第17話
~サンパツ~
正一はなぜか、雅人に野球を教えていると自分の小学生時代を思い出す。
どうしたことからか、正一は小学生の頃ものすごくサンパツが嫌いだった。
お母ちゃんから何度言われても、サンパツに行く気になれなかった。
「髪が伸びすぎ!はやく髪を切りなさい!」
「絶対に行かない!」
いつもそんなやり取りをしていた。
でもたった1回だけ自ら床屋に行ったことがあった。
いつも行かされる近所の床屋さんのドアを、
小学4年だった正一は思い切りあけた。
中に入って店の様子を見まわす。
それらしいものは何もない。
「これはおかしい!」
正一は中一の姉にだまされた事に気づいた。
正一の姉は言った。
「三浦のおじちゃんとこの床屋さん、
新しいすごい機械を入れたみたいだよ!正一見てきてよ!」
「正一見てきてよ!」
お母ちゃんも目を輝かせながら言った。
今頃、姉ちゃんも母ちゃんも2人して笑っているんだろうな!
あの時の正一にはその顔が浮かんだ。
どうしても正一を床屋に行かせようと思って、新しい機械が入ったって!
「新しい機械って何のことだよ!」
今更出れずに髪をバッサリ切られた、どうでもいい小学生の時の思い出が
少年野球の練習中に正一の頭の中によみがえる。




