アクバィラウでの諍い3
文章と文章の間隔を広めに調整しました。
一話から編集しているのはその調整です。
シゥ・ラウはこのアクバィラウにおいて自他共に認める有力者だった。
アクバィラウは広大な広さを持つが、高地と台地が殆どを占めおり、さらに草木も育たない岩肌に覆われている。
造船する材木も無いため、2〜3人がやっとの小舟で島が見える位置での釣りくらいでやっとだ。
そのため、昔は栄養を多く含んだコレイトと呼ばれる岩を砕き、粉にして数日凌いだり、わずかに顔を出す草花を汁にして食べていた。
何人も餓死者を出したアクバィラウだったが、ドワーフとの交易が行われるようになってから高地に生える草花を食し、高地に登るものがいれば攻撃を加えてきた山羊を定期的に狩れるようになった。
そこからアクバィラウでは餓死者が大幅に減少し、それだけでなく、ドワーフによって齎された鉄具によって、強固な岩を掘削し、採掘できるようになった。
お返しに上質な鉱石を渡す事で相互間で取り引きが行われ、その後、アザリの協力もありアクバィラウ内で育てられる作物を得る事が出来た。
それもあり、現在アクバィラウでは3つの業務ごとで代表者を選び、その彼らが選んだ首長が選出される。
分けられる3つの業務には、漁や海にまつわる仕事をするススの民。
山を削り、岩を掘るセケナスの民、政や祭事、食料や島民の管理を行うボハマの民。
最近はススの民が海の仕事と並行して山羊を育て、セケナスの民が豆を育てている。
アクバィラウの中で彼らの力関係は時代によって大きく異なってくるが、安定して力を持つのはボハマエの民であった。
島民数が多くないのに為政者の力が強いのは、アクバィラウの地勢が大きく関係している。
アクバィラウでは過去、その食料の少なさから一晩食べる事の出来る植生が認められる場所を一として土地の線引きをした。
例えば、海が近く貝や海藻などが容易に獲得できる海の近くでは間隔は狭く、山に挟まれ殆ど草木も生き物の反応のない場所では範囲が目視できないほど広かった。
これらの測量は当然、争いを生まないためのものであり、広い土地から僅かな食料を掻き集めるか、狭い場所だが手軽に食料を取るかという基準で当時のアクバィラウに住む者たちは自分の居場所を決めた。
この時から、ボハマエの民は測量する役目を持っており、赤い月が13回満月になるのを1季として、そのたびに適切な測量をしてきた。
ここ最近では食料ではなく広さを目安に測量し、食料を集め均等に分配するやり方に変えようと度々集会で話題に上がる。
しかし、その度にシゥ・ラウを代表とするボハマエの民が難色を示し、それに続いて山羊を多く飼うススの民の何人かも反対の意思を見せる。
それにより問題の解決は先に延ばされボハマエの民は力を持ち続けている。
これから行われる集会においてもシゥ・ラウの発言力は揺るがないだろう。
少し無理を言っても通る。今回の議題はお飾りの副首長であるジ・ラウが連れてきた客人への対応のようでバルインからの使者だという。
バルインといえば、アクバィラウの中では最も親愛を持って接するべき島と島民と教わるほど、彼らから受けた恩には多くのものが敬意を示している。
クラウティスからの情報ではバルインも貧しいことは明らかなため、食糧庫にある余剰分の半分くらいくれてやっても良い。それで彼らの作る武具が手に入るなら安いものだ。
友好的な振る舞いをして、仮に食糧援助を頼まれたら快く快諾しよう。
シゥ・ラウは部下に声をかけ、事前に余剰分の仕分けと、積み込みやすいように梱包を命じた。
現在島民たちは食料への不安がなくなり、娯楽や仕事への熱量が高い。ここでバルインを熱心に支えお返しの鉄道具を貰ったと島民に言い回れば次期主張は自分で決定だろう。
そうすればアザリとクラウティスの戦争はすぐに終結に向かう。当然、アクバィラウはクラウティスの同盟となりアザリ陣営を内側から破滅に追い込むつもりだ。
アザリのような支配ではなく共生、共存ではなく、クラウティスがここら一帯を統括することで、タオス海戦に巻き込まれても発言力を持つ存在として君臨するために。
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「今日集まってもらったのは、」
ジ・ラウの進行で、アクバィラウ集会が始まった。アクバィラウの中心にあり、外観から見てわかる唯一の建造物である聖堂。
聖堂はアクバィラウの島民全員が入り切るほどの大きさで、アクバィラウで1番大きな建物でもある。
ジ・ラウの声は反響石と呼ばれる特殊な鉱石を使った筒を通して、聖堂内に響く。
聖堂の構造的に音の響きがいい事もあり、ジ・ラウの発言を聞き漏らす心配はない。
ジ・ラウはまず初めに島内で管理する食料状況、次の満月までに減っていくだろう量と、これから増えていくだろう量を説明。これまで行ってこなかった漁の解禁宣言、追加で新たにアクバィラウの役職枠を作る事を話した。
漁の解禁、役職枠増加は島民達にとって明るく、喜ばしいニュースであり、2度ほど聖堂内が大きくざわついた。
いつもならこれくらいの話をすれば集会は終わる。島の人間達もそう考えたようで、今晩の献立を話したり、聖堂の出入りの方まで移動する者もいた。
「これから今日の本題に入る。」
ジ・ラウが仕切り直したこの発言で3度目のざわめきが起こる。役職を持つ島民達はなんとなく知っていた様子で、なんだか誇らしげな表情を浮かべていた。
「この中には知っている者もいるかもしれないが、昨日からこのアクバィラウには客人が来ている。彼らを皆に紹介しようと思う。」
そう言うと、ジ・ラウは壇上を降り壇上の両脇にある扉の、右側を手のひらで指し、注目を促す。
ドアは勢いよく開かれる。開かれたその瞬間、閉めきられた聖堂内では吹くはずのない風がアクバィラウの島民を包み込む。明らかに人工的な風の体験に、皆一様沸き立つ。
若い者達は何か理解出来ていない様子だったが、不思議な体験というだけで高揚するものだ。風の正体は魔法だと察した者達も、実際に味わった興奮で、喜びはしばらく離れないだろう。
「彼らはバルインからの使者である。」
壇上に上がったのはリオンとパドンカ。バルインの名前と、エルフの登場に、4度目のざわめき。これが今日1番の大きさだった。
壇上でリオンはこう告げる。
「我々バルインはアクバィラウを救いにきた。」
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