側を背に歩いてきた荒地の方を見ながら、アイテムボックスから取り出した香草焼きを葉の上に乗せる。皿代わりに休んでいる木から一枚拝借した葉っぱだ。栄養や水分の少ない土地に生える木らしく、葉は厚めに水を蓄えやすく進化しており棘のようなものがまばらに生えている。

 棘を取り除き、周りを削ればこの葉も食べることが出来るかもしれない。


 そんなこと考えながらグラバイオスで買っておいた香草焼きを頬張る。時間遅延の効果を持つアイテムボックス内で保存しておいた香草焼きはまだほんのりと暖かさを有しており、噛むごとに溢れ出る肉汁は瑞々しく、それでいて肉の油特有のガツンとした食べ応えも感じる。

 特段腹が減っていたわけでも、少し前まで切羽詰まった環境にいたわけでも無いが、食事を味わうと生きている実感が心の奥から溢れ出てくる。


 グラバイオスで出されたような手の込んだ料理ではダメなんだと、豪快に素手を汚しながら食べる香草焼きを見ながら思った。食事を終え、数日身を置き休ませることが出来そうな場所を探す事に決めたリオンは、身体強化で視覚と脚力を重点的に高める。


 跳ねるように走り、湖以外で水場となる場所がないか探し回る。どんな生物であっても水源は生存と切っては切れない関係にある。リオンが水分を欲すると同じように、リオンと敵対する生物が水場を欲する、又は水場を根城にしている可能性は大いにある。

 たとえリオンであっても生活の隣に戦闘があるようでは数日耐えるのも難しい。鳥の島ではその不安に考えを回すような時間はなく、今この瞬間に心血注いでいたためどうにかなったが、冷静に立ち回れる今では理性や判断力が邪魔をし少しでも心安らげる場所を求めていた。


 地形の影響か、木が点々と生えているような辺りでは碌な水場が見つからず水場を求めて中心部へどんどん進んでいく。地形の構造上、降り注いだ雨水が中央に溜まりそれが循環するため、中央部以外では水場が出来づらいと言うのは重々承知しているが、自然の作り上げたものというのはそこまで正確に出来ていない。

 どこかに窪みや洞穴があってもおかしくない。出来ることなら日が沈む前に見つけたかったが、アイテムボックスを持っていたり、島に住む生き物がいないか意識が違うところへ移ってしまった事もあったため、日は落ちていないが区切りのいいところで水場捜索は諦め、今晩の食材を探す事にした。


 感知魔法を展開し生物反応を探るが、それらしき反応は近場にはない。暫くの食事は多肉性の葉っぱもしくは、根。運が良ければ果実になるだろう。アイテムボックスに入る食糧は万が一のためにぎりぎりまで温存しておきたい。鳥の島の時のように島から出るのが難しくなる可能性だってある。

 なんとなく寝床に決めた木を中心に採取を始める。アイテムボックスから取り出した籠を持ち、小さな赤い実をつける低木、棘のついた多肉性の葉を二種類、硬い皮を持った果実、丸く膨らんだ根を持つ花などを見つけ、とりあえずすべてを籠に入れて持ち帰る。


 可食か、または可食部はあるかどうか、毒に反応する『クウセイの聖水』に浸してそれを確かめる。毒を持っている場合、その部分が腐るように変化していく。持ってきた食材候補は殆どが食べることが出来るようで、多肉性の葉と根っこの一部だけが毒の反応を見せた。


 日が完全に落ちきる前に火を起こし、寝床も整えていく。一番太い枝と幹の間に縄と布を張り、簡易的なベッドを作る。これで腰を痛めず体温を地面に奪われることなく睡眠できる。他にも感知魔法を展開して置いたり、数日拠点にするための様々な準備を済ませると調理にかかった。

 

 

読んでいただきありがとうございます。


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