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極秘の鼎談1

 最終地点グラバイオス。ここにはアルト海全ての物資が行き着く場所として商人たちで常に賑わいを見せていた。


 ラオ島がアルト海と大陸を繋ぐ交易拠点として栄えているのは、ここグラバイオスあっての事だった。ラオ島が貴族や金持ちのために栄えた島とするのであれば、グラバイオスは商人が商人ために集って栄えた島だと言える。


 ゆえに商業としての活気はどの商業都市と比べても異質であり、客に向かって並べる美辞麗句や取ってつけたような愛想笑いは存在しない。値切る声と囃し立てるような口上が飛び交っている。


 とは言っても一般の客や旅で訪れたものを歓迎する場所がないわけではない。5つに分かれた商業地区ではそれぞれの地区を管理する代官が自分の地区にお金を落としてもらおうと様々な工夫を凝らしていた。


 リオン達が足を踏み入れたのは西側、サルマ商会地区だった。主に織物と革製品を扱うサルマ商会が代官を務めているという事もあり、この地区では装飾品や布製品を扱う商人や問屋が連立していた。


「リオンの外套ボロボロになってるみたいだから、見ていくか。」


「時間あるのか?」


 デルマテオは胸から懐中時計を取り出すと、時間を確認する。

「まだ大丈夫。リオンの言う通り、不思議とあの後誰にも絡まれずに来れたからな。思っていたより早く着けたみたいだ。」


「それなら買っていくか。鳥の島では1着ダメにしてしまったから、替えの下着と上下の服も見ていこう。」


「俺も準備足らずで3着アイテムボックスに入れただけで、それを着まわしてるからちょうどいい。」


 2人はパッと見た感じ一番品ぞろえの良さそうな大きな店舗に向かう。看板には大きくサルマの文字が書かれていた。


―――――――――――――――――――――――――――


「こちら海獣の表皮を使用しておりますので、水に強く、それでいて火にも強い特性を持っております。」


「こちらは、ソレアマという島の伝統的なキビと呼ばれているものでして、呪力が込められているため、着用者に僅かな負担がかかる代わりに爆発的な身体能力を得られる品となっています。」


「こちらは、」


 サルマ商会に入った瞬間、連携の取れた動きでリオンとデルマテオは囲まれた。

 そこから、品物一つ一つを丁寧に紹介され、リオンは飽き飽きしながら話を聞き流していた。


 一方、デルマテオは貴族の経験もあるため、このような接客には慣れているようで、それぞれの品物についてリアクションをしたり、説明を深掘り質問を返すなどしていた。


 商人の世界では貴族や有名冒険者のようなお金を持ち、羽振りがいい者たちをどうにかして贔屓にしようと躍起になっている。彼らの中でお金を持っていると判断される材料は、身に着けている衣服や装飾品、周りに控える従者や付き人、そして種族だった。


 今回の場合、質のいいローブを身に着けるエルフが剣客のようなお付きを従えながら店に現れた。判断材料として申し分ない条件の来客だ。特にエルフというのは商人の中に広がる認識として、外の世界に出ている者は財を成し、永久の余暇をどう潰そうかと悩む最高の客だというもの。


 どうにかして興味を惹く商品を買ってもらおうと必死になるのは当然だった。


 しかし、実際はリオンがグラバイオスで流通している通貨『シム』の手持ちはゼロだった。使える可能性があるのは、トラタで貰った教会金貨と、バルインの交易で得た僅かなルルだけ。


 商人たちが期待する豊かな蓄えや、道楽で大量購入するような気持ちは持ち合わせていなかった。そんなことを知る由もない商人たちはとりあえず商品説明に前のめりなデルマテオにどうにか気に入ってもらおうと、説明の応酬を仕掛けていた。


 リオンは隙をついてその場から離れる。買い物は自分の感覚とタイミングでしたい。それに、ここに置いてある商品は品質は良いのかもしれないが、どれも貴族用で華美なものが多い。


 この先の冒険で役に立つかといわれるとそうは思えなかった。


 リオンはいくらか換金しつつ、この先の冒険に何か役立ちそうなものがないか、商店立ち並ぶ路地に入っていく。


 さっきまでいたサルマ商会のような貴重な硝子張りで、入り口に襟付きの服を着た者が立っているような店ではなく、頑固そうな親父が無愛想に煙草を燻らせているような店の方がいい。


 長年の感覚的にその方が性に合ってあるし、良い出会いもあると信じている。


 路地を進みながら、めぼしい店を探す。ほとんどの店が個人向けではなく問屋や、卸をしている様子で、リオンに一瞥くれても商会の使いではないと悟り、直ぐに目を伏せて作業に戻ってしまう。


 中々上手く行かず、彷徨っているとふと一つの店が目に入った。

『ツ商会』


 リオンの思い浮かべていた店構えと一致する。店主は頑固そうな親父ではないが、気怠そうに肘をつきながら、酒瓶を指の腹で撫でている。


「この店では何が買えるんでしょうか?」


 せっかくの機会だ。ここは下手にいこうと丁寧に話し出す。


「んん??」


 店主の男はゆっくりの顔をあげ、ぼんやりとした目でリオンの顔を舐め回すように見る。


「買い取りと、商品購入は出来ますか?」


 リオンが取り出したのはトラタで貰ったいくつかの貝殻や装飾品と、バルイン交易で得た織物と色材だった。

 どれも価値はわからないが、旅の路銀にでもと言われて貰ったものだ。


「それは、珍しい貝殻だ。」


 初めて反応したのは客が来たことでも、その客が珍しいエルフだった事でもなく、その手に持ったキラキラとした貝殻だった。


「耳長の兄さん、手持ちは?」


「シムなら一シムもないです。ルルと教会金貨、それと帝国貨なら、」


「うちは、シムか、ルルでしか取り引きはやってない。全部買い取りって事なら、どうする?先に金で貰うか?商品見てからにするか?」


「商品を見せて貰ってもいいですか?」


「おうよ。それならちょっと待っとけ。耳長の兄さんにピッタリなもの持ってくるからよ。」


 そういうと、ゆっくり伸びをしながら立ち上がり、店の奥に消えていった。


 戻ってきた時には両手で持ちきれないほどの商品を抱えていた。


読んでいただきありがとうございます。


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