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Re:ヒールオブザクリーク〜少女回復戦記〜  作者: 川口黒子
序章 首都陥落
7/9

6話 決意を胸に

 私はただ、呆然と、ママの亡き骸を見下ろす。


「……フラン、時間がない。家の中で、何か母の形見となるものを探してこい。……私は車に戻る」


 ジェシカさんはそう言って、車のほうに戻っていく。反対にレベッカは私の隣に座った。


「ふ、フラン……ごめん……私……」


 レベッカは今にも泣きだしそうだった。


 レベッカは悪くない。何も悪くない。


「……大丈夫だよレベッカ、助けてくれてありがとう」


 だけど、笑いかけることはできなかった。



 私はフラフラと立ち上がり、リビングへと向かう。心配そうにレベッカがついて来る。


 リビングに着くと、キッチンに飾られた、ママの趣味だった生花が目に入る。シンクには洗いかけのお皿が置いてある。シンクの近くにある棚は、ママが骨董屋で気に入って高値で買ったものだ。

 キッチンを横目に、いつも食事をする机と椅子の前に立つ。今日の朝、ここで朝食を食べた。ママもいたし、パパもいた。2人とも、笑ってた。


 今日の午後、全てを失った。


「レベッカ、ちょっとこっちに来てくれ」


 ジェシカさんがリビングの入り口でレベッカを呼ぶ。レベッカは私のことを気にしていたが、今は1人にさせてやれとジェシカさんが言うと、黙ってリビングを出た。


 家に帰りたい。


 ここは私たちの家じゃない。


 きっとそうだ。何もかも似ているだけの、"他人"の家だ。


 私はリビングを出て、階段を登る。"他人"の部屋に入る。


 朝無造作に布団を剥いだまま学校に向かったはずなのに、きちんと整えられている。きっと、ママが直してくれたんだ。部屋着だってベッドの上に脱ぎ散らかしたままだったのに、ちゃんと畳まれて置かれてる。


 あぁ、ダメだ。


 ここは、"私"の部屋だ。


 優しいママに頼りっきりの、ダメダメな私の部屋だ。


 だけど1つだけ、私の物ではない何かが、机の上に置かれていた。それは文字がびっしりと書かれた手紙と、2つの小さな瓶。1つは空で、もう1つには青白く光る液体が入っている。


(これは、一体……)


 不審に思いつつ、私は紙に書かれた文字を読む。それは、紛れもなくママが書いたものだった。


『愛するフランへ。貴女がこの手紙を読んでいることを切に願います。私は昔、ある大きな罪を犯しました。それは本当に取り返しのつかない罪です。私が100回死んだとしても、到底償うことなどできない罪です。ボードウィンから貴女にあの黒い傘を渡して欲しいと頼まれたとき、私は覚悟を決めました。貴女には、なるべく悟られないよう振る舞いました。

 ここに、私の罪を告白します。私は、ブリッシュ王国にあるコロン研究所で回復(ヒール)の原液を作りあげました。これは個人の特質だと思われていた回復(ヒール)を誰でも使えるようにしたものです。私はこれを医療の発展に役立てようとしました。ですが、それは叶いませんでした。原液は軍の手に渡り、兵器利用されたのです。全ては、軍に渡るのを阻止できなかった私の責任です。何も知らない無垢な市民が、私のせいで死にました。たとえ償いにならないとしても、私は彼らと同じ結末を辿るべきです。

 フラン、本当にごめんなさい。貴女に辛い体験を強いてしまった。この手紙の横に置いてある瓶が、回復(ヒール)の原液です。1つは私が飲みました。これが私が貴女に遺せる唯一のものです。これを必要としている組織や人に売れば、今後不自由なく生活することができます。軍に売っても構いません。たとえ何を犠牲にしようとも、貴女は貴女の幸せを1番に考えてください。フランには、その権利がある。どうか、生きて。ヘレナより』


