落ちこぼれの姉と優秀な妹の姉妹百合小説
ちょっとエッチな姉妹の百合
「これより、魔術試験を行います。今回は、一番初歩的な魔法である火球を飛ばす魔法を行ってもらいます。まだ皆さんは新米魔術師なので、手から炎を出すだけでも構いません。皆さんの魔術に対する姿勢で評価するのであまり気張らないでください」
レグリーム王国第一魔術学校は、例外を除き、貴族、王族が通う学び舎である。歴史学から政治学、礼儀作法、そして魔術。魔術を使えるのは一般的に貴族の血を継ぐ者だけなため、特に魔術学は貴族皇族の威信をかけて重点的に学ぶ必要があるのである。
「次、モカ・マルボロ・レグリーム様」
「先生?」
「何でしょうか、モカ様」
「全力で魔術を行使してよろしくて?」
「もちろんでございます。モカ様。全力で臨んでくださいませ」
モカと呼ばれた少女は微笑む。
「わかりました。全力で行きますわ。【炎の眷属イフリートよ、我、モカが命じる。深淵の闇より生まれし地獄の業火よ、現世に顕現せよ…】」
「えっ…モカ様のあの魔術って…?」
「多分、第五階級魔術、【インフェルノ・ヘル】よ。私達はこぶし大の火球を顕現させるだけでやっとなのに、私達と同じ年齢でこの魔法を使えるなんて、やっぱり皇位継承権一位のモカ様は格が違うわね」
周りがざわめく中、モカは詠唱を続ける。
「【燃えよ燃えよ、この身を焦がせ。世界を喰らい、この地を燃やせ】【インフェルノ・
ヘル】!!!」
瞬間、激しい爆風が起こり、的が立てられた場所に黒い炎の火柱が立つ。数秒ほど大気を喰らい燃えたあと、一瞬にして炎は消えた。
「先生、どうでしょうか?」
辺りは沈黙に包まれた。
「す…素晴らしい!流石モカ様!この年で第五階級魔術を習得していらっしゃるとは。もう私が教えることは無いでしょうね」
「いえいえ、先生のご教授の賜物ですわ」
「すげーな。あんなに実力を持ちながら謙虚なんだぜ」
「流石は皇位継承権第一位のモカ様、素敵ですわ!」
生徒や先生の称賛の声が響く中、モカは満足そうな表情だった。
「では次、えー…、シェラ・メビウス・レグリーム様」
「は…はい…」
シェラ・メビウス・レグリームと呼ばれた少女が前に出た。しかし、彼女の表情は暗いままで、姿からは生気を感じ取ることはできない。
「い、いきます…【炎の眷属イフリートよ、我、シェラが命じる。その力をけ】っ!」
直後、シェラと呼ばれた少女の手の中の炎が砕け散った。
「あ…ご、ごめんなさい…ごめんなさい…」
「ま、まあ、はじめのうちは魔力をコントロールできないことは誰でもありますよ。シェラ様、そう落ち込まないでください」
「はい…申し訳ございません、先生…」
シェラ・メビウス・レグリーム。元皇位継承権一位、モカ・マルボロ・レグリームの腹違いの姉である。しかし、モカとは違い、学業、剣術、魔術ともに才能を開花させることはなく、このままこの国の王になってしまうと、国の未来も危うくなるというわけで、体が弱いという架空の理由で皇位継承権を剥奪され、もともと存在しなかった者として扱われている。だが、次に生まれてきたモカは全てにおいて他を圧倒する力があり、皇位継承権を与えられた。
「やはり、シェラ様は本当に皇族の落ちこぼれだったんですわね…」
「しっ、聞こえてしまいわすわよ」
「それに比べてモカ様は素晴らしいですわ」
すでにシェラ本人は、妹のモカと比べられることは慣れているが、それは自分の責任であるということを知っている。それでも自分はなんでこの世界に生まれてきてしまったか、自分という存在は必要ないのではないかと考えてしまう。
〇〇◯〇〇
「モ、モカ様…や、やめてください…」
「だーめ。二人のときはモカちゃんでしょ、ね?おねぇちゃん?」
校舎裏で密着する二人、シェラとモカだ。
「おねぇちゃん、キスしていい?」
「だ、だめです…私達姉妹だし…女の子同士だし…」
「周りの大人は私達が姉妹だってことを隠しているらしいのに?」
「それは…ちょっと、モカ様…んっ…」
二人の唇が触れある。そして、お互いを求め合うように舌は口の中に侵入していく。
シェラは恥ずかしくて顔が真っ赤になるが、それでもなんとも言えない背徳感で体全身に快楽を感じているのがわかる。
「キス…しちゃったね、おねぇちゃん。おねぇちゃん、私のこと好き?愛してる?」
「えっ…私達、姉妹だし…んっ!モ、モカ様…」
「あれ~?下はこんなに濡れてるのに私のこと好きじゃないの~?」
「その、いや、あの、モカ様のことがす、す、好き…です…」
「モカ様じゃないでしょ~?モカちゃん、でしょ?そんなおねぇちゃんにはお仕置きだね」
指先の動きが更に激しくなる。しかし、シェラの下半身はそれを求めるように腰が動いてしまいまう。時折口づけを交わしながら更に行為は激しくなる。
しかし、午後の講義を知らせる鐘の音でその場はお開きとなった。
〇〇◯〇〇
講義も終わり、寮の自室でくつろぐ。王宮の自室と比べると、装飾も広さも劣るものの、やはり王族として扱われているのがわかるほど部屋の広さ、ベッドの広さは普通よりずっと大きい。
