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第8話 少女の思いと拒絶

魔族を殺した俺はルーとクゥーを精霊の姿に戻し、魔族のもとに歩み寄った。


「さてと、悪夢の暴食(ナイトメアギガイータ)起きろ」


俺がそう言うと、俺の影が大きく広がった。


「餌を用意してやったぞ、食い尽くせ」


俺の言葉に影が大きく波打ち、目の前の魔族を陰で包み込んだ。


そして咀嚼音が少しの間、静寂の謁見の間に響くと魔族を包み込んでいた影が小さくなり、俺の影に戻っていく。


魔族の姿はなく、切り捨てた時に出た大量の血も見当たらなかった。


悪夢の暴食(ナイトメアギガイータ)の発動により、ユニークスキル:煉獄の顎 Lv05

を獲得しました。

なお、上記以外のスキル、ユニークスキルは既存スキルの下位互換のため消去しました』


エクストラスキルからのメッセージに耳を傾けていた俺は閉じていた目を開き、獲得できたスキルの少なさに思わずため息をついた。


「魔王軍の四天王でもこの程度か・・・これじゃあこの世界の戦力もたかが知れてるな」


最後にそう独り言をつぶやいた。




*三人称視点

信之がそんな最強ゆえの独り言をつぶやいていた時、謁見の間は不可思議な静寂に包まれていた。


それもそのはず、彼の契約精霊であるマリア、クゥー、ルーの三精霊は信之の強さを見慣れているが、それ以外の存在にとって信之の強さは想像の埒外にあった。


そのため、彼らは目の前で起こった現象を理解できず、座り込んだまま固まっていた。


しかし、そんな中真っ先に動き出し、彼に猛アタックを仕掛けた存在がいた。


恋する少女にして彼に文字どおり命を救われた少女。


高橋美紀である。



*信之視点

悪夢の暴食(ナイトメアギガイータ)を解除した俺に勢いよく何かが突進してきた。


俺はぶつかられても倒れずに突っ込んできた存在を支えたが、それはそのまま俺の体に抱き着いてきた。


「信之君!!ありがとう!!助けてくれてありがとう!!」


高橋美紀は俺に抱き着き、涙を流しながら俺に感謝を伝えてきた。


「ねぇ、信之君。私ね、あなたが好き。私をあなたの恋人・・・うんうんお嫁さんにして」


そして、高橋美紀はいきなり俺にプロポーズしてきた。


俺はその言葉の裏の意味を見向いた。


「高橋美紀。放してくれ」


「うん。それで・・・返事を聞かせて」


「わざわざ返事をする必要もないだろ」


「私は聞きたい」


俺をじっと見つめてくる高橋美紀から目線を外し、俺は宰相のほうを見た。


「それで、冤罪をかけて俺を処刑しようとしたと思ったら今度はハニートラップか?随分と余裕がないな、宰相」


宰相は驚いた顔で俺を見ている。


「遠藤美紀をハニートラップに使ったのは悪くない判断だ。この女は顔立ちは整っているからな。だが、タイミングが良くなかったな。まぁ、いくら顔がよくても中身は高校生。ハニートラップに最適なタイミングなんてわかるはずがないか。人選と指示不足がお前のミスだったな、宰相」


そして俺は改めて、高橋美紀の顔を見た。


その顔は驚愕で染まっていた。


「お前がどうして宰相の指示に従っているのかは知らないが、あいにくハニートラップにわざわざ引っかかってやるほどお人よしじゃないんでね。残念だったな、高橋美紀」


「なんで・・・」


「そういえば、返事を聞きたいんだったな。敵対している相手側の人間、しかもハニートラップを仕掛けてくるような相手からのプロポーズなんてお断りだ」


俺がそう言うと、高橋美紀は悲鳴を上げ、大粒の涙を流しながら床にうずくまった。


いまだに泣き続けている高橋美紀に友人である工藤瑞樹、鈴木澪、東上舞の三人が駆け寄ってくる。


俺はその様子を冷めた表情で一瞥し、やることもなくなったのでさっさとこの国を出ていこうと思い、マリアたちのもとに向かった。


「まて、久我!!」


そんな俺を呼び止める声が背後から届いた。


無視してもよかったが俺は足を止め、後ろを振り返った。


そこには俺を睨みつけている安藤隆也の姿があった。


「どういうつもりだ!!」


「何が」


「さっきのことに決まっているだろう!!なぜ、美紀の真剣な思いを踏みにじった!!」


「これは面白いことを言うじゃないか、勇者。さっきも言ったが、見え見えのハニートラップに引っかかってやるのは相手の真剣な思いを受け止めることじゃなく、ただの性欲に支配されたサルだけだ」


「美紀は本気で君のことが好きだったんだぞ!!ハニートラップなんかじゃない!!」


「証拠は?」


「え?」


「確かに高橋美紀の告白が本気だと言う可能性はないわけじゃない。しかし、そう断定する証拠をお前は持っているのか?」


「美紀は処刑されそうになっているお前を心配そうに見ていた!!」


「それだけか?」


「それは・・・」


「馬鹿馬鹿しい。そんなのお前の印象でしかない。俺が言っている証拠というのは実際に高橋美紀が俺のことを好きだと言っている音声、もしくは動画があるのかと聞いたんだが、さっきの話じゃそんな証拠はなさそうだな」


「なんで信じてやらないんだ!!」


「なぜ、敵のことを信じてやる必要がある」


「俺たちはクラスメイトじゃないか!!」


「お前のいうクラスメイトが俺に何をして、そしてこの国が俺に何をしようとしたのか。それを踏まえて、そのセリフを言っているのか、勇者」


「それは・・・、だが、ほとんどのクラスメイトはあいつらのしたことを知らなかったから関係ないじゃないか!!なのにクラスメイト全員を敵認定する必要はないだろ!!」


「じゃあ、お前たちはこの国の保護なしでこの世界を生きていけるのか?」


「え?」


「お前たちはこの国によって召喚された。そして、お前たちの生殺与奪はこの国が握っている。そして俺はこの国と敵対した。つまり、この国にとって俺は敵でお前たちはその敵を殺すための兵器だ。なら、お前たちは俺の敵だ」


「俺はそんなことをしない」


「お前がしたくなくてもだ。第一、俺を殺さないとお前ら全員をこの国から追い出すと国王や宰相に言われたらお前はどうする。間違いなく俺を殺しに来るだろう?そういうことだ。生殺与奪を握られた時点でお前らに選択肢は存在しない。だからお前らは愚かなんだよ」


俺の言葉に反論できなくなった勇者は膝から崩れ落ち、ブツブツと何かをつぶやいているが俺は興味をなくし、無視した。


「さて、ひとまずこれからどうするかな」


俺はマリア、ルー、クゥー、リリスを集めて、この後のことを相談した。


「ひとまず、隣国を目指してみませんか?」


「とりあえず、それが確実か・・・」


マリアの提案に俺は首肯した。


「よし、隣国に行くぞ!!」


「「「「おぉー」」」」


俺はそう宣言した。


しかしその直後、謁見の間に着信音が鳴り響いた。

更新が遅れて申し訳ありません。

学校生活と資格の勉強で時間取れませんでした。

今後の更新予定に関しましては活動報告に乗せてますので是非ご覧ください。

これからもよろしくお願いいたします。

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