 書いてある内容が、あまりにも衝撃的すぎる。


 とてもじゃないが、信じられない。


(ま、ママが、研究所で働いていた……?そこで作った回復(ヒール)の原液が……"雨"に……?けどママは、それを望んでなかった……)


 目の前に置かれている瓶を見る。1つ空になっているのは、ママが飲んだから。そしてこれを飲むと怪物になる。はるか遠くの場所にあったはずの極秘兵器の真実が、今ここにある。これさえあれば、この戦争を根底からひっくり返すことができるだろう。だけど……


(ママは、すごく後悔していた。私には軍に渡してもいいと書いてあるけど、本当は人を救うことに使ってほしいはず。ママの作ったこの液体で、多くの人間が亡くなった。だったら私が、これで多くの人間を救うことができれば、きっとママの償いの手助けができる……!)


 軍に渡すのはやめておこう。帝国軍が敵と同じく戦略兵器を獲得した場合、この戦争の死者数は計り知れないものになる。かといって、このまま敵の攻撃を無防備に受け続けるわけにはいかない。


 信頼できる科学者や技術者にこの原液を手渡し、"雨"を防ぐ方法を見つけてもらう。私自身の目で見極めた相手じゃないと危険だ。優秀な人材に会い、協力を得て、尚且つ実用段階にまでもっていくためには権力の中枢にまで潜り込む必要がある。


それに父、ボードウィンの行方も探さねば。この手紙を見るに、ママが研究者であったことを父は知っている。あの傘はもしかしたら父が雨に先んじて作った物かもしれない。だとしたらなぜ事前に雨が来ると知っていた?知っていてなぜ誰にも伝えなかった?どうして私にだけ、傘を託したの?


謎があまりにも多すぎる。手紙に書いてある内容もまだちゃんと理解できたわけじゃない。だけど、【戦略】はもう頭の中にある。


(雨を防ぐ方法を確立させる。パパに会って、今まで隠していたことを全て話してもらう。それまで、私は絶対に死ねない。死ぬわけにはいかない)


「ママ、安心して。私は生きるよ」


 そう呟きながら、原液の入った瓶と手紙をポケットに入れて玄関の方にまで戻る。するとそこにあったはずの母の死体が消え去っていた。その代わり、レベッカが玄関前でたどたどしく待っている。


「あ、フラン、その、お前の母ちゃんは車に乗せておいた……埋葬、してあげなきゃ……だから……」


 レベッカは申し訳なさそうに下を向く。


「レベッカ、そんな顔しないで。レベッカは私を守ろうとしてくれたんだから、何も悪くないんだよ。レベッカがここまで付いて来てくれて、私嬉しかったよ。ありがとね!」


 私はそう言ってニカっと笑う。私のわがままでここまで来てくれたのに、レベッカに苦しい思いをさせてしまった。もうこれ以上、レベッカに辛い顔はさせたくない。


「もう、大丈夫なのか……?」


「うん。ママが最期に言ってたんだ。『生きて』って。だから生きるために、私は前に進むよ。レベッカも、だよね?」


「……おう!どこでだって生きてやる!生き抜いて、フランとまたデパートに行くぞ!」


「——!ふふっ、そうだね!まだ紹介したいところ、たくさんあるもん!」


 互いに微笑み、そして玄関の扉を開ける。



『行ってらっしゃい、フラン』



 ママの声がした。振り返ると、そこには誰もいない。だけど、ここはたしかに、"私たち"の家だ。



「行ってきます、ママ」



 前を向き、家を出る。車に乗り込むと、すぐに発進した。揺れる車の中、ジェシカさんが話しかけてくる。


「……フラン、形見は見つけられたか?」


「はい」


「そうか、それは良かった」


「その、ジェシカさん、さっきは本当にすいませんでした。私の勝手な行動でジェシカさんを危険に晒してしまいました。今まで散々怪物を殺してきたのに、自分の親は殺すなだなんて、図々しいですよね……」


