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一般人

戦う一般人、挑みかかる一般人。

強力なメンバーを失いながらもなお、彼らを支える戦線を維持し続ける技は、走って打って打っては走るヒット&ラン戦法。

とにかく走る、とにかく動く。


決してひとつ所に留まらず、常に動いて動いてチョコチョコと打撃を入れて回る。

USAのリアタイ視聴者からは、「いかにも非力なジャパニーズらしい、ショッパイ戦い方だ」と嘲られても、それ以上の戦死者を出していないのもまた事実。

逆に戦死者で広げられた二日目のポイントを、コツコツと奪い返しているところ。



「さあ、JP視聴者のみなさまお待たせしました。力士隊吶喊隊それに槍組が戦場に復帰しました」



陸奥屋中堅格、古参の戦死者たちがようやくの復帰。

しかしそれに呼応するかのように、アメフト軍の軽量級戦士たちが足止めに走る!



「そしてここが肝です!!」



ここで陸奥屋マヨウンジャー、カツンジャーに情熱の嵐と次々に左右へ展開。

アメフト軍重量級、中量級を両サイドから攻めたてる!!

不意を突かれた形のアメフト軍、一人またひとりと死人部屋へ送り込まれた!


良い形ですね、カエデ参謀!



「はい、良い形です。良い形なのですが、やはり決定打に欠けますね。もうひと押しの火力が足りていません」



なるほど、確かにこの展開序盤こそは不意を突いてクリティカルやキルを奪えたものの、その後はなかなか有効打を打ち込めていません。

それでも地味に真面目に誠実に、歩み続けるかのようなヒット&ラン戦法。

積み重ねるようにしてポイントを奪い続けています。



「奪い続けてはいますが、瞬間的なビッグブローでキルを奪われたりグッドショットを入れられたりしますので、積み重ねたポイントがご破算になってしまうんですね」



パワーとは理不尽、腕力というものがかくも理不尽なものだったとは。



「いえ、これは彼らが今日まで信仰しつづけ、努力を積み重ねてきた結果ですから。決して理不尽などではありません」



ですがカエデ参謀、陸奥屋がキルを一人取られるのと、フィジカル軍が一人キルを取られるのとでは、重みがまったく違う気がするんですが。



「もともとが一五〇人対一五〇人。そこからネームドプレイヤーが抜けてますので人数の差があります。さらに小隊単位で戦うアメフト軍と二人一組で戦う陸奥屋の差が出てますね」



う〜ん……この展開をどうしましょうか?



「無理をすれば全滅します。キルは奪われても死に帰りをしてくれますから、ここは我慢の展開ラウンドでしょうね」



え〜〜っ!? 一発逆転大戦略とか考えないんですか〜〜っ!?



「軍師というものはそうじゃありません。勝つべきときに勝てる準備をして勝つべくして勝つ。鬼謀妙計奇跡の逆転大博打なんてものは、軍師として失格です。意外かもしれませんけど、諸葛亮孔明も軍略としては基本的なことしかしてないんですよ?」



え〜〜っ!? そーなのー?



諸葛亮のデビュー戦、超人曹操を追い詰めた追撃戦だって本拠地への帰路と逃げやすさを考慮すれば絶対にあの道しか通らないし、馬の移動距離を考えれば必ずあそこで休憩する。

そこに伏兵を忍ばせておくのは、少し考えれば誰にでもわかります。

むしろあそこで曹操を仕留め切れなかったのは諸葛亮孔明の失敗ですね。



カエデちゃんカエデちゃん、アンチが湧くからそのへんで……。



「だけどやるべきことをやる、という当たり前のことをキッチリとやる点は評価が高いですね。現代にも通じる考え方だと思います」



カモメ、軍師ってのは人を罠にはめたり騙したりするものかと思ってたよ……。



「そういうこともしますけど、どちらかといえば『そっちに行ったら危ないよ』っていうのに、相手が好き好んでそっちに行っちゃうっていうケースが多いかな……」



なにそれカエデちゃん、怖いんですけど!!



「そもそも罠でも騙しでも、相手に『ハメられた! 騙された!』って思われたら三流。一流なら『俺の判断でこうなった』とかニヤリと笑って滅んでいただくのが一流。バレないのがホンモノなんですよ」



カモメ、明日からカエデちゃんを見る目が変わりそう……。



「なにも私にそれが出来るとは言ってませんよ?」



ほっ、良かった。



「できないとも言ってませんけど」



もーーっ、カモメ本気でカエデちゃんが怖いんだけど!!



「さあ試合に戻りましょう、陸奥屋一般プレイヤーにとってはジリ貧。我慢のラウンドが続いてますね」



逆にアメフト軍からすれば、これだけ火力に差をつけておきながら『どうして押し切れないんだろう?』って考えてませんか?



「間違いなく考えてますね。それともうひとつ、タイムアウトを考えているでしょう」



タイムアウト?



「鬼神の四先生とネームドプレイヤーが待機してるのは二日目だけ。アメフト軍としてはここで大量リードを確保して三日目を迎えたいはずです」



なるほどなるほど、するとどこかで一発勝負をかけてくるのは……?



「私たち陸奥屋ではなく、アメフト軍でしょうね」



そこに決定的な隙が生じる?



「その調子その調子、良い発想良い発想♪ カモメさんも軍師の才能があるかもよ?」



カモメ騙したり罠にハメたりって苦手なんですけど!



「もちろん分かってて言ってます♪」



もーヤダーー!! なんでオーバーズでもない人からカモ虐されなきゃなんないのーーっ!?

しかも撮れ高的に美味しいから、怒るに怒れねーじゃん!!



「だけどカモメさん、ボクシングに例えて一発勝負に出るとしたら12ラウンド中どこで仕掛けます?」



ん〜〜……最終12ラウンドは敵も頑張るだろうから、11ラウンドに仕掛けるかな?



「半分正解、というか合格点。だけど本当に人生賭けた一発勝負なら、最終ラウンドの立ち上がり。私ならその一瞬にすべてベットします」



その一瞬……ゴクリ……。

だけど『王国の刃』はボクシングじゃありません、明確なラウンドの区切りが無いですけど。



「だけど相手チームをよく見てください。司令塔からの指示を聞き逃すまいと、動きの止まる選手が続出してますよね?」



軍師ってそんなとこまで見てんの!?

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