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陸奥屋まほろば連合総員集合

その日の稽古の終わり際、本店総裁鬼将軍がら通達があった。

週末の稽古は試験的に〇〇大学柔道部有志、△△大学柔道部✕✕大学柔道部連合軍さらには警察署勤務の機動隊との練習試合を行うので手空きは総員参加されたしとのことだ。

いずれの大学も柔道では名を馳せている名門である。


中にはオリンピック選手を輩出している学校もあるので、フジオカ先生の口利きで集められた人数なのかもしれない。

あるいは鬼将軍の金の力か。

金というなら、忘れてはいけない。


参謀長出雲鏡花も、かなりおハイソでおセレブなお嬢さまだということだ。

そのような環境にありながら、我が暮らし必ずしも好転せずジッと手を見る。

いや、なにも不満がある訳ではない。


私は納税者のみなさまのぬくもりで生きているのだから。

それに普通市民であるということは、だれに恥じる身分でもない。

見てみたまえ、あそこでふんぞり返っている草薙神党流宗家を。


あいつなんざ嫁働かせて、手前ぇは剣術の道楽三昧ときたもんだ。

そりゃまあ鬼将軍という後援者タニマチ捕まえたのは大したもんだ。

だがそれだって、貴様が資産家巡りした訳じゃないだろ。

鬼将軍が勝手に網にかかってただけじゃねぇか。


チッキショー、どうだ羨ましいか? みたいな顔すんじゃねー!!

羨ましいどころの話じゃねーや!!

いや、いかんいかん。


金に目が眩むのは人間だれしもそうではあるのだが、しかし。

タニマチがついたとして、私が公務員を辞める訳にはいかないのだ。

何故なら、私には私にしかできない仕事があるのだから。


そして公金を投入する私の仕事は、必ず誰かの暮らしを潤すのである。

草薙士郎が太いタニマチを捕まえたからとて、それがどうした。

彼では橋一脚架けることも道端の側溝をなおすこともまかせられないのだ。


そう、フジオカ先生にもできない。

緑柳先生も無理。

やはり私がやらなくては。


羨むなかれ、うつむくなかれ。地味でも真面目で正直に、私たちは歩き続けます。


ままま、公務員哀歌はここまでにして。

週末だ。

陸奥屋まほろば連合、総員一五〇名。


誰一人欠けることなく集合した。

ただ一人、口のまわりをアンコで汚した天宮緋影が遅刻したのをのぞいては……。

ぞして揃いも揃った大学柔道部、警察署機動隊その数一五〇名。


すべてが見上げるような超重量級スーパーヘヴィ・ウェイト

こいつらだけで民族大移動。

地下鉄の電車が傾きかねない大男たちだ。


両軍合わせて三〇〇名の第軍団が揃い踏み。

敵はいずれも鉄兜の胸当て装備、そして手には使い勝手の良いメイスである。

まさに仮想アメフト軍団だ。


さらには、デカい。

身長で一八〇センチを越えるのが、当たり前という顔で並んでいる。

そしてそのガタイに奢っているのが見て取れた。


「おいおい、フジオカ先生に呼ばれて来てみたら女子供にオッサンやジイさん相手かよ」とでも言いたげだ。



柔道マンたちは円陣を組んだ。



「フジオカ先生が言うには一方的にボコしても構わんって話だ!! 種目は違うがフィジカルの差を見せつけてやろうぜ!」



つまり、ガタイと体力にまかせてゴリ押ししてくるんだね?

ということで、カエデさんも人を集めて円陣を組む。



「お聞きの通り柔道家たちはゴリ押ししてきますが、いつも通りのツーマンセルでいきましょう。センターは陸奥屋一党鬼組とトヨム小隊。翼端はマヨウンジャーとカツンジャー、チームジャスティスと情熱の嵐はセンターの露払い。そして死番最前線は一般プレイヤーのみなさんでお願いします」



ちなみにまほろば連合お嬢さんたちは、センターの背後。

「楽ができますわね♪」と出雲鏡花がホクホクしていそうなポジションだ。

そして私たち災害先生デンジャー・ボーイズは完全に後方腕組状態である。



相棒バディ相棒バディ、モーニングスターを頼む! 俺は長杖を試すぜ!」

「どいつを狙う!? 正面のデカブツなんてお買い得じゃないか?」

「おっと、そいつぁ俺たちも狙ってたんだ」

「目標変更、その右手中型を獲ろうぜ!!」

「初手の長杖、打ち負けるなよ!」

「二の太刀のモーニングスター、命中させてくれよ」



ゴング前、我が軍も互いに声を掛け合い士気の高まりを見せる。

緊張感がみなぎってきた。

対巨漢練習試合、冷たく乾いたゴングが鳴り響く。



「待ってました一番槍っ、アタイがフジヒラトヨムだーーっ!!」

「続いて二番槍はトヨム小隊セキトリが行くぞいっ!!」

「特攻三番機、シャルローネさんだよ〜〜ん♪」


そこにカエデさんとマミさんも続いた。

というか、トヨム小隊と鬼組だけでバタバタと死人部屋へ柔道マンたちを送り込んでいる。

っていうかお前ら一般プレイヤーの練習にならん、さがってろ。


そう、一般プレイヤーたちが最前線に配置されたのは、彼らの稽古のためだ。

それを追い越して一番槍をキメるのは、やり過ぎだろう?

そうは思わないかい?



「お前らンとこぁもそっと稽古を意味って奴を考えた方がえぇな」



ほらみろ、私が翁に叱られた。



ということで、カエデさんに無線連絡ディスコード



「あーあーカエデさんカエデさん。トヨム小隊と鬼組を少し後方へ。一般プレイヤーたちの稽古にならんと緑柳先生に私が叱られる。お願いだから少し手加減して♡」



私の訴えにトヨム小隊は即座に応えてくれた。

もちろん私に敬服している鬼組も。

故に一般プレイヤーたちがスーパーヘヴィ・ウェイトに相対することとなる。


そして今や一般プレイヤーといえど、陸奥屋まほろば連合にこの状況で臆する者など存在しない。

一般プレイヤー突撃。

そして柔道マンたちに討ち取られる。


さらに突撃。男の一撃はまたも届かず。

しかし突撃は続く、後に続き成果を挙げると信じて。

そして何人目の一般兵だろうか、ついに柔道マンたちに得物が届いた。


しかしそれでも、大樹の脚は根の生えたがごとく。

負けるな、あきらめるな!

ひとつの攻めは二の太刀につながる!!


私のいのりは四先生全員の祈りなのだ。

そして近接戦闘武器のモーニングスターが、柔道マンのスネを砕いた。

グラつく巨体、攻むべきときは今ここぞ!


これを突破口としなければならない!

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