第1話 召喚と対立
「成功です!!勇者様方の召喚に成功しました!!」
いつものように教室で読書していたら、急に教室の床が光輝き、光に包まれたと思ったら今は固い床の上にいた。
しかも、その床には幾何学模様の絵が描かれていた。
あぁ~、はい、はい・・・またか。
俺は嫌な予感がして盛大に現実逃避しているが、周りは突然のことに驚き、騒がしくなってきた。
そんな俺たちのもとにドレスを着て、頭にティアラを乗せた俺たちと同年代の女の子が騎士を背後に従え、声をかけてきた。
・・・うわぁ~。THEお姫様じゃん。
「いきなりのことに驚いてるかもしれませんが、どうか私の話を聞いてくれませんか?」
そういってお姫様が頭を下げてきた。
その様子にさっきまで騒いでいた連中もお姫さまを注目し始めた。
お姫様は周りの様子が落ち着いたのを確認すると話し始めた。
「私はブルームーン王国第二王女ソフィア・ミア・ブルームーンです。この度は私たちの召喚で皆さんをこの国に身勝手にお呼びしたことを深くお詫びします」
そう言うとソフィアと名乗った王女がまたしても頭下げた。
かなり低姿勢というか・・・根が真面目なのかもな。
「ですが、皆様の力を借りなければもう私たち人間国の未来はないのです。皆さんに魔王を倒してほしいのです。ぜひお力をお貸し下さい」
ソフィアの言葉に周りの連中がまたしても騒ぎ出した。
ソフィアはその様子をオロオロしながら見守っているが、その時ふと俺と目が合った。
少しだけ目があったが俺はすぐに目をそらした。
そのあと、ソフィアに声をかけてきた男の提案でステータスの確認をするようだ。
いまだ、動揺もあるだろうが周りの連中は次々とステータスチェックをしていく。
俺は一番後ろに並び、その間に一通り確認しておいた。
・・・マジかよ・・・あいつ、余計なことを・・・。
少し厄介な状況になりそうな予感がするのだが、それでもステータスの確認の列が進んでいく。
すると、前方で歓声が上がった。
どうやら勇者が見つかったようだな。
俺のクラスのNo1イケメンと言っても過言じゃないイケメン。
奴の名は安藤隆哉。
顔良し、性格よし、成績よし、運動神経抜群という神に愛されてんのかというほどの高スペック野郎だ。
まぁ、俺にも神の知り合いがいるが・・・あいつは神っていうより女子高生みたいなやつだからな~。
うちの高校の女子の制服着せたら普通に溶け込めそうだ。
まぁ、どうでもいいことを考えているうちに俺の番になったようだ。
俺は一瞬、あいつに頼んだら面倒ごと回避できないかなぁ~と思ったが、あのアホに頼んでも面倒ごとが増えるだけだと思いなおし、もはやあきらめの境地で鑑定用のオーブに触れた。
一瞬、オーブが光り、すぐに消えた。
どうやらこの鑑定用のオーブは触れた者の名前とレベル、それとスキルと称号を表示するようだ。
そして、俺のステータスはこうなっていた。
~ステータス~
NAME 久我信之
LV 1
SKILL
USKILL
STATE 異世界転移者
俺のステータスに周りがざわめいている。
どうやら、俺の想像通りの面倒な展開になってきたな。
その後、国王の謁見に臨んだ俺たち。
ちなみに俺たちの先頭には勇者の称号を持っていた安藤がいて、その右隣には聖者の称号を得た安藤とよく学校で一緒にいた工藤瑞希が立っており、左隣には大賢者の称号を得たこれまた安藤と学校でよく一緒にいる高橋美紀が立っていた。
ちなみにその後ろにはいっつも安藤と一緒にいる男で安藤の親友 (あいつらはそうおもっているらしい)の菅原悠馬と佐藤大輔が立っていて菅原は重騎士、佐藤は魔法騎士の称号らしい。
そして、同じく工藤と高橋の後ろには2人の親友 (らしい) の鈴木澪と東上舞が立っている。
ちなみに鈴木は回復術師、東上は剣士の称号のようだ。
まるで勇者パーティーみたいだな。
俺は苦笑しながら一番後ろから前方の様子をうかがっていた。
俺のクラスじゃ全員で20人。
