極秘の鼎談3
「やっぱり、戦争絡みなのは、」
事のあらましをリオンに説明したデルマテオは、柄になくオドオドした様子でリオンの言葉を待っていた。
リオンはなんとなくデルマテオが話そうとしている事は理解していた。けれど、その事態の大きさと、単純に戦争への嫌悪感が出てしまい話出すのに少し困る。
けれどデルマテオの言っている話の事が今後起きるのであれば、その対処は早ければ早いほどいいし、そうすれば今どこかで起こっている戦いの火種が島を全て燃やし切る前に止められる。
アザリとクラウティスの争い。その奥に争いを唆す存在がいて、一つの争いがバルイン、アクバィラウなど、多くの島に波及している。それはリオンが見てきた島だけ言える事ではなく、アルト海全てに言える事なのだと理解している。
「デル、私はやるぞ。知らない国同士の諍いならまだしも、私の知っている者たちが傷つく可能性だってあるんだ。やらなければきっと後悔する。」
「リオン、ありが」
「感謝をするなら全て終わった後、謝罪もだぞ、」
感謝を止められ、すぐに謝罪しようとしたのを察して、リオンは釘を刺す。
「それで、ここにきた理由っていうのはラオ島関係者との話し合いなんだよな?」
「あぁ。グラバイオスは中立を宣言できるほどアルト海の中では有数の力を持っていて、それが許されるほどどこかの派閥に染まってもいない。ただ、地区によっては派閥の思想が漏れているらしいが、グラバイオスとして見た時は完全な中立だ。だから、各派閥の要人を呼ぶならここか、大陸か、のどちらかしかない。」
「どうしてラオ島なんだ?デルの国と国交があったからか?」
「それもあるが、ラオ島は非暴力、非戦闘を常に訴えているからな。商人からの指示が母体という事もあるが、そもそもラオ島は昔から戦いを嫌う風習がある島だ。その意思は今も尚残っている。だからだな。」
「話はどこまで伝わってる?」
「ラオ島の頭領には大体の内容は伝えてある。むしろ、彼らは乗り気で協力してくれる。」
「つまり今日は、他2派閥をどうするかの作戦会議ってわけか、」
「そうだな。そのつもりだ。」
2人はラオ島頭領が指定した店まで向かう。場所は西地区から中央に向かう大通りに面したレストラン。明らかに貴族御用達のエリアに踏み入れた2人は好奇な目の対象となる。
それはサルマ商会でも浴びたような、エルフという存在に向けられるものから、単純に浮浪者のような格好をするデルマテオへの嫌悪、なかなか見ない顔が来た事による好奇心など、さまざまな感情がのった視線だった。
「さっきの店が貴族用かと思ったけど、こっちにもサルマ商会って大きいのがあるんだな。」
デルマテオが指差した方向には見た事のある『サルマ』の文字。きっとさっき訪れた店舗は金を持った冒険者や、成金の商人様なのだろう。店構えから雰囲気が違っていた。
荘厳という言葉はこの雰囲気のためにあると言っても過言ではない。漂う様子はリオンたちを客として受け入れていないようだった。
「確か、ここの店だったような、」
デルマテオの指示で扉の先へ進む。真っ白い服を着た店員が2人を案内するために現れた。
「中にビィウズさんはいるか?」
「少々お待ちください。」
少しして、案内に来た店員とは別の体躯の良い男が降りてきた。
「頭領がお待ちです。こちらにどうぞ。」
表情を和らげる事なく、無愛想なままデルマテオとリオンを2階へ案内した。
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ツ・ビィウズは若くしてラオ島の頭領に選ばれた傑物として名を馳せていた。これまでラオ島が行ってきた貴族優先の取り引きから、大衆を意識した改革はラオ島の運命を左右する決断だった。
結果、その改革が成功し、アルト海の品物が大陸に広まった事で単純な認知度だけでなく、冒険者や各地域の有力者など、大口の取引先という間口も開く事になった。
また、広がる需要に供給が追いつかず、品物の価値が高くなったり本来の値段より釣り上げた価格で優先的に買わせて欲しいという得意先も増えていった。
若いというだけで風当たりは強く、当初はツ・ビィウズの改革に意を唱える者も多かったが、結果でねじ伏せる事となった。
その後も新たか海路を整備し、不凍港の建設、海賊と交渉し護衛船隊へと変えるなど、これまで山積みとなっていた問題を次々に解決していったのだ。
そんなツ・ビィウズに対する世間の印象は冷静沈着で、血の通っていない能力至上主義のような男に映っているらしい。
しかし、そんな世間からの印象とは違って、ツ・ビィウズは情に熱い男だった。
今回の派閥間の争いもいち早く鎮静化出来るように、持ち合わせる全ての力を使い動いている。
そして、今日。その行動がやっと身を結びそうになっていた。大陸にいれば一度は聞いた事のある蒼穹の妖精リオンディーラ。傭兵としての数々の武功と、冒険者としての確かな実績。
人類共栄圏にて活躍するエルフの中ではトップクラスの実力者。ここ数年は戦線を離脱し、旅に出たと聞いていたが、デルマテオの働きかけで話をする機会を得る事ができた。
つい鼻息も荒くなってしまうし、緊張で表情も強張ってしまう。
深呼吸をして、目の前の扉に全ての意識を向ける。コツコツと、階段を上がってくる音が聞こえてきた。
ツ・ビィウズは気持ちを切り替え、リオンディーラとの交渉に立ち向かう。
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