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人生というポール  作者: 勇翔
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第6話

あえて本気で


プロ野球を首になったあとラジオの出演や野球教室の仕事を

細々とやっていた正一であったが、

あまり野球の仕事がなくなったあと

どんな仕事をやったかがのっぺらぼうのままである。


唯一雀士をやっていた時期があったことは記憶にある。

高校を卒業したあと運よくプロ野球の世界に入った。


首になり野球の仕事がなくなり、同級生清の紹介で就職するが、

その頃から雀荘に入り浸るようになった。


清の紹介で就職した工場を辞め、やがてその雀荘で従業員として働き始め、

家族3人で近所のアパートに部屋を借りた。


仕事の内容はウェイターの他、自身の金で客と麻雀を打つ、

その流れで業務後も麻雀を打つという流れ

だった。若かった正一は、それで家族を養っていけると本気で思っていた。


つまり煩わしい人間関係から逃げていたのだ。

一方で妻静香もスーパーのパートとして、雑多な人間関係に巻き込まれる中で

動き出していた時期でもあった。

その頃の静香は、おそらく世界の広さを痛切に

感じていただろう。正一も静香もお互い30歳を過ぎた頃だ。


ただし妻静香が働く目的が、

子育てという未来へ向かう営みのためだったとしたら、

正一が仕事を変えた理由の中には現実から逃げるという部分があった。

正一は、当時妻静香に言われた言葉を思い出す。


「野球やってた時は物凄く頑張ってた。

 夜中まで練習してたよね!

 給料が安いとか高いとかは全く気にならなかった。

 あなたはあんなに頑張ることができた人間なんだよ!」


正一に奮起を促すためにあえてきつくいってくれたあの言葉から20年、

あの時の妻静香の言葉を思い出しながら、

正一は自分の部屋で缶チューハイを開けていた。

その時娘の鈴からしばらくぶりの着信があった。


「パパ、私就職が決まったよ!」


鈴は大学4年生になっていた。


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