タイトル未定2025/02/03 17:56
「ワシの見立てではあの揚心流、剣術と居合がせいぜい。柔の腰はできとらん。ならば柔の使い手のブチ当てるのが面白かろうぜ」
緑柳先生の意見にフジオカ先生が「なるほど」とうなずく。
「そうなると今までの『柔道』だけでは面白くありませんな」
「そう、それよフジオカの。お前さんも心得はあろう、ひとつ『闘う柔術』って奴を仕込んでやんな」
「どんなものになるんでしょうか?」
一応訊いてみる。
「以前リュウ先生の小隊長が拳法のような動きをみせましたが、あのような形に仕上がるかと」
いわゆる少林寺拳法のような動きか。
それはまた面白い。
似て非なるものというのが面白い。
もしかしたら高段者の先生方から見て『それは少林寺拳法にある技だよ』という技も出てくるかもしれない。
さてみんな、何を見せてくれるのかな?
「ということで、揚心流との選抜戦には無手の者を出すこととした」
稽古日、緑柳先生が宣言をした。
その上でアキラくん、忍者、トヨム。
三条葵さんにナンブ・リュウゾウの名をあげる。
「以上の者は当日までに対武器を仕上げておくように」
仕上げておくようにとは、選手に対するものだけでなく私たちに対する言葉でもあった。
つまり、鍛えておくのだぞ、と。
そしていつもならばここで特訓の場面となるのだが、今回は軽く描写するにとどめる。
まずは全員で半身の姿勢。
剣道などは正面向きの姿勢なので、案外こうした構えが効果的なのだ。
そして今回対戦する揚心流もまた。
後足が若干外側へ向く撞木に構えてはいるが、動画を拝見した限りでは活きた足ではなかった。
対してこちらはつま先外向き九十度。
そのため構えは完全な半身となっている。
そこから前進、足を入れ替えてあるいは足を入れ替えず。
敵に気取られるような雑な歩きではダメだ。
理想を言うなら『いつの間にかそこにいた』と言われるのが望ましい。