表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/65

交錯する使命5

 この拠点もダメか、リオンは茂みの中から数日前より利用していた拠点を眺める。木の根、洞穴、その後は転々と森の中に拠点を作っては仮面装束に襲われる毎日だ。


 今日は川辺の拠点が襲われた。ちょうどリオンが釣りに行っていたタイミングという事もあったため、隙をつかれるような事にはならなかったが、危うく鉢合わせになるところだった。


 怪鳥との戦いから数日が経ち、食料に対する不安はある程度取り払えた事で、衣服と住居の問題に取り掛かる。植物を編んだり、怪鳥の羽毛で矢、擬似餌、睡眠具などの作成に時間をかけている。

 しかし、その分荷物の量が増え、着の身着のまま逃げ隠れるという方法が取れなくなってきた。


 そのため、事前に拠点の目星をつけているのだが、このペースで行くとリオンが慣れ親しんだこの辺りの地形から離れるか、仮面装束との直接対決のどちらかを選ぶしかないだろう。


 昨晩が満月だったという事は、月が最も欠けた状態から満月になるまでの期間ここにいた事になる。船を作ったり、荷物を回収する時間を考えれば新たな拠点を探して、彷徨う時間は考えられなかった。

 リオンは腹を決める。やらなきゃやられるというのであれば、こっちから行くしかない。


 仮面装束の村の位置は目星がついている。襲うならば夜しかないだろう。それか、リオンの拠点を襲いにきた奴らから掃討するか、色々と作戦を用意するため、目の前の拠点を捨てその場を去った。


―――――――――――――――――――――――――――


 族長のグゥアグァは焦っていた。来訪者の襲撃が総意となり、無事な男衆と親族を殺され憎しみ渦巻く者達で、ドゥアグの娘から聞いた来訪者の足跡を辿って棲家を潰している。


 何人か来訪者の姿を見た者はいるが、来訪者も自分たちを警戒しているのだろう、襲撃当初に比べ、棲家の場所も来訪者の姿もなかなか見つけられなくなっていた。


 時間と労力だけが消耗していき、そちらに割いた人数と、単純に狩れなくなった男達の数を合わせれば村の半数近くは、食料獲得をしていない事になる。

 それによる不満。日に日に食事は質素に、そして少なくなっていく現状。


 復讐をするのは勝手だが、働いた自分たちが損をするのはなぜだと反発が起こっている。復讐に燃える来訪者狩りをする者達も、罪悪感と焦燥感によって日々苛立ちを抱えて帰ってくる。皆が皆限界に近い状態だった。


 グゥアグァの考えていた最悪の状態に陥ってしまっていた。これらをどうにかすべく、翌日から少人数で多くの組分けを作り広範囲を探す作戦に変える。

 また、来訪者捜索と並行して採取を行う事で、当面の食料問題改善を図った。


 満月の晩。ゴバがいつもより騒々しい。強い月光を浴びるために月が満ちる頃、ゴバは夜行性になる。そのおかげで本来夜行性だった鳥達が別の場所に逃げ、森は静かさを取り戻す。

 時々聞こえるのは、ゴバの鳴き声と風を叩く音だけだった。しかし、今度の満月ではゴバの往来が増え、あまり群れることのないゴバ達が声を轟かせながら空を舞い続ける。


 明らかな異変。怪我によりなかなか動けないでいたドゥアグがこの異変を不自然に感じ、体を引きずりながらグゥアグァの元へやってきた。


「グゥアグァ、これはまずいぞ。」

「ドゥアグよ、体は大丈夫なのか、」

「今はそんな事気にするな。ゴバ達が変だ。これは、怒り。激しい憎悪を叫んでいる。」


 長年森に入り、ゴバと戦ってきたドゥアグにとってこの異変は恐ろしかった。この島の王である彼らは自由気ままに生きる。そのため、何かに執着することはほとんどない。

 けれどドゥアグは一度だけゴバが怒り狂った様子を目にした事があった。


 ドゥアグがまだ名前を与えられず、ドラゥバの息子として呼ばれていた頃、森の奥に入ってしまい、別の部族の縄張りに踏み込んでしまった。

 バレたら殺されることは知っていたため、慎重に来た道を帰っていた。その時、ゴバ狩りをする一団が目の前を通る。


 ドゥアグの事には気づかず、湖で水を飲んでいた小さなゴバ、おそらく子どものゴバを彼らは急襲して狩ってみせた。

 すると、空からけたたましい叫び声。まさに今森を包んでいるような鳴き声が響き始め、ゴバ狩りの一団を囲うようにしてゴバが三羽降り立つ。


 一羽に対して五人以上で狩りを行うゴバが、自分たちも同じ数現れるという事は死を意味する。それぞれが散り散りに逃げたが、森の中には彼らの命が潰える音だけがこだましていた。


「誰かが、ゴバの子どもを殺した。しかも、ただの子どもじゃない。ゴバの中の王の子だ。そうでなければこうはならない。」

「ドゥアグよ、これはまずいかもしれない。ゴバの群れが私たちを囲むようにして飛び始めている。」


 ドゥアグは最悪の未来を想像する。

「グゥアグァ、この村を捨てるしかない。今すぐにだ!」


 村の反対や疑問を全て後回しにして、グゥアグァは指示を出す。村から離れ散り散りになる事。そして次の満月にこの村に戻ってくる事。その間どうやってでも生き延びろ、と声をかけ様々な意見が飛び交う中、ドゥアグとその娘、他数人を連れてその地を去った。


 急な話だったため、アググゥや若い衆は村を守るとここに残り、グゥアグァの妹であるグリアは、家族や仲間を亡くした者達を集め、来訪者を狩らなければ話は進まないと、森に入っていく。


 満月の夜にこの村は別々の意思のもとへ向かって、散ってしまった。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