第12話
覚悟
「自分に取り柄がないと思うなら、明確な目標を立ててみよう!」
正一は以前少年野球のコーチに声をかけてもらった、
雀荘で働いていた時の先輩に連絡をとった。
「少年野球のコーチさせてもらえないですか?」
「おぉ、いいぞ。助かるよ。でもいいのか?前は難しいって話だったけど・・」
正一は、気恥ずかしそうに答えながらも、
野球に携わりたいという気持ちを伝え、少年野球のコーチをやらせてもらえることとなった。
人によって心地いい生き方は違うから。
正一に、自分のスタイルを探す覚悟が生まれた。
娘鈴との連絡を機に、前に進みだした自分の足を止めたくなかったし、
伊東監督からもらった
「絶対に変えてはいけないものがある」という野球教育を伝え、
野球に対する恩返しをしたいと心の底から思ったのだ。
ただ、自分でプレーはしてきたが、人に教える経験はないに等しい、
ましてや、小学生を相手に教えるなんてしたこともなかった。
それでも、自分が人生で一番頑張ってきた野球なら・・・
「よし!後は、進むだけだ!」
野球を離れてから、人生の道筋が見えなくなっていたが
決心し、初めの一歩を踏み出したことで、自分の力で道を切り開く覚悟
だけは持ち続けたいと思えるようになった。
正一の心は晴れやかになり、急に視界が広がりを見せた。




