鍛治士
まだ序盤ですが、少しずつ更新していきます
本日の報酬を受け取りギルドを出る。
「やぁシェード。今日はゴブリン駆除だっけ?その様子だとあんまり数はこなせなかったみたいだね。」
ギルドを出た先にはこの街に来てすぐに世話になった青年が立っていた。
「なんだよミルディなんか用か?」
今日の報酬があまり良くなかったこともあり多少感じが悪くなってしまったがこいつ相手ならいいだろう。
「なんだよつれねぇなぁ。見たところこの1ヶ月程ずっと同じ装備を使い続けてるみたいじゃねぇか。そりゃガタが来てるだろうよ、酷い状態だ。」
ミルディの言う通り改めて自分の装備を確認すると確かに酷い状態だった。
「仕方ないだろう。装備の更新するほどの貯金がまだ出来てない。そう言うくらいなら俺にプレゼントして欲しいね。」
そう俺が愚痴を言うと、ミルディはこちらに向けイラッと来るようなニヤケ面を向けて来た。
「そう言うと思って装備がボロボロのお前にいい話を持ってきたんだ。なんでも鍛治士連中の見習いどもが顧客を集める為に素材さえ持って来てくれりゃ装備のメンテから新しいものまで作ってくれるって話だ。」
確かにその話であれば装備の更新ができるかもしれない。
「ちょっとその話詳しく教えてくれ」
ミルディから詳しく話を聞くとこんな感じらしい
・顧客が居なくて困ってる新人が多い
・これじゃあ新人が育たないと困る職人連中
・格安で顧客を得る為に今回のサービスを実施する
・上記の理由を聞いた新人冒険者達が顧客になろうとしている。←今ここ
とのことらしい。
「まぁそんな装備で冒険者を続けて気づいたら知り合いが1人居なくなってても嫌だからな」
「助かる。早速行ってみるよ」
「おう。じゃあまた今度クエスト手伝えよ」
「俺は特に誰かと組むつもりは無いんだけどな。まぁ1度だけならいいぞ」
「んじゃそれでいい、またな。」
話を終えてミルディが去っていくのを確認した後、街の職人街に向けて進むのであった。
「ふざけんな。こんな条件なんか飲めるか!」
ミルディと別れ、職人街に着いた矢先にそんな怒号が聞こえて来た。
「じゃあ、あんたじゃなくていい。私はこの条件が飲める奴と組む。」
見ると、少し大柄な女性が冒険者相手に啖呵を切っていた。
「どうしたんだ?」
多少気になり、冒険者の方に聞いてみる。
「そこの女は素材を、取りに行くのに自分も連れて行けって言うんだ。しかも戦闘経験は無しって言いやがった。そんな足手まといをつれて冒険を安全マージンを取れるかって話だ!」
なるほど。この冒険者の言い分は分かる。確かにその通りだ。安全マージンの取れない冒険など危険で仕方ない。
「私は自分の目で!耳で!肌で素材を感じてその素材が最高の形で武具になるようにするのが私の信念だ!これだけは譲れない。
目の前のこの女性は絶対に信念を曲げないタイプのようで目の奥に宿る激しい意志が見えるようだ。
「クソッ!腕の良い新人がいるって言うから仕事を依頼してやろうと思ったのに!こんな奴だったとはな!お前に仕事なんてこっちから願い下げだ!」
そう言うと冒険者の男は苛立ちを隠しもせずにどこかへ行ってしまった。
「はぁ。やっぱりダメなのかね。私はただ、最高の、装備を自分の手で作りたいだけなのに。」
冒険者が居なくなった後に悲しみがこっちにまで伝わってくるのではないかと言う独り言が聞こえてきた。
「なぁ、なんでそんなに自分で採取することに拘るんだ?」
「ん? 聞いてなかったのかい?理由はさっき言った通りだよ。まぁ強いて言うならば、鍛治士ならば誰だって目指す「真匠」の称号を得ること。その中でも初代真匠に私が憧れてるからだ。私はいつか初代真匠をも越える鍛治士になることだからだ。」
なるほど。彼女が自分で素材を取りに行くことに固執する訳だ。初代真匠と言えば鍛治士でなくとも知っている程武具に関しては名が通っている。
曰く、彼は自分で素材を確保することを信念とし、彼が作り出す武具は素材の持ち味を余すことなく引き出し。彼が亡くなった現在でも武具の性能は変わらないそうだ。
噂によればかつて英雄と呼ばれた者の武器は彼が聖霊と妖精の協力を持って創り出したものだとも言う。
「なるほど。理由はわかった。じゃあ次だ、冒険をする上で貴方が使う武器はなんなんだ?」
「貴方じゃない。私は『ドネル』だ。使う武具に関してはこれを見てもらった方が早い。」
そう言うと彼女は意外にも冒険者証を見せて来た。
職業:鍛治職人
属性:火 水 自然使い
得意武器:大槌 大楯 大剣
ステータス
レベル:1
HP:40
MP:20
攻撃力:10
防御力:34
魔法攻撃力:10
魔法防御力:40
意外にも戦闘経験が無いと言う割にはステータスが高い。これならどうにかなりそうだと思う。
「なぁドネルもし良ければ俺に依頼しないか?」
「本当か!経験が無いけどそれでもいいのか?」
「構わない。普段パーティは組まないが、俺も初心者だ。今回だけ俺の拙い知識でもよければ一緒に行こう。」
彼女の気持ちが伝わり、今回だけ一緒に行こうと思うのだった。