そして、そろそろ睡眠を取ろうとしたところで、部屋の扉がノックされた。
この時間に訪ねてくる人なんて一人しかいない。多分シェラだろう。
「あの…モカさ…モカ…ちゃん…?起きてます?」
「おねぇちゃん!今開けるね」
シェラを部屋に向かいいれると、おどおどした様子で立っていた。
「おねぇちゃん、ベッドにでも腰掛けといて。お茶入れるね」
申し訳無さそうにベッドに腰掛けるシェラ。そして渡されたお茶をちびちびと飲んでいく。
「あの…モカさ…モカちゃん。私からこういうのもなんですが、もうこの関係終わりにしませんか…」
「それは、どういうこと?おねぇちゃん?」
シェラは気まずそうに、罪悪感を孕んだ声でいった。
「私はもう皇族を追放された人間です。これ以上モカ様といると、周りから良くないことを言われるかもしれません。なので、この関係ももう終わりにしませんか?」
部屋に沈黙の空気が染み渡る。しかし、モカは口を開けた。
「そっか…。じゃ、今日で最後にしよ。けど…今日だけは、ね?」
ベッドに押し倒されたシェラは、はじめは何が起こったかわからない様子だったが、自分がされていること、この後に起こりうることを察し、頬を赤に染めた。
「おねぇちゃん、私のこと嫌いになっちゃった?」
「そ、そんなことは…」
「じゃあキスして。おねぇちゃんから」
モカの顔が近づくに連れ、シェラは顔を背けようとするが、この瞬間が終われば、お互い他人になってしまう孤独感から、近づく唇を避けることはできなかった。
溶けるほど熱いキスを終えた後、モカは立ち上がり、机に向かい窓から月を眺めた。いつもピンと背筋が伸びているその背中は、丸まって哀愁漂う姿になっている。
「じゃあね。おねぇちゃん、違うな。シェラ様。おやすみ」
「あ…」
ずっと周りの大人からは蔑まされ、頼れる人がいない中、唯一おねぇちゃんと慕ってくれた妹が、離れていく。しかも、自分の言葉で。
耐えられない。耐えられるはずがない。周りがなんと言おうとしても、もっとそばにいてほしい。
そして、シェラは言ってしまった。
「モ、モカちゃん。いかないで…」
モカは振り向き、驚いた顔をした。
いままで、モカ自身からシェラに接触したことはあっても、シェラから話しかけてくれたことがなかったからだ。
しかも、毎日自分を押し殺し、発言も行動もしない彼女がモカを求めてきたのだ。
「おねぇちゃん、私のこと嫌いになっちゃったんじゃないの…?」
「ち、違う。好き。誰よりも…好きなの!」
美しく整ったシェラの顔は、歪み、涙で化粧されていた。
「今日で最後とか言ってごめんなさい!私はモカちゃんが好き!一生離れたくないくらい好きなの!」
鼻を啜る音と嗚咽で、もう言葉にならない声が部屋の中を満たしていく。
そして、モカはシェラを包み込み、頭をなでた。
「そっか。おねぇちゃんも私のことが好きだったんだね。じゃあ、相思相愛だね。おねぇちゃん…」
シェラはベッドに押し倒されるが、一切の抵抗をしなかった。
二人の唇が再び重なる。しかし今回は、シェラも積極的に、互いの味を確かめ合うように舌を絡め合う。
「ぷはっ。おねぇちゃん今日は積極的だね」
「私はモカちゃんが好き…だから…。誰よりも愛してる」
二人はお互いを見つめ合う。以前は見つめていても、シェラは目を逸らしてしまう。しかし、今は違う。まるで恋人のような、否、それ以上の関係で互いを見つめ合う。
「モカちゃん…いいよ…。私をもっと愛して。おねぇちゃんを好きに…して…」
「わかったよおねぇちゃん」
モカの指がシェラのショーツに伸びる。
「んっ…ん」
モカの愛撫が激しくなるにつれて、シェラの嬌声も大きくなってゆく。
顎からゆっくりと舐めていき、耳に到達すると、シェラの体はビクンと跳ねた。
「おねぇちゃん、耳弱いんだね」
「恥ずかしいから…あまり言わないで…」
「じゃあ、今度はおねぇちゃんのおっぱいも舐めてみようかな」
シェラの乳首を指で弾き、刺激を与える。そして、舌の先で転がすと、シェラは嬉しそうに嬌声をあげた。
「おねぇちゃん。そろそろ私のことも気持ちよくしてよ」
モカはおもむろにネグリジェとショーツを脱ぎ、シェラの体に重ねた。
お互いの体が密着し、汗の匂いが、鼓動の音が聞こえる。
「おねぇちゃん、いくよ」
お互いの下部を重ね合わせ、ゆっくりと溶けて混ざっていくかのごとく上下に動いていく。
その間にも、口づけを交わし、相手を喰らうかのように行為を続ける。
そして、シェラとモカは絶頂に達した。
「気持ちよかったよ、おねぇちゃん」
「私も…気持ちよかったです」
全裸で向かい合い、指を絡めお互いを見つめる。
彼女たちは今、幸せの絶頂にいるのだろう。
そして目をつぶり、眠りについた。
〇〇◯〇〇
目が覚めると、モカのベッドからシェラはいなくなっていた。
昨日のことは夢だったのではないか、と思ったが、濡れてるシーツが現実だと語っている。
物思いにふけてると、ドアがノックされた。
「モ、モカちゃん。一緒に学校に行きませんか?」
モカはその返事に迷いはなかった。
「行こ!おねぇちゃん!」
完