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人生というポール  作者: 勇翔
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第3話

2007年4月7日 妻静香 娘鈴


台所の鍋の蓋置きに立てかけられた買ったばかりのスマートフォンで、

夫正一のラジオ生出演を妻の静香が見守っている。


「ほら、パパだよ」


「ほんとだ」


最初だけ娘の鈴も不思議そうに聞き入っていたが、すぐに飽きてしまった。

おやつを食べながら「アンパンマン」をみている。

パーソナリティーが正一の紹介をする。

プロ野球をたった3年で首になり、声がかかったラジオのプロ野球番組。

正一はあきらかにてんぱっている。

今年のプロ野球の見どころを紹介する役割だが、そもそもこれが難しい。

ラジオでプロ野球の見どころって!


「今年の野球おもしろいですよ!」


では、リスナーに伝わらない。


どのように伝えるか思案し、台本は付箋でいっぱいになるし、

出番の前日から緊張しているのを横目にしていた妻静香までもが緊張していた。

もっと落ち着いて。早口を抑えて。相手の相槌ももっと拾って。

妻静香はセコンドのように手に汗を握る。

正一は、番組とは時間が決まっているということを、

すっかり忘れ、今年のプロ野球情報を盛り込もうと必死だった。


それも

「なるほど分かりました、ありがとうございました。」


とパーソナリティーに、体よくまとめられてしまった。


プロ野球で首になるまでは、結果を出すことだけしか考えていなかった。

たった1シーズンだけではあったが結果を出すことができた。

正一はこれまでの人生においても野球以外やってこなかった。

妻の静香は逆だ。必死になるものがあまりなかった。

まじめな優等生タイプの静香は、

必死にプレーする正一のファンになった。

夫の正一がユニフォームを着てグラウンドにいるのではなく、

スーツを着てラジオに出ているというのは妙な感じで、

もっとうまくやってくれよと歯がゆい気持ちも正直あった。


一方で、淡泊なパーソナリティーだったから、

夫の正一も運が悪かったんだと思う気持ちもあった。


「それではまた来週!」


まあ、放送事故とか深刻な失敗はなかっただけで大いに

ほっとして、妻静香はスマートフォンのアプリを停止させた。

妻静香がラジオを聴くこと自体が、人生で数えても数回くらいしかなかった。

正一がプロ野球選手を首になるまでは、専業主婦のつもりでいた妻静香だったが、

家族3人の幸せな生活を守るためにも

新たな生活に挑んでいかなくてはならなかった。


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