国王の謁見の間はそこそこ広いので3列に並んで国王と対面していた。
今は、国王と安藤が話しているようだ。
国王からは魔王を倒して自分たちを助けてほしい、そのための支援は惜しまないとのことだった。
安藤は状況を確認して全員で話し合ってから決めたいと言っている。
王様はその考えを尊重し、そばに控えていた執事風の男性に何か伝えていた。
すると、その男性が頭を下げて謁見の間から出て行った。
「ひとまず、君たちの部屋を用意した。一度その部屋に行き、そのあと話し合うといい。場所もこちらで用意しよう」
国王はそう言うと座っていた玉座から立ち上がり、謁見の間を出て行った。
そのあと俺たちはそれぞれの部屋にメイドによって案内された後、話し合いのための会議室のような部屋に集まった。
そこの椅子に俺は座り、周りの様子を観察した。
全員動揺や不安はあるようだが、高揚もしているやつも多い。
まぁ、最近話題の異世界召喚だし、高校生ならはしゃぐ気持ちも分からなくはない。
すると安藤が立ち上がって周りを見渡して口を開いた。
「まず、話し合う前にソフィア王女から聞いたことを伝える。どうやら俺たちが元の世界に帰るにはかなり特殊な方法が必要で現状その方法は魔王か森のエルフの大長老の2人が知っている可能性があるとのことだ」
安藤の言葉に少し騒がしくなった。
そりゃそうだろう、いきなり見知らぬ国に召喚されて、しかも帰れないかもしれないんだからな。
・・・まぁ、俺は帰れるんだけどね、今すぐに。
それでも、俺は帰るつもりはなかった。
今のところは。
「俺はこの世界で出会った人たちの助けを求める声を無視したくはない!!だから俺は魔王討伐を目指そうと思う!!」
安藤の力強い言葉にあいつの友人たちは一斉に同意した。
そしてそいつらに引っ張られるように周りの連中も魔王討伐に乗り気になっているようだ。
一部、おとなしい連中が震えているが、全員が決意に満ちた目をしている。
どうやら全員で魔王討伐を目指すようだ。
・・・アホか。
「それじゃあ、改めてみんなに聞きたい。魔王討伐を目指すという人は手を挙げてくれ」
安藤がそういうと一斉に手が上がった。
・・・俺を除いて。
安藤が唯一挙げてない俺を見て眉をしかめた。
そして、安藤の友人たちも俺を睨みつけている。
はぁ~、同調圧力ってやつか。
馬鹿馬鹿しい。
「久我。君は魔王討伐を目指すことに反対なのか」
「別に。賛成も反対もしない。王国側は俺たちの代表が安藤だと思っている。だからこそ、あいつらはお前の言葉だけ聞いてるようだからな。なら、お前以外のやつが何を言ったところで時間の無駄だろ」
「お前・・・」
安藤やその友人たちが俺を睨んでいるが俺は気にせずに立ち上がって、部屋を出て行った。
その後、自分の部屋に戻ってきた俺は待っていたメイドに「少し寝る。夕食は部屋で食べる。起きたら呼ぶからそれから用意してくれ」と言うと何も言わず頭を下げ、部屋から出て行った。
俺は部屋のカギを閉め、一応防犯対策をした後部屋にあったベットに入り、目を閉じた。
俺の予想が正しければ、今回は呼ばれるはずだ。
そのまま、俺は微睡みに沈んでいった。
そして、気づくと俺は一面真っ白の部屋の豪華なソファの上に腰かけていた。
目の前にはこれまた真っ白なテーブルにおそらく紅茶が入ったティーポットとティーセットが2組あり、さらに大き目なお皿には様々なスイーツが乗っていた。
そして目の前に顔を向けるとそこには優雅に紅茶を飲んでいる俺とさして年が変わらない絶世の美女がいた。
一片の曇りのない銀髪、見とれるような顔、圧倒的なプロポーション。
まさに絵にかいたような美女がいた。
俺はその美女に見とれることもなく、口を開いた。
「やっぱり、今回は会えると思ったぜ。シルヴィ」
俺がそう言うと、紅茶を飲んでいた美女、シルヴィアはゆっくり紅茶の入ったティーカップを置いて、俺を見てほほ笑んだ。
「こうして会うのは2年ぶりね。ノブユキ」