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三墨村には今日も人間がいない  作者: 壱﨑ノル
冬の三墨村
3/9

枕に初日の出

朝日より早く目覚めると、なんだか大自然に勝った気分になる。


目を貫くような眩しい光芒が、照明の垂れ下がった壁に窓の形の影を作った。


カレンダーをめくると、新年のカレンダーの販売告知がずらりと並ぶ。


...用事のついでに来年のカレンダーも買わないと...


偶然見れた初日の出。今年も良いことありますように、と手を合わせておく。



こんな風習も今頃は少なくなった人間くらいしかやっていないのだろうと思うと、なんとも言えない気分になるが、もう大分慣れた。



「ほら、おいで」



寝室の隅で丸くなっている空魚うかなは、手招きの意味というより私の意志を読み取って、肩の近くまで泳いできた。


名前は何が良いだろう。



・ ・ ・



もう唸らなくなった室外機の壁を抜けると、影の落ちる廃ビルの行き止まりに唯一日の差す木造の古屋が見える。


石柱の掠れた表札には『冥蓮』の深掘り。私の家は、結構辺鄙へんぴなところにある。



ガラス戸を音を立てながら開けると、身に染みる冷気が玄関に流れ込む。つん、と冬の匂いがする...


今日は少し遠出だ。


段のあるその玄関を出て、木の表札の横で薄よもぎ色の和服のy字の襟を直し、気を整える。


羽織は紺の一色染。なかなかシンプルだ。


下ろし裾は長め。これでもしっかり風は入って来る。


くくるにも及ばない浮いた短髪はもう放置。どうせここに、人の見た目を気にする人なんて、自分が気にしてる以上に多くないだろう。



よっし。



...最後に見た目に気を遣ったのは、いつだっけ。


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