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噂のカップリング

一般プレイヤーたちのフォローのため、まずはトヨムが征く。

長杖で敵を追い払い、それでもなおすがってくる柔道マンたちには関節蹴りをお見舞いする。

関節蹴り……いわゆるヒザのお皿を蹴るのではない。


お皿の下、スネの上部を踏みつけるのだ。

そんなことで関節蹴りが成立するの? とお疑いの方もいよう。

これはアルティメット・ファイト・チャンピオンシップにおいて、ホイス・グレーシーが披露したストライカー対策である。


ちなみに、ではあるがこれを貰うとヒザ関節に十字固めをくらったような不快感を味わい、場合によっては

本当に関節を破壊するので、読者諸兄は絶対真似しないように。

もしも真似をするならば、この作品と作者はまったく無関係であると明示していただきたい。


ストライカーの危険技関節蹴り。

それを披露してでもトヨムは征く。

そして一般プレイヤーたちも関節蹴りを真似し始めた。


おいおい、これではせっかくの転ばせ武器の意味が無いだろ。

などとは思ってみたが、そこは一般プレイヤーとはいえ陸奥屋一党。

片足となった柔道家を効率よく転ばせるために、長得物を使用している。


そしてトヨム。

長杖を目一杯長く持って頭上にかかげる。

杖は地面と平行、先端は敵の目間に。


これで敵の間合いのギリギリ外。

柔道家のメイスは届かない。

目間に杖をつけているので、柔道家は急ブレーキ。


その足を一般プレイヤーに刈らせていた。

そして連携。倒れた柔道家にモーニングスターのプレイヤーたちが群がる。

ここでもう一度確認。


巨漢殺しのモーニングスター。

それを活かす転ばせ武器。

一手では簡単に倒れてくれないので、急ブレーキをかけさせたり上下左右に振ってみたり。


やはり転倒前の仕込みが重要である。

この仕込みに私たち災害先生が出るのは無粋だろうか。



「だって先生方、仕込みで止まらずにキルまで持っていっちゃうから」



いかん、カエデさんの苦情が幻聴としてありありと聴こえてきてしまった。

その幻聴に心の中で反論する。



「そんな暴走核弾頭は草薙士郎だけだ。私は違う、カエデさんの誤解だ」

「気をつけろカエデ、大人の男は平気でウソつくぞ」



なにをどう考えても男性経験など無さそうなトヨムが幻聴まで聴こえてくる。

疲れているのか、私……。

まあ、幻との会話はこれくらいにして。


我が国を代表するフィジカル・ファイターである柔道マンたちと、一般人たちの戦いだ。

世のフィジカル信者のみなさま、大変に申し訳ない。

デカいは強い、重いは強い。


それは私たちも知っているし理解もしている。

鍛えに鍛えた者、努力に努力を積み重ねた者が破られるなどあってはならない。

もちろんおっしゃる通りだ。


しかしそれでも、陸奥屋一党の一般人たちが押していた。

もちろん彼らとて努力に努力を積み重ね、鍛えに鍛え抜いた者たちである。

ただ単に白銀輝夜とかトヨムとか、ああいう超人ではないというだけ。


ただそれでも、現代の水爆大怪獣である柔道マンたちを凌駕するのは申し訳ない。

ただこれにはタネも仕掛けもあって、ひとつは彼らが『王国の刃』になれていない。

もうひとつは彼らが得物になれていないというだけの話。


ついでに言うならば、カエデさんの二人一組戦法が効果発揮しまくり千代子だからである。

二人一組戦法というのならこの冬もっともホットな二人、ナンブ・リュウゾウとキョウちゃん♡に目を移してみよう。

まずは牙門旗を支え仁王立ちのナンブ・リュウゾウだ。


まだ柔道マンたちが一般プレイヤーたちを突破していないせいか、はたまたキョウちゃん♡という相棒に全幅の信頼を寄せているのか、泰然として動かない。

いや、それでも鋭い眼光を押し寄せては押し返される柔道マンたちに向けていた。

柔道、それは彼の信仰であり地球上で絶対のものだ。


その柔道界において光と絶賛を浴びる大学生、機動隊の柔道家たち。

対してナンブ・リュウゾウは陰の民だ。

報われることなく、その活躍を喧伝することも無し。


将来なにかのポストに就くことも約束されていない。

それでもこの国の懐刀、それでもこの国の最終兵器。

勝つ以外に許されぬ男たち。


それが鬼神館柔道というものだ。

そして表の代表である柔道家たちが、一般プレイヤーたちの壁を越えることができないでいる。

ナンブ・リュウゾウとしては忸怩たる想いがあろう。



「それでも奴らは乗り越えて来ますよ、リュウゾウ兄さん」



キョウちゃん♡が闘神をなだめる。

キョウちゃん♡の意見は正しいだろう。なによりも一般人に比べてフィジカルが強い。

強すぎるほどだ。


そんな連中がいつまでもモタついている訳が無い。



「おい、こいつら二人掛かりで来てないか!?」

「おう、だったらこっちも二人掛かりでやってやろうぜ!!」

「柔道家が一般人になめられてたまるかってのよ!」



いよいよ反撃に来るようだ。

すみやかにカエデさんの指示が飛ぶ。



「敵が押して来ます!! ネームドプレイヤーは後退、牙門旗の後方を守ってください!」



つまり、リュウゾウとキョウちゃん♡の出来を見るということだ。

ネームド小隊ならびに情熱の嵐、ジャスティス、マヨウンジャーとカツンジャーも後退。

取り残された形の一般プレイヤーだが、不満の声は挙がらない。


むしろ勇気を振り絞り、仮想フィジカル軍団に対応している。

しているがしかし、二人一組戦法を選択したフィジカルモンスターを止められない。

無念の突破を許してしまった。



「来たな、キョウ♡」

「そうですね、リュウゾウ兄さん♡」

「俺の名前にも♡かよ?」

「ダメですか?」

「い、いや許す……」

「とりあえず接近してきた敵は斬りますが、兄さん♡も暴れたいでしょ?」

「そうだな、せっかく牙門旗は武器にもなるんだ、ひと暴れふた暴れくらいはしておきたいもんだぜ」

「それでは、まずは右から」



キョウちゃん♡は左に出て、敵を右へ右へと追い立てた。

その敵をメイスでも長杖でもまかなえない間合いを持つ牙門旗で吹き飛ばす。

ホームランされたかのように、柔道家たちは放物線を描く。

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