宇宙巡洋戦艦と共に死んだら改造されて異世界に飛ばされました
俺が乗る軍艦の艦橋に警報音が響き、赤い警告灯が艦橋を照らしている。それが俺が見た、最期の光景だった。宇宙軍に志願し、徐々に昇格していき、最終的には艦長の任につくことができた。そして俺に与えられたのは巡洋戦艦[白露]だった。この艦とは人生の1/3、約60年間付き合ってきた。堂々たる戦果を挙げ、充実した人生を送っていた。そして最後に次元跳躍を行っている際中に異常をきたして消滅した。そこで俺の人生が終わったと思った。
そう思っていたのに、起きたら周囲が真っ白な空間に俺は立っていた。
「ここはどこなんだ。」
手持ちの道具を探そうとするも、腕がなく体も見えない。しかし、感覚はある。とりあえず誰か呼ぼう。
「誰かー、いらっしゃいますかーーー!」
俺の声は反響もせず、空しく消える。
”あぁ、聞こえてるし、いるよ。”
突然、頭の中に中性的な声が響く。それと同時に物凄い吐き気を感じる。
”すまないね、少し力の加減を誤ってしまった。”
「あなたはいったい誰ですか。そして、ここはどこですか。」
”まず自己紹介をしないと。私は無数の平行世界の管理をしている者だよ。そしてここは平行世界同士の隙間、君たちでいうところの宇宙の外側だね。あと君の名前を聞いてなかったね。”
「すみません。まだ名乗っていませんでした。俺は、楠見健司です。」
”楠見君だね。わかった。”
「ところで、あなたは神という存在ですか。」
”まぁ、そんな認識でいいかな。”
「ではどうして俺はここに来たんですか。」
”あぁ、その説明もしないとね。まず君が死んだ原因は私なんだ。私は平行世界の間を通りながら管理をしているんだけど、移動をミスって君たちの宇宙に重なってしまったんだ。その時に君がちょうど次元跳躍中の君の艦に影響してしまったんだ。それについては本当に申し訳ない。”
「わかりました。それで俺はどうなるのですか。」
”そのことなんだけど、死因が特殊だからどうしようか迷っているんだ。輪廻転生にも回すことができなし、かといって地獄に落とすこともできない。だから別の平行世界に転移させようと思うんだ。体は消滅してしまったから新しく作り直すことにして、なにかほかにある?”
「じゃあ、俺と最期を共にした白露ともう一度一緒に行かせてください。あの艦は私の思い入れがあるのです。」
”わかった。あの艦を再構築してついでに成長できるようにするよ”
「すみません、成長とはなんですか。」
”それは、他の艦を撃沈した時に、その艦を吸収して俺に組み込むことができるようになるんだよ。君が行く世界は宇宙空間での戦争が絶えないからね。それぐらいしないともしかしたら死んでしまうからね。じゃあ再構築するからちょっと待ってね。”
何もなかった空間に白露が再構築されていく。傷一つない進宙時の姿だ。
”よし、終了。あと、君と白露をリンクしておくね。”
頭にこれまでなかった情報が流れ、船体の状況が繊細に理解でき、船体を手足のように自由に動かせるようになった。これまで以上に白露の性能を発揮できると思いわくわくしながら船体を確認していった。
「艦の復元をしてくださりありがとうございます。」
”艦は大丈夫そうだね。それじゃあ最後に、君がむこうでどう生きてもいいから、君の思うがままに生きなさい。”
「ここまで、ありがとうございました。」
そう言いながら俺の体が消えていくのを感じ、これからの人生に胸を躍らせた。そして視界が真っ暗に染まった。
起きるとそこは見慣れた第一艦橋だった。60年間俺が艦を動かしていたところで、これからも俺が艦を動かすところだ。荷物を確認すると、手鏡があったため、俺の姿を確認する。
「まじかぁ、前世よりかっこよくなってるぞ。」
黒髪から白髪へなって、顔面偏差値が上がっていることに内心喜びながら、白露の状態を頭の中で確認していく。やはり、進宙時の姿を保っているようだ。次に、この艦に搭載されていた自立制御を確認してみる。これのおかげで乗員の必要が無くなったといっても過言ではない。
「自立制御起動」
”もう起動してますよ、マスター。”
