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バルインの地にて6


 バルインについた3人は、思っていた以上の歓迎を受ける。


「おめぇさんが凄腕のエルフかいな。」

「ギダ、その汚ねぇ面をエルフの旦那に見せんじゃねぇ。どっか行け!」

「ガダうるせぇ!お前こそどっか行け!」

「リオンの前でしょうもない喧嘩するなお前ら、」


 ガドが2人に拳骨を落とす。


 少し前に海岸で、涙を溜めて、再会を喜んだガドの表情はもう明るい。安堵の落ち着きかと思っていたが、ガドに連れられた行き先、宴会場で見た光景は、幾つもの料理とその真ん中に陣取るトンドの肉塊が置かれている。


 さらに、残り少ないと言っていた酒もテーブルに並べられていて、ガドの明るさはこれが待っていたからなんじゃ無いかと、久しぶりの酒樽を前にして目を輝かせるガドを見て思う。


 最下位の挨拶をそこそこに、リオンは3人を呼び止めて、

 「ガド、ギド、ゴド、これ約束の物だ。」


 あの岩礁で約束した品物。ボックスから酒瓶を取り出す。それも10本。


「こんなに貰えねぇよ。」

「わしらがお礼すべき立場なのに、」

「ガッハッハ、リオン、こりゃ最高じゃ!」

「ひさびさの酒なんだろ、これくらい奮発しないとな。」


 彼らと出会って時間はそこまで経っていないが、彼らの振る舞いには色々と助けられている。好きな物は好きな人の元に行くべきだ。リオンは好まない特に酒精の強い酒を渡す。


 酒という単語を聞きつけた他のドワーフ達も湧き立つ。島のほとんどが集められた宴会場にいた全員が知らない酒に歓喜する。その歓声が宴会場を揺らすほどに。


 彼らの熱気を後にして、客人用の席に案内するとマリという女性のドワーフがリオンとティケティスに声をかける。そこにゴドも加わり、宴会場の中で少し高くなっている方に向かっていく。


 そこでリオンは、

「なぁ、ゴド、私の滞在と、ティケティスの話、島長に話したいんだが、紹介してもらえないか?」


 と、奥の席にいけば島長と会えるのではないかと考え、ゴドに頼む。


「あぁ、それなんだけどよ、今このバルインを指揮してるのはおいらなんだ。」


 ゴドは苦笑いを浮かべながら、照れた様子を見せる。


「「え?」」


 まさかの告白に、それまで静かにしていたティケティスも、リオンと全く同じ驚き方をする。


「ちゃんと説明しないといけんなとは思っとったんじゃが。あれじゃろ。バタバタしとったからの。」

「いやいや、だとしても、」

「細かいことは気にするんじゃないぞ。って事での、まぁ、ティケティスの海賊はドワーフの島バルインへの上陸、そして滞在を認めよう。島の長、ゴドが地の神に誓って助けとなろう。」


 それならさっき言ってくれても、とリオンとティケティス内心思っていたが、色々考えての事なのだろう。素直に感謝を伝える。


「ほんとか、!ありがとうゴド!こうしちゃいられねぇ、」


 ゴドの許可を得たティケティスは、その身体能力の高さを存分に利用して、海の方まで飛んで行く。いち早く仲間に伝えたい一心だったのだろう。余力全てを使って仲間達を呼びに向かった。


「あ、おい、せっかくなら、」

「言っちまったの。疲れてるだろうに、少しでも食っていけば良いのにの。」

「ほんとな、」


 ゴドとリオンは相変わらずなティケティスの背中を見て、呆気に取られた後、笑い合った。

―――――――――――――――――――――――――


「お前ら!酒持ったか!」


 岸で使ったような張り裂けるほど大きな声で、ゴドは乾杯の音頭を取り始める。


「しばらく、お前らには我慢させてきた、この先もこれまで通りにいかん部分はあるはずじゃ。ただの、明日からはリオンがいる!ティケティスが、ティケティスの仲間達が、おいら達ドワーフの家族となり、助け合っていける!机を見ろ!こんなにでかいトンドを、4人で狩った!おいら達はしぶといぞ!また明日の晩の酒のために、明日も生きよう!地の神に感謝を!」


「「「「「「「感謝を!!」」」」」」」


 こうやって口上を切るゴドを見ると、確かに彼がドワーフを従えているのだという実感が湧く。


 島長が不在、というより帰ってこないゴドをどうするかという話し合いは、ガド達がバルインについて、数時間した後、ゴドが帰ってくるまでの間夜を明かして話し合っていたと言う。


 彼らの関係は親や、友というより兄弟に近い。皆が、兄であり弟であるそんな関係だ。ドワーフの男達は結束が強いというのはよく知られている。島という環境がそれをより強固にしているのだろう。


 巷ではエルフとドワーフは犬猿の仲であると噂されているらしいが、それは領土が隣り合う一部の部族達だけで、むしろお互いがお互いをリスペクトし合っている。


 とは言っても、それぞれが合流を持つ機会というのも少なく、金属並みの硬度を持つ木を使い、ほとんど金属を使わないエルフと、大量の石炭を使うため、木を焚べる文化が衰退したドワーフとではお互い求める物が無い状況なのだ。


 もちろん、個人間でのやり取りはお互い長命種という事もあるため、大陸ではよく見られる関係だが、それは人間から見た長命種という括りであって、エルフからしたら他より少し長く生きる種族として捉えられ、ドワーフからすると自分の孫や曾孫よりも長く生き続ける種として捉えている。


 つまり、人から見たらエルフ像となんら変わりないのだ。


 リオンを快く迎えてくれたドワーフ達は、ゴドに挨拶する流れでリオンにも一人一人声をかけていく。その度にリオンは涼しい反応を返すが、エルフらしいと解釈した彼らはご機嫌に席へ戻っていく。


 宴も中盤に差し掛かり、ゴドが他の席に向かい出したところで、それを見計らったように別のドワーフ達がリオンの近くに向かって来た。


「エルフの旦那の話聞かせてくれよ、」


 程よく酔ったドワーフたちがリオンを囲んで武勇伝や冒険譚を聞きたがる。久しぶりの酒で上機嫌のリオンは、ゴド達と行ったトンド狩りの話をしようと思ったが、


「トンドの話はもう何回もギドから聞いた。」


その雰囲気を察したドワーフが、別の話題を求める。


 リオンは少し悩んで、大陸での冒険の話をする事にした。


「これは、俺が、大陸にいた頃の話だ、」


 酔いの回る中、リオンはある日の出会いを彼らに語る。

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