三回戦
……え〜〜ウチのやりたい放題が失礼しました。
みなさん、なかったことにしておいてください。
みなさんは何も見なかった、オーケイ?
それでは、誰と誰が当たるか分からないルーレット、回ってゴー!
さーてはてさて、はーてさてはて誰が試合をするのかな?
じゃじゃじゃん♪ 三回戦第一試合、赤はソナタ選手!
それに対するはっ……ちゃらん♪ いまやムチの使い手女王さま、兎野ハネル選手です!
そして得物を取り替えるソナタ選手。
やはり少しでも間合いを稼ぎたいか、手槍をチョイスした!
これで相まみえる赤にはソナタ選手、白にはハネル選手。
主審役士郎先生の「構えてっ!」の号令から、試合が始まった!
やはり先制打はハネル選手のムチ、ソナタ選手もこれを受けるが攻撃体勢に移るや次弾を浴びてしまう!
一度受けてしまうと、もうそこはハネル世界。
二打三打と立て続けに浴びてしまう!
華奢で可憐なソナタ選手がムチを浴びる姿も煽情的ではありますが、何故かハガネ隊長の時ほど盛り上がらない!!
それもそのはず、観客席からの声をお聞きください!!
「なにやってんだハネちゃん、背中じゃなくて胸叩いてくれよ、胸!!」
「そうだそうだ! 隊長の時みたいに、セクシか胸を拝ましてくんさい!」
「そんな平たい背中見ても興奮できんのじゃーーっ!!」
「バッカ野郎ーーっ! これはボクの胸だーーっ!!」
はい、もうお分かりですね?
ハネちゃんもファンサービス全開、ムチでソナタの胸を攻めているんですが……。
「放送席っ、『……』とかつけて趣きを深くしないっ!!」
意外と耳が良いソナタ選手、試合に集中してもらいたいものです。
さてここまでの試合運び、どのように思われるでしょうか?
「ん~~……同性としてはソナタ選手の『無さ』にホッコリするところではありますが、配信ということを考えるとあの見苦しい付け乳のひとつもブラ下げてよろしいかと……」
「バストのサイズなど男子からすればクラスの話題のひとつに過ぎませんので、ソナタ選手もあまり気にしない方が良いかと」
リュウ先生、男性は十代で女子の顔、二十代で胸、三十代でお尻を見ると言いますが、実際のところはどうなんでしょうか?
「そういった質問は、男子として私よりもキャリアを重ねた、緑柳先生に訊いてください」
確かリュウ先生は堂々たる四十代、すると視線は自ずから女性のお尻へと……?
「ノーコメントでお願いします」
「確かにおっぱいではマミが圧勝、美脚自慢はシャルローネ。さすれば私の勝負ポイントはお尻になりますけど、どうでしょうかリュウ先生」
「カエデさん、何か悪い物でも食べましたか?」
おっとここでソナタ選手から「お尻の話より試合の話してーーっ!!」との要望がありましたので、ソナタ選手にはもう少し試合に集中してもらいたいところです。
「放送席放送席、こちらはソナタ陣営。美脚自慢のシャルローネです!」
はいシャルローネさん、お願いします。
「観戦中の同期、ノンビリ羊さんにお話をうかがいました。『ソナタちゃんもね〜私みたいにカウンター攻撃すれば良いのにね~』と、自分の負けパターンを推しております!」
「さすが羊さん、同期に役立つポイントが一個もないコメントですね」
ナイスな羊だとは思いますがしかし、リング上ではもはや配信衣装をボロボロにされたソナタ選手が『もっと打って』とばかり、両手を頭の後ろへ回し踊るように越しをくねらせています。
「ソナタ選手、これはもう勝負度外視。新規の顧客を抱え込もう、チャンネル登録を増やしてやろうという心根でしょうか?」
「配信者の鑑とは思いますがそれでいいのか、オーバーズ?」
「世界中がその見てくれに騙されてるでしょうが、彼女社会人。私、高校生。働く大人の方針に口出しできませ〜ん」
カエデ参謀、ソナタも一応十七歳ですから……。
「oh……ミステイクねー、そーりー♪」
「それにしてもヨミさん、ソナタさんは歌が上手という印象がありましたが、ダンスの方は……」
得意という話は聞いたことがありませんね。
もちろん私も不得手としていますので、あまり触れないでいただけると……。
「いえ、そうは言ってもあの『どーだ見てみろ、セクシーだろ!』という表情の割にはセンスが微塵もないというか……」
ミジンコのフケほども感じられませんよね? 分かります。
ですがアイドルとはいえレッスンを受けているとはいえ、不得手なものは不得手なんです。
「ヨミさん、参謀視点での意見なんですが、ソナタ選手今回の試合を自身のチャンネルで振り返りするとき、ばすと部分をシレッと加工して放送するのでは?」
いらんことせんでさっさと寝てしまえ、ソナタ。
「ソナタさんの睡眠のためにも、カエデさんが加工技術者を検索してあげるのはどうだろう?」
「リュウ先生、私ブローカー業者じゃないんですけど」
そう言いながら業者の検索しているカエデ参謀が頼もしいわ♡
ということで第一試合、これだけポイント差をつけておきながら一向に見向きもされなかった兎野ハネル選手が圧勝。
次のステージへと駒を進めました