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三墨村には今日も人間がいない  作者: 壱﨑ノル
冬の三墨村
9/9

8 遅めの朝ごはん

書いてみたかったごはん回、ぐだぐだ回です。



「「「いただきます」」!」



思い思いの皿が並んだテーブルを前に、3人同時に手を合わせた。ニドさんがこの国の生まれなので、箸の使い方から説明することにならなくて安心である。


山越(やまごえ)から何も口にしていなかったと言っていただけあり、がぶり!とばかりに手に持った兜鳥(かぶと)に食らいつくユティア。兜鳥定食はご飯と味噌汁セットで400円、かなり良心的だ。上品さをかなぐり捨てたような光景だが、可愛いから許される。許す。



「〜〜〜〜〜〜!!」



声にならない感動をあげて、またすぐにかぶりついた。


ニドさんはというと、そんな彼女を横目に丁寧に焼けた肉餅を口に運んでいる。彼の種族は何を食べるのか知らないけど、ちらと見える歯は全部犬歯で、野菜を食べるに適してないことは分かった。


個人的にはこの朝刺焼にはタレが合うと思うのだが、彼は塩...ではなく、そのままいった。.........先に調味料があることを話しておくべきだったかもしれない。ちなみにお値段はちょっとはみ出る220円。こじんまりとしたサイズも相待って、かなり優しいお値段。こんな大きな体でこれだけの食事、()つのだろうか?



焦げ目のついたご飯に薄桃色の粉、ほんのり甘く香る4枚の刺身。私は朝から二人のようなヘビーなものは胃に入れられないので桃粉丼にしておいた。


桃粉とは言うが、実際に桃の粉が使われているわけではなく、どうやらこの魚の鱗から取れる粉末を使っているとか...正直、味は完全に桃のそれだ。安価で高級味、庶民の味方である。百円玉ちょうど3枚。



・ ・ ・


...そんなことはともかく、私も食べよう。さっきから匂いのせいで空腹ゲージが恐ろしい勢いで減っているのを肌で感じている。


空魚に分ける分を考えても、3枚半ある。ここはゆっくりいただこうじゃないか。


まずは刺身1枚目。


箸を持つ前から唾液腺は刺激されまくっていたのだが、いざ口に入れると、味覚で爆発したように埋め尽くされ、口の中はめちゃくちゃになった。


脳がその味をしっかり認識した頃にはご飯が追撃している。ほっかほか。桃粉のアクセントが刺身の味と混ざり合って、そこにご飯の中和がいい感じに効いている。うむ、極上。


顎は既に本能で動いている。咀嚼だ、行け〜!


むぐ、もぐ、もぐ。


もぐ、むぐ、もぐ、もぐ、


ごくん。


待ってましたとばかりに、私の喉が上下した。


味覚の余韻が、噛んでいる時には気づかなかった隠された味を一瞬だけ感じさせてくれる。


2枚目、3枚目は自分でも驚くほど早く消え去り、4枚目は半分に分けていたのでそれまで以上に一瞬で消えていった。


ふー...



ちょっと物足りないような気もしたけど、朝だからこのくらいでちょうどいいかな、なんて、財布と睨めっこして割り切った。



空魚にあげた半分は、まだその半分も減っていない。


私が漲る食欲でじっと見ると、あげないよ、とでも言いたげに背を向けられた。



・ ・ ・



お皿を返却台に置き終わり、私たちはもう一度席に座った。



「えっと...この村のことが詳しく知りたい...だったよね?もう今説明しちゃってもいいような気がするけど、何か予定あったり...」



二人は首を横に振った。ない、分かった。まあ、ここがどういう場所か分からなければ今後の予定など立てようもなし、か。



「じゃあまず、一番気になってると思う、お金、だけど」



ニドさんは軽く腕を組んで聞く体勢に入る。



「他の所ではどうか知らないけど、ここではみんな働くのが当たり前で、それでみんなお金をもらって暮らしてる。私はまだ16だけど、十歳くらいでも働いてる子は結構いるよ。そういう子は大体お父さんお母さんの店の手伝いをやってるだけだけどね」



ふんふん、と頷くユティア。



「だけど前の戦争とかで親を亡くしちゃった子も多くて...実際私もそうなんだけど、そういう子は仲の良い人のところで働いたり、早いうちから自分で仕事を作って働いてるかな」



私はどちらも兼ねているが、後者の方はほぼ趣味だ。



「本当は働かなくても何とかして生きていけるようにはなってるけど、働いてた方が楽しいし楽に生活できるから、みんな進んで働いてる。みんな優しいし値段ふっかけられることもあんまりないし、働いてたらお金はちゃんと貯まるから、心配することはないと思うよ」



なるほど、とニドさん。



「そう言えば、お家まだ決まってませんでした...よね?」


「いや、俺が昔使っていた家がある。修理すればまた使えるはずだ」



曰く、ニドさんが発ったのは20年ほど前。もしかすると先の戦争で焼けてしまった可能性もなくはないが、村自体の被害は少なかったはずだし、多分無事だろう。



「あと、何か質問あるかな」



あ、はい、とユティアが軽く手をあげる。



「何かこの村の、ルールとかある?」


「特に何も。他人を殴っちゃだめとか、お金を盗んじゃダメとかが守れてたら大丈夫」



...のはず。



「分かった!ニド、何か聞きたいことある?」


「いや、今は無い」



「ーーーあ」



そうだ、これだけは言っとかないと。



「ルールって言ってたけど、注意しないといけないことなら、いくつか」





今回で食堂は出るつもりだったんですが...

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