突然、艦橋に女性のような声が響く。俺以外の乗組員は乗艦していないはずだが。
「君はいったい誰だ。」
”私はこの艦の自立制御システムです。管理者様に改造を施してもらいました。疑うようでしたら、マスターがこの艦に保存しているピンクな本を外にばらまきますよ。”
「わかったわかったから。君がこの艦の自立制御だとはわかった。君は何と呼べばいい?あと本は仕方ないだろ、人と触れ合う機会少ないんだから。」
”私は何と呼んでも構いませんよ。けど可愛い名前にしてくださいね。”
いろいろな名前が思いつくもどれもいまいちなものだった。最終的に思いついたのが・・・
「白露の白から連想させてホワイトっていうのはどうだ?」
ネーミングセンス皆無なものだった。
”安直ですけどいいですよ。”
「じゃあホワイト、今の現在座標と一番近い惑星を教えてくれ。」
”了解しました。マップを表示しますね。”
目の前に一つのパネルが現れ、マップを表示している。真ん中の三角が白露のようだ。
”今の座標はここで、惑星よりもステーションが近いですよ。”
「ステーションって前世で辺境の交通の要所のあのステーションか?」
”そうですよ。”
まさかとは思ったがそんな辺境のようなところに転移しているとは思わなかった。
「わかった、そのステーションまで航行するから、ナビを頼む。」
”了解しました!その前に作業ボードは確認しましたか?”
「なんだ、それは?」
”では、”作業ボード展開”と唱えてください。”
「作業ボード展開」
マップとは違ったパネルが現れる。真ん中に白露の平面投射図が描かれていて、その横に上から’ステータスと武装’ ’作業場’ ’倉庫’ ’その他の施設’と書かれている。
”これは作業ボードと言って白露の強化ができるものですよ。’ステータスと武装’ という部分を押してみてください。”
指示に沿って押してみると、白露の情報が数字化されている。
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白露 所有者・・・楠見健司
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Lv.1エンジン2基(補助エンジン6基)・・・エンジン出力 240000
Lv.1スラスター・・・機動力 160000
Lv.1艦種決戦超高威力砲(単装)1基
・・・威力 540000 速射力 10
貫通力200000 エネルギー効率 200
Lv.1主砲(三連装レーザー砲塔)6基
・・・威力 13000 速射力 8000
貫徹力 9000 エネルギー効率 6000
Lv.1副砲①(十六連装レーザー砲塔)8基
・・・威力 8000 速射力 9000
貫徹力 12000 エネルギー効率 8000
Lv.1副砲②(連装光線砲塔)32基
貫徹力 8000 エネルギー効率 10000
Lv.1対空砲①(四連装光線砲塔)
・・・威力 6000 速射力 12000
貫徹力 6000 エネルギー効率 15000
Lv.1対空砲②(四連装光線砲塔)
・・・威力 2000 速射力 30000
貫徹力 3000 エネルギー効率 42000
Lv.1空間魚雷 威力 12000 貫徹力 12000
Lv.1装甲 総合装甲力 120000
Lv.1船体 全長512m
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”やっぱりマスターの艦は強いですね。さて、今見てるのが白露の情報です。Lv.の部分は後でいろいろいじくれるようになるので待っていてくださいね。”
「わかった。この数値は何を基準にしているんだ?」
”この値はこの世界の通常の巡洋艦の値をエンジンを10000、武装を1000として計算している値ですね。”
改めて確認すると、前世で敵が口をそろえてこの艦を[化け物]と呼ぶだけあって、Lv.1なくせに既にチートだった。
「この艦が十分にチートだということは分かった。作業ボードの確認も終わったし早速出発するか。」
”そうですね、行きましょう!マスター。”
「ナビをよろしくな、ホワイト。」
”はい!”
