↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/725

次々とクリア

 私の構えは木刀を持ち上げ、刃を上に向けたもの、いわゆる霞の構えに近い。しかし通常の霞ならば切っ先を敵の顔面に向けるものだが、この構えは変形である。切っ先を変態仮面の胴につけているのだ。


 その方が跳ね上がってくる敵のケラ首に反応しやすい。そしてヒザを深く曲げて腰を落としている。これも自分の目の位置を下げることにより、敏感に対応するための、その場の工夫であった。

 ジリ……間合いを詰める。


 変態仮面はまだ来ない。さらにジリ……間合いを詰めたそのとき、槍が跳ねてきた。

 切っ先を地面に突き刺すように動かす。木刀の腹、棟という部分の膨らみを利用して、槍を受け流した。攻める受け技だ。



 そのまま刃を返して槍を巻き取る。当然間合いを詰めながらだ。間合い十分、敵の長得物は何も出来ない間合い。ここで小手の防具をふたつとも弾いた。

 後退する変態仮面、間合いを取りたいのだろう。しかしそんなことは許さない。


 追撃のスネ打ちをふたつ、敵の右に。変態仮面は転倒、しかし天晴なるはそれでも槍を構えていたことだ。そこで無防具の見つけて小手をいただいた。

 変態仮面もポーションは使うようで、すぐに足を回復させた。だが私はすでに、左の小手もいただいている。槍が落ちた。



 それでも変態仮面は降参しない。蹴ってきたのである。

 蹴り足の左から、スネと太ももの防具をいただいた。そこから引き足に合わせて踏み込み、胴もゴッチャンする。

 とりあえず動けなくすることが先決だ。上へ誘ってから、スネを打つ。片ヒザ着いた変態仮面。残る右太ももの防具も飛ばした。


 そこから丁寧に下半身の部位を欠損させてゆく。残る防具はふたつの上腕、胸と兜である。

 ということで上半身の防具をひとつひとつ解体。両腕も各部位ごとに欠損させ、変態仮面……すでにお笑い仮面は失っているが……はイモムシ状態であった。





 トドメは奥伝技の横面打ち。これですべての敵を葬り、防具もすべていただいて、なおかつ念入りに部位のすべてを奪った。

 すると武将ステージに花火が上がる。どこから吊るされているのか、くす玉が割れて、『パーフェクトおめでとう!』の垂れ幕が下がったではないか。



「「「やったーー!」」」



 トヨムたちのキンキラ声が届いてくる。



「おめでとうございます、リュウ先生! 満点が出ましたよ!」


「さすが旦那だ、無双流だ!」


「今夜はリュウ先生のための夜だぜ!」


 拠点に戻ると、小隊メンバーがバンザイで祝福してくれた。私も少し興奮してしまう。この快挙をウィンドウで確認してみた。すると……。



「おやおや、パーフェクトは私ひとりではないようだね」

「なんですと!?」



 メンバーたちが全員ウィンドウを覗き込む。





『武将にチャレンジ♡』

パーフェクト達成

嗚呼!!花のトヨム小隊 リュウ

陸奥屋一党鬼組 士郎





「あ〜〜……」


「陸奥屋の士郎先生もパーフェクト達成ですねぇ……」


「しかも三秒遅れって……どれだけ仲良しさんなんですか、先生方は……」


「よし、トヨム。士郎先生にメールを送ってやれ。パーフェクト達成おめでとうございます、とな」


「ケケケ、士郎先生気づいてるかな? 旦那もパーフェクト達成してること」



 ちょっとした悪戯心、その意図を察したのだろう。トヨムはニヤニヤしながらメールを送る。

 待つことしばし、返信があった。



「旦那、士郎先生も気づいたみたいだよ? 俺より三秒早く達成しやがって! だってさ」



 小隊メンバー全員で、これには大笑いした。

 そしてその夜はお開き前に晒し掲示板を確認。チャレンジステージの評判を覗いてみた。大量の兵士に赤備え黒備え、凡百のプレイヤーがクリアすることなどできる訳が無い。





 当然掲示板は荒れに荒れていた。すなわち、こんなステージクリアできる訳が無い! クリアした奴は不正者だ!