「……いや、親を想うその気持ちは間違っていない。むしろ、それを忘れるな。時に自分の信念のためには、合理性や正しさを無視しなくてはならないことがある。それがお前にとっては母を守ることだったんだ。合理性や正しさばかり追い求めたら、いつか破滅する」


 合理性や正しさ、それは軍人が最も大切にするもののはずだ。だがジェシカさんは違うらしい。彼女には、彼女なりの信念があり、それを第一に行動しているのかもしれない。


「そういえば、我々は今から陛下を退避させた都市、ダンケルに向かうが、その後、お前たちはどうする?」


「私は……まだ決めていません。レベッカは?家に戻る?」


「うちの家も危険だから、親父たちは多分じいちゃんの家に避難してると思う。私は一旦そこに帰るぜ。もちろん、顔見せたらすぐにフランのところに戻るから、安心しろよ!」


「……レベッカ、もう私に付き合わなくても大丈夫だよ?レベッカの身の安全を考えたら、祖父の家にいた方がいいと思うし」


「何言ってんだ。フランは今頼れる人がいない状況だろ。あ、そうだ!私と一緒にこっちに来るか?歓迎するぜ!」


「そんなの悪いよ」


「いいっていいって、友達なんだから気にする必要ない」


「けど……」


 話しは平行線を辿った。私は中枢に入り込むためにも軍を離れるわけにはいかない。今そのことを言ったら間違いなくレベッカも付いてこようとする。もうレベッカを危険な目にあわせるわけにはいかない。

 だから私は、友達に初めて嘘をついた。


「……分かったよ。私も一緒に行く」


「っ!やった!うちのじいちゃんは料理が上手いからな!楽しみにしてくれ!」


「……うん」


 胸がキュッと苦しくなる。レベッカはきっと、私が嘘をついたことを知ったら怒るだろう。もしかしたら、もう友達ではいてくれないかもしれない。それでも、レベッカが危険な目にあって、もし死んでしまいでもしたら……私は……


(これでいい。これでいいんだ……)


 私は何度も心の中で呟いた。



 ▲▽▲▽▲



 時間が経ち、辺りが徐々に暗くなっていく。綺麗な夕焼けが空を橙色に染めていき、のどかな田舎の風景が道沿いに広がって見える。この道を進めばダンケル市に到着するらしい。


(この道、前にも通ったことがあるような……)


 そう思っていると、車は森に突入した。森は閑散としているが、右斜め前方に何やら白い建物が建っているのを見つける。それを見た瞬間、私はハッと思い出した。


「すいません!ちょっとあの建物の前で止まってください!」


 車はその建物の前に停車する。建物は新しく建てられたものでは無いが、森の中にひっそりと立つその姿にはどこか趣きを感じられる。


「この家がどうかしたのか?」


「ここ、父の別荘なんです。その、母の遺体をここで眠らせてあげたくて……」


「……なるほどな。遺体も腐敗が進んでいる。ここで埋めるとしよう。レベッカ、出すのを手伝ってくれ。フランは埋める場所を決めておけ」


「はい」

「わかったぜ!」


 車を降りて私は別荘の入り口へと向かう。扉に手をかけてみるが、やはり鍵がかかっていて開けられない。それに、お墓を作るならあそこが1番適しているだろう。


 私は別荘の裏手に回り森の奥に進んでいく。すると徐々に木々が無くなっていき、少し開けた場所に出た。進んだ先は崖になっており、おかげで沈もうとしている夕日がクッキリと見える。崖下の木々の葉は紅葉のように赤く輝いていた。