頭の中で白露の動く姿を想像し、それに連動して艦が動く。想像するだけで動かせるようだ。前世よりも簡単に動かすことができることに胸を躍らせながら、これからの人生に希望を膨らませる。
「これからよろしくな、ホワイト。」
”はい!マスター!”
そして艦は進む。
「エンジン出力臨界点を突破、これより光速を突破し次元跳躍航行を開始する。ホワイト、座標設定を頼む。」
”了解しました!”
艦はその宙域を離脱した。
~???side~
白露が次元跳躍に入った数刻後・・・
一つの戦艦が付近に接近していた。その艦橋内では乗組員の姿があった。
「どうだ?侵入制限宙域に来た感想は。」
「歴史を学んで考えていた状況よりは、静かなんですね。」
「あぁ、みんなここに来た時にはそう言うな。」
「艦長!」
「どうした?」
「20km先にて不明な次元跳躍痕跡を発見しました。」
「国籍の特定はできないのか。」
「それが、帝国 連合国 共和国、どの固有痕跡にも一致しないんです。」
「傭兵の所有艦艇はどうだ?」
「侵入制限宙域に入れる権利を持つ艦艇で一致するものはありません。」
「そうか。すぐに第3宙域ステーションに暗号打電。痕跡のデータも送れ。俺らも準備ができ次第、帰還する。」
「宙域のツアーはまた今度な、アリシア。」
「大丈夫です。すぐに帰りましょう。」
「総員ワープ準備」
「了解!総員ワープ準備、各部点検急げ!」
戦艦乗組員は直ちにワープ準備を済ませワープを開始した。
「ワープ終了、続けて2回目のワープ準備を・・・か、艦長!」
「あぁ、わかってる!」
ワープを終えた彼らの目の前には無数の、残骸となった艦艇があった。
「すぐに残骸の艦艇の国籍を特定しろ!」
「こ、これらはすべて傭兵の所有艦艇です。」
「そうか、何隻分だ?」
「約20隻です。」
「艦長!11時の方向に艦艇を確認。国籍の特定ができません!」
「なに!不明艦か。クラスは判るか?」
「500m超弩級戦艦級です!」
「500m級だと!そんなの艦隊の旗艦クラスではないか。」
「艦長!相手艦が通信を求めています。」
「わかった、回線をつなげ。」
(さて、鬼が出るか蛇が出るか。)
”こ、こんにちは。”
相手は若い男だった。
~健司side~
時間を遡り健司が次元跳躍を行った後に戻る・・・
30秒ほどで次元跳躍を終わらせ、通常区間へ戻る。
”はじめてということで少し距離を控えめにさせてもらいました。マスター”
「ありがとな、ホワイト。」
”いえいえ、マスターのためですから。”
突然、背後に気配を感じる。
”マスター、後方7時の方向1200㎞先に艦艇、総数21隻が接近中です。”
「あぁ、確認した。」
”どうされますか?”
「一度通信を持ち掛けてみてくれ。」
”了解。”
”通信を持ち掛けたところ、相手艦に拒絶されました。”
「わかった。戦闘配置だ。相手はやる気らしい。ホワイト、副砲の射撃は任せる。俺が許可を出すまでまて。」
”了解!マスターに敵対したこと後悔させてやります!”
「血の気は控えめにな。」
”わかりました。”
そしてついに敵艦が発砲してきた。
”敵艦、発砲!”
「わかってる。推力全開、全力回頭180度、敵の中心に突っ込む、面舵一杯!それと多重防壁を展開。」
敵の砲撃を回頭することでよけると同時に、敵にむけて突っ込む突撃戦法を取った。艦隊への突撃戦法は通常、単艦の艦艇ではあまりすることはない。そう、通常の艦艇では。白露は元々前世で包囲戦に対抗できるように設計されているため、対包囲戦は大得意なのだ。
「大義名分は得た。ホワイト、存分にやれ。」
”了解!宇宙の藻屑になってしまえ!”