 しかし私からすれば、これは運営から不正者に対する罠なのである。


 不正の基本はチャージタイム無しでの必殺技ぶっ放し。いわゆるブッパ野郎である。

 しかし必殺技ブッパは、正面の敵を確実にキルすることはできるが、必殺技放出中は足を止めているのである。つまり他の敵に対しては無防備なのだ。



 故にブッパ中は他の敵に攻撃されてブッパ中止、滅多打ちに遭って撤退を余儀なくされる。当然クリアならず、という奴だ。


 彼らには忍者のように、敵を相手にしないという発想は無い。だからクリア達成者を簡単に罵れるのである。忍者などはまだ良い方だ。パーフェクトを達成した私と士郎さんなどは、決めつけ不正者確定なのだ。

 それを鑑みてか、小隊の次なるチャレンジャーはステージを軽く流していた。


 シャルローネさんはメイスを使った空中殺法、セキトリは新たな投げ技の研究。マミさんなどはプロレス技の研究に余念がなかった。つまりまともにクリアなど狙わない。ちょっとした稽古の場所とか、次回イベントの集団乱闘の訓練程度にしか考えていないのだ。





 しかし空気を読まない振りして、カエデさんがステージに入る!


「すみません小隊長、私はクリアを目指してみたいんです!」


「おう!遊び抜きで行ってみろ、カエデ!」


 トヨムは小隊長として背中を押した。カエデさんは周囲を見渡せる人間だ。だからこうしたステージには滅法強い……はずである。

 ということで、小隊の青い稲妻カエデさんがステージに挑む!



「行って来い、カエデさん! ナビはワシが務めちゃるけんのう!」


「え!? セキトリが? ……大丈夫かなぁ?」


「カエデさん、いくらなんでもワシだって傷つくぞい」

「あ、冗談冗談! 頼りにしてますよ、番長♪」


「ワシ、一気に上機嫌」



 ということで、チャレンジャーカエデさん。ナビはセキトリというコンビで出撃。セキトリはセキトリ故に指示が端的だった。



「正面、六!」

「あいよ!」


「右から三、左は六、正面十二! カエデさん、右に突破口をつくれ!」

「ホイ来た!」



 まともに相手をせず、カエデさんは順調に走る。



「囲まれるぞ!」



 セキトリのたったそれだけの指示で、カエデさんは機敏に反応する。楯でひとりを押し込んで、足払いでひっくり返したのだ。そこを突破口として囲みを脱出。どんどん前進した。


「多いぞ!」



 またもセキトリの指示は端的。六人✕三列✕三個中隊。カエデさんは三個中隊を引きつけるだけ引き付けて、突然後退。というか転身。鎧武者を釣り出した。敵は一列縦隊、もしくは膨らんで三列縦隊でカエデさんを追ってくる。しかしカエデさんの方が早い。見事に敵を振り切った。


 その上で次なる敵を求めて進路を定める。……赤備えだ。

 一度に強い赤備えが、三方向から迫ってくる。しかしこれもバックステップでスルーした。まともにはやり合わない。それがカエデスタイルなのだ。とにかく目的達成の最短距離を走りたがる。だから小隊の作戦担当になりがちなのだ。



 で、赤備えに対し、カエデさんはちょん突きのダメージを入れただけでスルーした。

 しかしまだまだ赤備えの序盤。敵はゾロゾロと出てくる出てくる。ここでは仕方なし、カエデさんは楯を使った浸透勁で一人葬り、そのまま逃げ出した。次に出てきた集団は必殺技『雲龍剣』の一撃で斬り捨て、またまた逃亡生活である。


 黒備えこそキルは取れなかったがそれでもどうにか変態仮面と闘うことになった。

 問題はここだ。こればかりは逃げる訳にはいかない。槍対剣の不利は先ほどもうした通り。なのだがさすがの変態仮面も楯は邪魔なようで、こんな小娘相手に少々手こずっている。


 変態仮面が突けばカエデさんは楯で防ぎ、大振りの片手剣が小手を狙ってくる。大振り、と言っても剣が大きいわけではない。スイングが大きいのだ。

 しかしそれでも、必殺『雲龍剣』が炸裂。感動もなにも薄いままにチャレンジは終わってしまった。



 結果、陸奥屋一党『嗚呼!!花のトヨム小隊』 カエデ クリアという記録が残った。

 そしてカエデさんらしいといえばカエデさんらしいことに、彼女がクリアしたときにはすでに、チーム『まほろば』あるいは『迷走戦隊マヨウンジャー』。さらには『情熱の嵐』などからもクリア達成者が現れていたので、カエデさんの記録はすっかり埋もれてしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。