第二試合、葵さん。第三試合、アキラくん。
葵さんは試合場下、軽い跳躍で身体をほぐしている。
そしてシャドー、軽い左から重たい右。
さらには返しの左フックとボクシングテクニックを披露している。
フットワークも軽い、翼が生えたようなつま先でチョンチョンチョン。
サークリングと左を繰り返してた。
三人目の選手はアキラくんである。
そこから考えるに……。
軽やかな足取りで、葵さん登壇。
揚心流の二人目と対峙する。
その間にも足取りはシャッフルを繰り返し、ボクサータイプのファイトを印象付けている。
試合開始、先手必勝とばかり揚心流は間を詰めてきた。
その切っ先が触れる刹那、葵さんのスライディング。
タイミングどんぴしゃ、そのまま柔道の反則技『カニバサミ』で腹と脚へからみつく。
揚心流剣士、受け身も取れずに後方へ転倒。
見事に敵のヒザを破壊しているのだが、その前に受け身を取れていないので投げ技一本の撤退となった。
相変わらず容赦の無い娘だ、普段は気立ての良い娘さんなのに。
トヨムとの対戦でサミングしてきた過去を思い出してしまう。
まばたきする間の瞬殺劇、その興奮も冷めやらぬうちにアキラくんの登場。
こちらも葵さん同様、試合場下で軽いステップとシャドー。
バックしながらのサークリングで軽快に左を伸ばしている。
そう、葵さんがボクサーまがいのアップをしていた理由はこれだ。
ボクサーの振りをして柔道技での奇襲。
続くアキラくんもボクシングのアップをしてるとなれば、打撃か寝技か分からなくなる。
そしてトヨムの打撃から内股という連携も活きている。
揚心流剣士としては、アキラくんが何を仕掛けてくるか予測不能だろう。
試合開始、まずはアキラくんから間合いを詰める。
剣士は油断なく中段。
しかしアキラくんの構えが小さくなった。
足幅狭くヒザを深く折り曲げ、前傾姿勢でひとつの球のように構えを変えた。
走って左というような、ボクサースタイルではない。
征くぞ敵陣殴り込み。
己の命を的にした、打ち合い上等のインファイタースタイルだ。