「よし俺もやるか。第一主砲は右舷前方、第二主砲は左舷前方、第五主砲は下部の敵艦に向けて砲撃開始!他の主砲はうち漏らしたやつを狙え。」
高機動戦の圧力に耐えながら敵艦を1~2発で仕留めていく。だいたいの艦は防壁を展開するも主砲を前には紙装甲も同然だった。ホワイトが扱う副砲も的確に敵艦を仕留めていた。敵艦隊を抜けるときには大体の敵艦を撃沈したようだ。
「残りはあの戦艦3隻だな。」
その時船体に衝撃が響いた。
「なんだ!」
”主砲発射時にひらいた防壁を通して左舷艦尾に被弾しました。ただ装甲で抑えたので大丈夫ですよ。”
第四主砲を発射した時に開く防壁の隙間にたまたま敵の砲撃が通ったようだ。すぐさま回頭して敵艦に突撃を再開した。
「ラストだ!主砲発射!」
第一第二第五主砲がそれぞれの目標の敵艦に向かって発砲する。防壁と装甲を豆腐のように突破し敵を撃沈する。
「よし終わった。久しぶりだったけどなまっていたな。ホワイトもお疲れ様。」
”マスターもお疲れ様です。”
久しぶりの戦闘で精神が疲れたようで、少し眠たいがまだやることは残っているようだ。
”では、敵艦の残骸を回収しましょうか。”
「どうすればいい?」
”作業ボードの倉庫の部分を押してみてください。”
作業ボードを開いて倉庫を押す。倉庫が開くと、多数の枠と'回収’というところがあった。
”それは倉庫のページで、枠の部分が倉庫いわゆるイベントリといわれる部分ですよ。その部分の回収というところを押してみてください。”
押してみると、周りの艦艇の残骸が消えていく。それと同時に倉庫内の枠が埋まっていく。残骸は解体され、同じ種類はまとめて表示されているらしく、とても分かりやすい。そんなことを考えていると、突然また気配を感じた。
”左舷方向120㎞先に、艦艇がワープアウト反応!”
「一応、さっきの仲間か分からないから通信を持ち掛けてみてくれ。」
”了解!”
ワープしてきた艦を見ると、先ほど戦った艦隊の艦艇とは少しデザインが違った。それに船体にドラゴンのマークがついていた。
”相手艦が承諾しました。回線をつなぎます。”
「あぁ、頼む。」
モニターに映し出されたのは艦橋にいると思われる相手艦の乗員の姿だった。
「こ、こんにちは。」
”貴艦の艦長はあなたか?”
中央の強面の男性が言葉を発した。言葉は通じるようだ。
「あぁ。私が本艦、巡洋戦艦白露の艦長、楠見健司です。あなた方は一体どちら様ですか。」
”俺はこの艦の艦長、アーテクト・ペルシャだ。ワープを終えた先に貴艦がいたが、この状況を説明してほしいのだがが、よろしいかな。”
相手側もこの状況の原因が知りたいようだ。
「わかりました。このまま通信で話すのもあれなので本艦で話しませんか?」
”了解した。貴艦の指示に従う。”
「では、誘導しますのでそのまま本艦に接舷してもらいますか。」
”了解した。”
船体の誘導灯を点灯させ、相手艦を誘導する。今度は話が通じる相手で良かった。
”相手艦の接舷が完了しました。”
こうやって見ると相手艦は本艦の1/2程度の大きさだった。
「よし。出迎えに参りますか。」
”マスター、私も出迎えてもいいですか?”