「お〜いフラ〜ン!どこだ〜?」


 レベッカの声がしたので振り返ると、レベッカたちが森の中でキョロキョロしている姿が木々の間から見える。


「こっちだよー!」


 私はレベッカたちを呼びながら手を振る。あちらも気づいたらしく、レベッカがスコップを持って小走りで、ジェシカさんが遺体を背負ってこちらに来た。


「うぉぉーーー!!絶景だーー!!」


 レベッカは興奮した様子で夕日に目を輝かせている。


「……いい場所を見つけたな」


「……はい」


 私たちは早速崖の手前に人が入れるだけの穴を掘り始める。時間がかかるかと思いきや、ジェシカさんとレベッカが尋常じゃないスピードで土を掻き出していき、日が落ちきる前に掘り終わった。

 布に包んだ母の遺体をその穴にそっと入れる。


「ごめんねママ……ちゃんとした棺を用意できなくて……」


 私たちは両手を組んで神に祈りを捧げる。


「どうか、安らかに」


 掻き出した土を穴に戻していく。戻し終わる頃にはすでに日は沈み、頼みの明かりは太陽の光の残滓のみとなった。


「墓石はどうする?」


「……もう日が沈んでしまったので、今度業者に依頼してちゃんとした墓石を作ってもらおうと思います」


「じゃあそれまでどこに埋めたかわかるように目印として何か石とか探してこようか?」


「ううん、大丈夫。さっきの夕日がちょうど落ちていく延長線上に埋めたはずだから、夕日が墓石の代わりになってくれるはず」


「いいな!それ!なんだかロマンチックだ!」


「……ヘレナ、光を意味するママの名前にぴったりな場所。ママ、喜んでくれるかな」


「絶対喜んでるぜ!こんなにいい場所滅多にないからな!」


「……うん!そうだね!」


 私たちは再び祈りを捧げて、別荘を経由し車に戻る。周りはすっかり暗くなっていて、車のヘッドライトだけが私たちの進む先を照らしていた。


 森を抜けると、ついにダンケル市の明かりが薄っすらと確認できるようになる。入り口に到着して真っ先に向かったのはこの市の役所だった。ジェシカさん曰く、そこに先に行った隊員たちが集まっているらしい。役所の前の広場にはすでにテントが張られていた。


 私たちの車が広場に入ると、テントの前や中でどんちゃん騒ぎしていた人たちがわらわらと集まってきた。


「大隊長!待っていましたよー!」

「酒と食糧が手に入ったんすよ大隊長!一緒にどうです?」

「折角作戦が成功したんだ!今夜は宴だー!」

「コラー!ジェシカしゃんを困らせないのぉー!あ!レベちゃんフラちゃんもいるぅー!やっほぉー!」


 そこにはクラーラもいて、どうやら相当酔っているらしい。車の窓に張り付いてこちらに手を振っている。


「……たく、浮かれているな。フラン、レベッカ、すまんがあいつらの相手をしてやってくれ。私は首相らに報告しなくてはならないことがある」


「あの……あんなにはしゃいでいいんですか?作戦は成功しましたけど、撤退作戦だったのでそこまで喜べるものじゃないと思うんですけど……」


「軍としての規律はともかく、士気が下がるよりはマシだ。それに彼らは毎日のように命を賭けている。いつ死んでもおかしく無い状況が続く中、仲間と笑い合うことができる時間は必要だ」


「確かに!それじゃあフラン、私たちも行こうぜ!」


「う、うん!」


 私はレベッカと一緒に車から降りる。するとクラーラが私たちの手を引いてテントの方に案内してくれた。テントの周辺ではランプの周りに兵士たちが酒瓶を持って座っており、楽しそうに会話をしている。そして中では特に興奮している人たちが机や椅子を並べて食ったり飲んだりしていた。


「みんなー!紅一点が3人に増えたよー!」


「「おおぉー!」」


 テントの中は大盛り上がりを見せる。クラーラは話しかけてくる男たちを払いのけながら奥の方にまで進んでいき、私たちに空いている机と椅子を用意してくれた。そしてそこにコップ4つと瓶何本かを手に持ってカールがやってきた。


