鬼神館柔道
そして大トリ、ナンブ・リュウゾウの登場だ。
今や国際競技となり格闘技界にも大きな影響を与えている柔道。
しかし本来の姿は得物を取った者を制する術である。
鬼神館柔道、武人フジオカ先生により創設された決戦型柔道。
その猛威は現実世界で証明され、今はゲーム世界で対武器戦闘を経験することで昇華している。
この一戦は、鬼神館柔道の対武器戦闘の集大成と言っても過言ではないだろう。
その大事な一戦に、快男児ナンブ・リュウゾウが選ばれた。
鬼神館柔道の末っ子的存在でありながら、森の石松じみた戦闘力。
そこへ臨む小僧っ娘は、いまや一人前の男の顔をしていた。
サムライ、ナンブ・リュウゾウ。
いかに戦うか?
まるで門出でもあるかのように、目頭が熱くなるのを禁じ得ない。
そのナンブ・リュウゾウが剣士の前に立つ。
宗家どのではない、師範代さまらしい。
まあ、それでも構わない。
宗家どのが年若いナンブ・リュウゾウに負けてしまったら、道場はおしまいになってしまう。
私たちはなにも道場破りではないのだ。
難クセをつけて道場を畳ませたい訳ではない。
ただ単純に「その技量で古流を名乗るのはいかがですか?」と問いたいだけなのだ。
そしてナンブ・リュウゾウ、オープンフィンガーグローブをつけて開始線に立つ。
揚心流サイドからは宗家どのからの檄が飛んでいる。
せめて一勝、勝ち星のひとつくらい上げて来いというのだ。
それならば宗家どのご自身が試合場に上がれば良い、という考えは意地悪だろうか?
ともあれ真剣白刃を抜き放ち、剣士は上段に構えを取った。
「やっちまえリュウゾウ、遠慮は無用だ!!」
私と士郎さんと、フジオカ先生の声である。
上段の構えというのは上位者の構えなのだ。
つまり相手を見下すとか舌に見ている構えなのである。
もっと端的に言えば、失礼な構えとも言える。
だから手加減無用なのである。
これに対し、ナンブ・リュウゾウは腰を低く構えた。
試合開始の銅鑼が打ち鳴らされた。