「どうやって出迎えるんだ?」
”管理者様が改造をしてくださるときに体も作ってくださったんですよ。ちょっと待っててくださいね。”
そう言われた後、すぐに艦橋の扉が開く音がした。振り返ってみると。
「どうですか?マスター。」
黒の軍服に身を包んだ白髪の美少女がいた。そしていろいろとでかい。
「あ、あぁ。いいんじゃ、ないか。」
「マスター、はっきりしてください。」
「か、かあわいいと思うぞ。」
「やったー!」
嬉しそうに頬を緩ませる彼女はもっとかわいかった。管理者様には感謝しかない。
「あ!まずい。相手艦を待たせてる。」
すぐに艦橋を飛び出して接舷しているハッチへ向かう。左舷前方のハッチだ。ハッチの前につき、ハッチを開く、そこにはアーテクト艦長と2人の男女がいた。
「アーテクト艦長ですね。こちらへどうぞ。」
そう言って彼らを応接室に案内する。真ん中のテーブルに案内し扉側にアーテクト艦長らを座らせ、反対側に俺とホワイトが座る。
「では再度、自己紹介をしましょうか。改め本艦の艦長、楠見健司です。こちらは助手兼副艦長のホワイト。」
「よろしくお願いします。」
「俺は駆逐艦レスリオの艦長のアーテクト・ペルシャだ。こちらは私の姪のアリシアで反対側が副艦長のテルモート。」
「「よろしくお願いいたします。」」
「では早速、私から事情を話しますね。」
そう言って、一部を隠蔽して話した。
「そうか。ワープ中に異変があって知らない宙域に出て、それでその宙域を離脱したら傭兵に攻撃をされたということで合ってるか。」
「はい、そういう感じです。」
「もしや、この宙域から離脱したのではないのか。」
そう言って示したのは、俺らが最初にいた宙域だった。
「はい、そのとおりです。しかし、どうしてわかったのですか。」
「実はあの宙域は侵入制限宙域で、私たちは宙域の偵察をしていたんだ。そこで不明な次元跳躍痕を見つけていたのでまさかとは思ったのだが。」
「ええ、多分その次元跳躍痕は本艦のものだと思います。」
少しの間だが敬語で話していたら疲れた。
「はぁ~。やっぱり敬語は疲れますね。ため口で話してもよろしいですか。」
「やっぱり、そっちが素か。もちろんいいぞ。」
「ありがとう。やっぱりこっちの方がいいな。変に気を使わなくて済む。」
「軍人の敬語は大変だよな。俺もその気持ちわかるぜ。」
この人は悪い人ではない。そう、軍人の敬語が大変なことがわかるやつに悪い奴はいない。異論は認めない!
「先ほど言った殲滅させた傭兵に関してだが、俺らは罪になるか?」
「いやならん。基本的に傭兵同士の争いに法は適用されない。だがあんたらは用の資格はないだろ。だから傭兵の登録をしないか?」
「したいがどこですればいい?」
「ここから一番近く俺らが拠点にしている第3宙域ステーションに、国際傭兵組合の窓口がある。そこで登録をするといい。座標はここだ。」
座標は俺らが目指していたステーションを示していた。
「ありがとう。」
「ただ、向こうに次元跳躍痕のことを連絡している。身分証明書が無い貴艦が単艦で向かったら荒れる可能性が高いから、俺らと一緒にきてくれるか?」
「あぁ、むしろ頼む。」
そうして、話は終わるはずだった。今度は先ほどの艦隊の比にならないほどの気配を感じた。
「マスター、前方250㎞先に艦隊がワープアウト。総数約180隻!」
「わかった。すぐに艦橋にいこう。アーテクト艦長、あなた方は一旦、自艦に戻ってくれるか。」
「わかった、すぐに戻ろう。」
「ホワイト、ハッチまで案内してやれ。」
「了解しました。」
ホワイトがアーテクト艦長らを連れて応接室を出る。
「よし。俺も艦橋に戻りますかな。」
