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不戦の願い1

「これで、位置がわかるはずだ。」

 

 ティケティスはボロボロの状態で、デルマテオへ魔道具を渡す。表情は随分と不服そうだが、仕方ない。あのまま戦い続けていれば周りを巻き込んで危うく死者を出す可能性だってあったのだ。


 お互い、必要のない戦闘を経てタマリと話し合っている最中、仲間をやられたティケティスが本気の状態でデルマテオに突っ込んできた。


 そうなれば戦う以外の選択肢は残ってない。タマリの声が届くはずもないため、激しい攻防を船から離れてみんなで観戦していた。最初は緊張感持って見ていた船員達も、デルマテオは敵ではなくリオンとは旧知の中だと知れ渡ると、賭けをし出す始末。


 タマリはついため息を漏らすが、そんな様子に見慣れた船員たちは気に留める事すらしない。


「あの男、エルフの知り合いだったんだな。」

海から上がり、海水を拭きとったプアが船も見つめながらタマリに声をかけた。


「そうみたい。ドワーフのみんなはリオンからミレア?での話を聞いていたみたいでなんとなく知ってる感じだったわ。」


「ミレアか、」


「プアは大丈夫?怪我はないの?」


「あぁ、」

 船上で行われるティケティスとの戦闘を見て、どれだけあの男が手を抜いていたのかがわかる。怪我がなかったことを喜ぶタマリを横目に、プアは悔しさを無理やり飲み込んだ。


―――――――――――――――――――――――――――


 デルマテオはティケティスから預かった魔道具を確かめながら、リオンの話を肴に酒を煽る。


「それで、おぬしはどうしてリオンを?」

 隣のゴドが問いかける。


「色々とあってな。リオンの力を借りなきゃいけなくなったんだ。」

 デルマテオては苦い顔をしながら、明後日の方向を見つめる。デルマテオの様子を見てゴドは話を変える。


「リオンとの話でも聞かせてくれんか?おいら達は娯楽に飢えてるんじゃ。船も貸すし人も貸す、その代わりと言ってはなんだが、今宵の宴を一つ彩ってくれんかの。」


「あぁ、いいぞ。それじゃあ――」


 この晩、デルマテオの話に島中が酔いしれて夜が耽る頃まで続いていった。

 翌日、酒で頭を痛めたデルマテオと寝不足のラパパ、いつも通り元気なパドンカはリオンを探しに船に乗り込む。


 参加メンバーにはガドや、タマリも手を上げたが人数が増えると色々大変になるからという事で、彼らだけで行くことに決まった。


 デルマテオが有志から選出し、この二人はリオンとの再会と新たな冒険に胸躍らせながら海風に体を預けた。


「これ、本当に大丈夫か?」

「お前さんのところの船長なんだろ?信じてやりなよ。」

「そうだけどよ、いくらなんでもここまで遠いなんてことあるか?」


 バルインから出発してしばらく経った。リオンの方向を示すという魔道具だけが頼りのため、この魔道具が効果を示してないと考えると、ここらで引き返さなければ取り返しのつかない事態になる。


 けれど、焦った様子なのはラパパのみで、後の二人は楽観的に海を眺めて、空を眺めて、を繰り返している。文句の一つくらい言いたいところだが、何もない海の上でこれらの行為に文句を言い出したら何もするなと言うのと同義。


 ラパパはこの焦燥感の捌け口を探していた。


「あ、鳥だ。」

 話しかけるまで黙り続け呆けていたパドンカが突然声を上げる。

「いきなり喋り出したかと思えば、パドンカ、わざわざ鳥ってな、」

「ラパパ、船を漕ぐ準備をしろ。あの鳥追いかけるぞ。」

「あっ、ちょっ、え??」


 それまでラパパの問答を適当に返していたデルマテオは、突然やる気を見せ船を漕ぎ始める。パドンカとデルマテオの力で圧倒的な推進力を持った船は鳥を追い越す勢いで進み続ける。


「お、おい、デル、パド、鳥は後ろに、」

「ラパパ、陸だぞ!見ろ!」


 置き去りにした鳥を指差すラパパとは反対方向をパドンカは指差す。

 そこには鬱蒼とした森が、島を飲み込むように栄えていた。


「お前さんのところの船長は間違ってなかったみたいだぞ。」


 漕ぐのと空を見上げることで必死になっていたラパパに、デルマテオが促す。魔道具の針はパドンカと同じ方向を指していた。


―――――――――――――――――――――――――――


 そこからリオンを見つけるのは簡単だった。

 リオンと別れる際にティケティスが渡した手紙。リオンは開封するのを忘れてアイテムボックスにしまってしまったため、気づいていなかったが、そのおかげでデルマテオ達はリオンの居場所より先にアイテムボックスを発見した。


 血が飛び散ったアイテムボックス、他にも外套や方位磁石がある事で少し違和感を覚えるラパパとデルマテオ。

 これらの物資があったのは原始的住居が建て並ぶ村のような場所。リオンがここを拠点にしているなら帰ってくるのではないかと話し合っている最中に衝撃音が響く。


 村から少し離れた箇所から強い圧を感じる。それと同じくらいに原住民らしきもの達がその方向へ走っていくのが見えた。

 仮面をつけた子どもたちの姿だった。


 尾行に気づかれないよう慎重に後を追うと、そこでは戦闘が行われている。それも命をかけた戦い。

 そしてそこに目当ての人物を発見した。


 ボロボロになり、今にも倒れそうな状態でどうにか生きているリオンの姿。


 パドンカは堪えきれず、隠れていた草むらから飛び出そうとするがラパパが無理やり押さえ込む。下手に出ていっても一斉放火を浴びるだけで終わる。


 大事なのはタイミング。そのためにデルマテオはラパパとパドンカに指示を出す。アイテムボックス等の物資を船に運び出し、いつでも逃げられるようにしておくこと、途中で見つけた敵は排除しておく事。

 

 布の仮面をつけた者達はリオンへの敵対行動が見えないため、入れ墨のような魔力痕があるものと、木製で派手な仮面をしたものが攻撃対象であることも忘れずに告げた。


 デルマテオはタイミングを見計らう。化け物みたいな鳥がわんさか現れた時は思わず声が出そうだったが、声を噛み殺して耐えた。


 その場に漂う殺気がリオンに注がれるのを感じる。これはまずいぞとデルマテオも戦闘態勢に入る。


 リオンの血を啜ろうと様々な攻撃が向かってきた、今だ。


 剣を構え、後ろに立つリオンの方を振り返り、

「リオン、お前ちょっと痩せた?」


『魔眼』を使い全ての攻撃をいなして、吹き飛ばす。『魔眼』に耐えた数人も、あっという間の剣捌きでねじ伏せる。

 剣についた血を振り払いながら、リオンの軽口を笑って受け止める。


 いつぶりだろうか、リオンとの再会につい表情が綻んだ。


 


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