「2人はお酒が飲めないから、ジュースを持ってきたよ。クラーラには追加のお酒だよ」


「やったぁー!ありがとカールぅー!」


「おいおい、そんなに飲ませて大丈夫なのか?」


「自分の限界は理解してるはずだからね。まぁ明日は確実に二日酔いになってそうだけど」


「あはは……」


 カールは私たちのコップにジュースを注いでくれた。


「2人とも、今日は本当にお疲れ様。よく頑張った。僕たちはああゆう命のやり取りには慣れてるけど、君たちには結構な負担だったと思う。……今の気分はどうだい?」


「……良い、とは言えませんが、皆さんこうして楽しんでいる姿を見ると、頑張った甲斐があったなって思います」


「私も、最高だとは言えないな……今日初めて人を殺した。殺した時の感覚はまだ鮮明に残ってる。……慣れようとは思わないし、いつかは償いをすべきだ。だけど今は、今だけは正当化させて欲しい。自分の身を、そしてフランのことを守るために私は人を殺した。そしてこれからも、必要ならば人を殺す。フランと一緒に生き抜くために」


「レベッカ……」


「……正当化することは悪いことじゃない。それは戦争の当事者のみに許された特権だよ。僕も故郷の家族を守るために戦場に立ち、同じく守りたい人、帰りを待つ人がいる敵兵を殺してきた。そして相手も同じように僕たちを殺そうとしてくる。……お互い様なのさ、戦争は」


「……そうかもな」


 しばらく沈黙が卓上を支配したのち、耐えきれなくなったクラーラが酒を一気飲みしてコップを机に叩きつける。


「もぉー!みんな顔が暗いよぉー!そういう気分を少しでも忘れるために今ワイワイやってるんだからさぁー!楽しまなきゃ損だよぉー!」


「……ははっ、そうだね。まったくその通りだ」


「おーい!そっちの4人!今からこっちで腕相撲大会を開くんだが、参加したいやつはいるかー?優勝賞品はなんと!近くの精肉店で特別に貰った牛のサーロインだ!中々食えるもんじゃないぞー!」


 ———ぐぅ〜〜


 思わず、お腹が鳴ってしまった。無理もない。今日は昼から何も食べていないのだから。3人の視線が自分に突き刺さる。


(は、恥ずかしい……)


 顔を赤らめながら下を向いていると、隣にいたレベッカが突然立ち上がった。


「よし!フラン!私が獲ってきてやるよ!2人で一緒に食うぞ!」


「お!いいなぁ〜私も食べたい!私も参加するぅ!カールも参加して!」


「え、別に僕はいらないんだけど」


「人数が多いほうが少しでも勝率が上がるでしょ!ほら、行こ!」


 クラーラはカールを無理矢理引っ張って会場へと向かう。


「手強いライバルが増えたな。フランも参加するか?」


「私は大丈夫。多分勝てないだろうし。それにちょっとお酒の空気に酔っちゃったから外で風に当たってくるね」


「わかった!それじゃあ絶対勝ってくるぜ!」


「うん、がんば!」


 レベッカは腕を回しながら会場で声高らかにエントリーする。


「あ、女子が相手のときは利き手と反対の手でやってね!」

「そんな!クラーラさん腕相撲強いでしょ!不公平だー!」

「レベちゃんへの配慮ですぅ!公平なルールですぅ!」

「はぁ、まぁいいだろ。それじゃあ試合開始だー!」


 盛り上がる腕相撲大会の会場を横目に私はテントの外に出る。風に当たりたかったのも本音だが、本当はジェシカさんと話がしたくて抜け出してきた。もう戻ってきていないか辺りを見渡す。

 こちらと反対側にあるテントには高官たちがコーヒーを飲みながらやれやれといったふうにこちらを見ている。そこにジェシカさんはいないようだった。


(だとしたら、まだ役所の中にいるのかな?)


 私はそう思い、意を決して役所の入り口の扉を開けた。



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