彼らが出た後、俺も部屋を出て艦橋に向かう。艦橋につきすぐにホワイトがきた。
「ありがとう、ホワイト。早速だが艦隊の情報を教えてくれ。」
「艦隊の情報は、駆逐艦100 巡洋艦54 戦艦25 旗艦と思われる300m級弩級戦艦1です。」
「この情報をレスリオにも送ってやれ。」
「了解しました。」
すぐにレスリオから通信が届いたため回線をつなぐ。
”ケンジ、情報ありがとな。そっちの情報とこっちの情報を合わせたんだが、奴らはこの宙域で海賊行為を行っている、お尋ね者集団だと分かった。多分ケンジが殲滅した傭兵が情報を送ったんだろう。戦力差は歴然だ、すぐに撤退して協力を求めた方がいいと、俺は思う。”
アーテクト艦長は、現実的な提案をしてきた。しかし俺は・・・
「いや、撤退はしない。ここで殲滅する。そこで提案なんだが、こっちの艦にすべてを任せてくれないか?」
”本気でやりあうつもりか?まぁいい、元々この状況ですら絶望的なのだからな。一つの賭けに出てもいいか。よし、そっちにこっちの乗組員全ての命を預ける。うまくやってくれよケンジ。”
「おう! ホワイト、左舷前方のワイヤーでレスリオの船体を本艦に固定してくれ。なるべく早く頼む。」
「了解しました。」
ワイヤーで船体同士が密着するように固定していく。多少傷ができるが問題はない。船体がきしむ音がするように感じるが、問題ない。ただの幻聴だ。
「船体の固定が完了しました。少し強めに固定しましたがよかったですか?」
「あぁ、いいぞ。」
”いやいやダメだろ、こっちすごい軋む音がするぞ。少し緩めてくれ。”
「だめだ。少し耐えとけ。俺に預けるって言っただろ。」
”はぁ、わかった。好きにしな。”
「ホワイト、敵との距離は?」
「艦隊の先頭と約150㎞です。」
「そんぐらいか。さっきと同じく突撃戦法を取る。防壁をレスリオまで展開してやれ。しかし今度は、魚雷も使うぞ。アーテクト艦長、少し気持ち悪くなるかもしれないから、酔い止めを飲んでおいたほうがいいと言っておくよ。」
”あ、あぁ。了解した。”
「じゃあ、始めるか。戦闘配置!ホワイト、また副砲の射撃を任せる。」
「了解しました!ほどほどに藻屑にします。」
「俺はそれ以外をやる。機関推力80%!多重防壁を展開しこのまま敵艦隊に突っ込む。続けて艦首と両舷の魚雷発射管から隠蔽空間魚雷、発射準備!目標、艦隊前衛の駆逐艦。撃てーい!」
前方からの凄まじい圧力を感じながら魚雷を発射していく。発射された魚雷は敵艦にその存在を感じさせずに接近し、敵艦を藻屑に変える。
「幸先は上々だな。お次は主砲の出番だ。第一主砲は右舷側の巡洋艦と駆逐艦、第二主砲は左舷側を、第五主砲は下部の敵艦を殲滅開始。魚雷も第二射、発射!」
主砲は先ほどとは違って、貫通するのではなく敵艦を一刀両断していく。切断面はとても綺麗だ。魚雷もそれぞれの目標に追尾、撃沈している。前衛を抜けるころには、前衛の八割を殲滅していた。また敵艦も発砲しているが、全て外れるか当たっていても防壁に吸われていた。この速さ相手だと、偏差が難しいらしい。
「このまま中央突破したいところだが今はレスリオの安全も大事だな。このまま敵艦隊の左舷側から攻撃を加える。取舵90度、スラスター全開!」
今度は追加で横方向にも圧力がかかる。旋回し終わった後、艦隊を横に見ながら側面に出る。
「全砲塔、右舷方向へ自由砲撃開始。撃ち方はじめーい!」
「副砲も自由砲撃開始です!」
主砲と副砲の牙が、敵艦隊を襲う。ほぼすべての敵は、一発で仕留めている。
「後方から、駆逐艦多数接近!魚雷を発射されました。」
前衛の生き残った駆逐艦を含む、集団が後方から追ってきたらしい。
