進む二回戦
大変にサティスファクションなハガネ隊長とハネルの一戦ではありましたが、他の試合は少し急ぎ足でこなしていきましょう。
腕相撲チャンピオンのソナタと道化師のポルテさん、これは軽快なポルテを小柄なソナタが捕らえられるかどうかという試合でしたが。
「いや、見事に仕留めましたね」
「あれは古流の動きと言って良いのでしょうか、リュウ先生?」
「そうですね、ソナタさんの日本刀。これで打つというよりも斬る動きでしたから、剣道というよりは剣術と言った方が良いでしょうね」
ではソナタ選手、古流剣術の妙技で勝利したと?
「そこまで上等なものではありませんが、隙なく一刀を入れたという点では少し古流に入ったかなと」
ありがとうございました。
続いての試合はのんびり羊対陽気なアホウドリ……ではなくカモメ選手の試合。
「この二人はどのような特徴がありますか?」
人間性に関しては、カモメはポジティブ思考で羊はボンクラというところでしょうか?
「それは剣風にも現れてますね。フィジカルを活かして攻撃的なカモメさん、待ちの剣で受けて反撃という羊さん」
「ではリュウ先生、この二人古流に近いのはどちらでしょう?」
「どちらも遠いですね、羊さんからはあまり強い意思を感じませんでしたし、カモメさんはフィジカルが信条というタイプでしょうから」
ですがこの一戦は立ち上がりから予想外。
刀を手にしたカモメ選手に、薙刀の羊選手が積極的に仕掛けました。
「これは驚きましたね、あの羊さんが修羅の攻めを見せたんですから」
「私も意外でした」
これに関しては、羊からすればカモメはなにをしても怒らないという認識があるようで……。
「カモメさん、案外器が大きいですからねぇ」
というかオーバーズのおもちゃですから。
「では試合に戻りまして、奇襲とも取れる羊さんの先制攻撃ですが、小手や袈裟、胴を狙っていますよね?」
「上手に打ち分けてポイントを奪っています」
のんきな羊はリズムに乗って、次から次へと攻撃を命中させています。
フィジカル頼みのカモメは虚を突かれたか防戦一方。
「ですが奇襲攻撃の序盤こそポイントを奪いましたが、徐々にカモメさんはガードで受け止め始めましたね」
このガードからカモメがリズムを作る、そんなこともあり得るんでしょうか、リュウ先生?
「まあ攻撃がリズミカルなら、防御もリズミカルになりますからね」
そしてそのリズムの隙間をくぐるようにして、カモメ選手羊の間合いから脱出。
ここで仕切り直さず、即座の攻撃というのがカモメらしい。
「オーバーズレベルの闘いならば、攻めた方の勝ちというのもありますからね。見ないで行くことも大切ですよ」
攻めていた羊、逆に今度は防戦一方。
完全に形成は逆転。
「ここで手を緩めず、最後まで攻め切ったカモメ選手、素晴らしい!」
「結果を見ればカモメ選手、首の皮一枚での判定勝利でしたからね」
カモメ選手の逆転劇をご覧頂いたところで、次の試合。
猫さんとハツリちゃんの試合です。
「ちなみに猫さんはウチの緑柳先生が推しています」
その猫さん、私ども素人から見れば達人の風格というか、デキルっという雰囲気なんですけど。
「私たち陸奥屋プレイヤーたちからも、期待の声が上がってましたね」
達人の風格猫さんとフィジカル勢ハツリ選手、ある意味注目の一戦ですが。
ハツリ選手飛び込んだーーっ、ある意味カモメより頭の悪そうな突撃だーーっ!!
「勢い、これは必要不可欠ですよ!」
ハツリ選手、猛然と猫さんに打ち込んでゆく、よもや彼女にお昼でも食べられたことがあるのか!?
猫さんも防御に徹するが……諦めた、諦めたっ!! 棒立ちで打ち据えられている!
防具が弾け飛ぶ、防具が破壊される! そして猫さん、もう好きにしてとばかり大の字!!
セコンドの犬さんがタオルを投げてギブアップ、試合終了試合終了試合終了ーーっ!!
いやあ、達人は雰囲気だけ。
これでこそのオーバーズ、呆気ない幕切れではありましたが、笑いは存分に奪ってゆきました。
天晴なり猫選手。
そして次の試合に移りますが……どうしたことでしょう?
メイドのミナミさんが雪の妖精さんと対戦するはずなのですが……ドクターがストップをかけた!
雪の妖精さん、その設定にあるまじきかな、どうやら肝臓が弱っているということで、ドクターストップがかかりました!
自動的にミナミ選手、シード扱いのニンジャ選手との対戦が決定!
口惜しい、これは口惜しい雪の妖精さん。
「君がため 鍛えし技も 水の泡 過ぎてしのちは 澄み渡る空」
詠んでいる、なにやら七五調で詠んでいる。
元ネタはアレか、岡田以蔵辞世の句か。
しかし同時にオイシイ。
このような形で出場権を剥奪されるところが実にオーバーズ!
これが世界に誇る日本の箱!
アイドルたる者があろう事か、肝機能低下によりイベント参加を不許可とされたのだ!!
しかし我々は彼女に賛辞を送ろう!
ビバ、オーバーズ!
ハラショー、オーバーズ!
そしてブラボー、オーバーズと!
そして失意に打ちひしがれ、退場する彼女の口元が!
彼女の口元が笑っていた!