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最終話

度重なる挑発、そして繰り返される甘い踏み込み。

ここぞという一撃が出せずに、剣士は苛立っていた。

顔にそれが現れている。


そしてナンブ・リュウゾウも間合いへの出入りという形で、挑発を続けていた。

その一瞬。

かすかに刃を傾けて、剣士がリュウゾウの頬に色をつけた。


一条の頬傷が走ったと思うや、鮮血が流れ落ちる。

ナンブ・リュウゾウの目の色が変わった。

ヒジを脇につけた柔道の構え、つまり頭部はノーガード。


そのまま間合いに踏み込んだ。

そして立ち止まる。

斬ってこい、という姿勢だ。


必ず捕ってやる、という姿勢でもある。

逆に剣士はうかつに出られなくなった。

リュウゾウの柔道技に、日本刀の斬れ味を見たのだろう。


呑んだと私は見た、勝負ありだろう。

そして一閃、リュウゾウの体が閃いたかと思うと剣士は床板に突き刺さっていた。

決まった。


陸奥屋まほろば連合の全勝である。

これで揚心流は潰えるだろうかと思ったが、そうでもない。

出場した剣士、しなかった剣士とすでに振り返り稽古を始めていた。


たくましいものだ、若者とは。

つまづいても転んでも、失敗を糧としてまた立ち上がる。

良い弟子を持ったようだ、揚心流は。




特別試合の幕が降りる。

今回もまた、私たちは勝つことができた。

しかし常勝を果たす条件というものは、不断の努力と研究によるものでしかない。


今日の勝者、明日の敗者となるなかれ。

その思いあふれるものか、今日もまた若者たちが集まり稽古に汗を流す。

そして……。


カエデさんが落ちた。シャルローネさんもログアウト、マミさんもセキトリも出ていった。

嗚呼!!花のトヨム小隊、拠点としにトヨムと二人きり。

おおよそは察してくれているのだろう、トヨムは殺気を放っていた。


もちろん私からも、殺気の返礼はしている。

稽古場、剥き出しの地面。

私、二本差で正座。



「開始の礼は、済んでるんだよね?」



トヨムが訊いてきた。

あぁ、いつでもかまわない。と答えた。

シュッと低い姿勢、トヨムは弾丸タックルのような速度で背後を取りにきた。


もちろんそれを許す私ではない。

片ヒザ立ちで振り向き、同時に伐倒。

切っ先でトヨムを制する。



「ま、こんなモノで取らせてくれるダンナじゃないのは分かってるけどね」



そう言って、間合いを外している。

そうだ、工夫しろ。

一の手がダメなら二の手を使え。


考えて考えて考え抜いて、そうして技は生まれるのだ。

その手がかりは今まで十分に教えてきたはずだ。

あとはお前たち、若者が自力で先へ進まなくてはならない。



そして若者トヨムはこの日、大きく一歩を踏み出した。

本編はこれにて終了いたしますが、一応完結とはしないでおきます。あまり期待しないで番外編なども気長にお待ち下さい。新作は三月一日開始を予定しております。

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