「艦尾魚雷発射管より、対空魚雷発射!」
艦尾から発射された6発の魚雷は、敵魚雷に当たると思いきや当たる寸前で炸裂して破片の壁を作る。敵魚雷はすべてが撃墜された。
「後部主砲塔で敵艦艇を掃討。」
レーザーの雨で敵艦をお出迎えする。敵艦は喜んで砲撃を受け取ってくれていた。
「よし。敵艦隊を半数以上殲滅したし、そろ旗艦の首を取るか。3時方向に向けて回頭開始!おもかーじ!」
船体を旗艦の方へ向け、旗艦への突撃を開始する。無論、敵艦は出迎えの砲撃をしてくれているが、防壁の前では全て無意味だ。
「機関出力最大!砲撃を持続型へ変更。撃ち方はじめーい!」
超高威力のレーザーが旗艦の周りの敵艦を真っ二つにしていく。それに畏怖したのか旗艦はほかの艦を盾にして撤退していく。
「逃がすかっ!艦首魚雷発射管から空間魚雷発射!続けて第一第二主砲塔を前方へ向けろ。」
魚雷で盾となっている敵艦を撃沈する。その後主砲の束になったレーザーにより、残っている盾になっている敵艦もろとも串刺しにする。
「敵旗艦を撃沈した。これより残存艦艇の掃討に当たる。自由砲撃開始!」
残りの敵を殲滅していく。一部撤退できた敵艦艇もいたが、まぁ、大丈夫だろう。12隻だし、ちゃんとマーキングはしてるしな。
「アーテクト艦長、終わりました。あれ?アーテクト艦長、アーテクト艦長!生きてますか?」
”あぁ、なん、とか生きてるよ。あんな機動性あるんなら、最初から言っとけ!”
「だから言ったじゃないですか、酔い止め飲んどけって。」
”俺の知っている中で一番の機動性がある駆逐艦でもこんな機動しないぞ。”
「まぁ、まぁ、生きているんだからいいじゃないか。さてと、ワイヤー解除するからな。ホワイト、よろしく。」
「了解しました。」
瞬時にワイヤーが外され、レスリオは自由の身となった。心なしか少し姿勢制御がおぼつかないが気のせいだろう。
「ワイヤーの解除が完了しました。マスター。」
「ありがとう、ホワイト。」
「さてと回収しますか。」
素早く作業ボードを開いて、回収作業を始めさせる。残骸が跡形もなく消えていく姿はとてもシュールだ。しかしいまいち、残骸を収納する仕組みが分からない。まぁ、謎技術としておこう。そうして30分足らずですべての残骸が収納される。倉庫には、テルミチウムという名称が表示されていた。最初に戦った敵艦の残骸を回収したときと同じ材質らしい。また量としてなのか5096が表示されている。そして新しく、コンステーション120という名称が追加されていた。数は409と書かれている。
「ホワイト、テルミチウムとコンステーション120とはなんだ?」
「テルミチウムはこの世界で一般的な装甲の材質で、コンステーション120は軍艦に使われている準希少鉱物ですね。これは汎用性が高い鉱物ですよ。」
「なるほど。下の数字は?」
「1つ1000t単位で表した総重量ですよ。」
ということは、テルミチウムは5096000t、コンステーション120は409000tか・・・
多っ!何この量。軍人として働いていても、お目にかかれる量じゃないぞ。金額で表したらとてつもない量になりそうな気がするので聞かないでおく。
“お前さっきのどうやった?まぁいい、後でいろいろまた聞かせてもらうからな。”
「回収も終わったし、行くか。第3ステーションに。アーテクト艦長、誘導を頼む。」
”おい無視すんな。はぁ、誘導してやるからついて来いよ。ケンジ。”
そうして、二つの艦艇の姿は、宙域から消えた。
作者が某宇宙戦艦に影響されて作った作品です。
処女作なので、まだまだ改良部分はあると思いますが、それでもよかったら下の星を5個つけてくれると嬉しいです。