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無題

更新の日付間違えました。

BGMによるパフォーマンスの向上。

それについて文句そいうのではない。

しかしそれでも言わせてもらおう、音楽に合わせた戦い方は、やはり1、2、3のワンツーワンツーという、リズムの動きになってしまう。


これはズバリ、現代体育であって古流の動きではない。

そして技が古流であっても、それを用いる彼らは現代人なのだ。

そして現に、リズム運動によって動きは良くなっていた。


うん、ここはいったん古流を引っ込めて戦果を目指すことにしよう。

その方が、彼らもやりやすそうだ。

フジオカ先生も士郎さんも、『仕方ねぇなぁ』という顔で彼らをながめている。


ただし、緑柳先生だけは渋い顔だった。



「緑柳先生、いまは結果が優先ですので。なにとぞ」

「そうは言うけどよ、せっかくいい具合に上がってきたのにまた現代体育かよ?」



確かに、私たちに四先生としては面白くはない。

だがやはりここはゲーム世界。

本物の道場ではないのだ。


そしてこうしたお遊びの後、若者たちは古流の稽古により一層熱を入れてくれる。

メリハリの効果と言ったら言い過ぎだろうか。

しかし私は古流の稽古に励む若者たちの表情が、イキイキしているように感じられるのだ。


いや、今では『古流が好きになってくれた』ものと考えている。

キョウちゃん♡を始めとしたネームドたちは別格なのだが、それでも次の段階へ進みたくなってしまう。



「それこそリュウさん、『ここはゲーム世界』だぜ。本物の道場じゃないんだ」



そうだ、あまり教える側が熱くなってもいけない。

ここはあくまでも遊びの場、初伝より上の技術は必用ない。

古流は何度も言うが、『いかに効率よく人命を奪うか?』という技術なのだ。


そんなモノを簡単に教えるものではない。

ただし陸奥屋まほろば連合、このメンバーの誰一人として、古流を学ぶ覚悟ができていない者はいない。

それだけの連中が揃っていた。


この大隊のベースは、陸奥屋一党である。

後に参加した者もいるが、それでも古流好きばかりよくぞこれほど集めたものだ。

鬼将軍、その選別眼には敬服するしかない。


普段は道化のふりをしているが、そのお眼鏡に叶う者は少ないのだろう。

そしてそんな時、忍者が帰ってきた。

参謀本部の指示で、アメフト軍団の偵察に出ていたようだ。



「で、どうだった? フィジカル軍団の様子は」

「最近では筋肉がパンプアップしてるのか、アバターがさらに大型化していたな」



カエデさん立ち会いの元、忍者が答えてくれた。



「そこまで身体を大きくしてくるとなると、少し用心しなくてはいけないでしょうか?」

「ウチのメンバー全員が大物武器を使う訳じゃないからね。刃物得物ってのは力よりも正確さだよ」

「そうは言いますが、やはり数字とか火力は侮れません」



そうだ、彼女は参謀なのだ。

だから明確になっている数字というものには警戒をおこたらない。



「フィジカル軍団の平均体重は、八〇九〇というところか? それ以上だろうか?」

「ウチは七〇キロ未満ですね」

「だがなカエデ、敵はボディビルで作った筋肉。パワーはあるけど速度の二乗で生み出したエネルギーではない。つまり、重たいもんだからトロい」


「だからこそよ、忍者。そんなのがスクラム組んで走ってきたら、私壊されちゃう」

「やってたな、肉弾戦式ファランクス陣形。あれでこちいの前衛、あわよくば中堅まで突破するつもりらしい」

「うわー怖いなー」



さして抑揚の無い声で、カエデさんは答えた。



「そう、世間ではファランクス陣を崇める輩が多いが、あんなもん先頭がコケたらみんなコケるからな」



そして敵をコケさせる専門家を、我々は養成中なのだ。

トヨムの長杖、シャルローネさんの月牙鏟げつがさんセキトリの猪八戒棒などなどである。

あるいはナンブ・リュウゾウが掲げる牙門旗、これも使い方によっては打突武器ともなりえるし、ツッ転ばし武器にもなる。


力士隊が手にした日本製メイス八角棒や山伏の杖なども、転倒武器として申し分ないものだ。

要は使い方であろうか。日本刀だって鞘ぐるみ下げ緒を手にして放ってやれば、立派転倒武器となる。



「それで、具体的な作戦はどうしようか?」

「忍者、他にアメフト軍はどんな戦法の練習してた?」

「やっぱ大型アバターで陣形崩して、他には身体能力活かしたレスリングの稽古やとんぼ返りをやってたな」


「とんぼ返り?」

「よほど身体があまってるんだな」

「私の目にもそう見えたな。中型以下の選手が、、ノリと勢いであそんでたよ」


「マスコミは入ってた?」

「全米注目とはいかなかったが、地方紙は何社か入ってた」

「マスコミ向けのサービスって線も考えられるわね」

「苦手意識があるのか、今日は剣の稽古はしてなかった」


「今日は?」



私は訊く。



「あぁ、普段は剣道の先生かな? を招いてなれない剣を振ってるんだが、いかにフィジカルモンスターでも、これは上手くいかないようだ」

「そりゃそうだ、体格や身体能力に恵まれていても、やはり剣は剣さ」


「で、具体的な作戦ですが、やはり転ばせ戦法。ただし敵はレスリングも稽古してますので、転倒からの建て直しは早いでしょう」

「立て直す前に打ち取るか、立ち上がらせてまたコカすか?」


「そうなるともう、現場判断でしょうね。コケてからの立て直しの早そうな、小型中型の選手に敵役をやってもらっての稽古をしておきましょうか?」

「問題はまだある。陸奥屋まほろば連合特有の問題かもしれないが、死人部屋からの復帰兵をどう処理する?」

「若年兵を充てる予定でしたが、彼らにも転ばせ武器を持ってもらいたいですね」



生存率を高めるための策である。


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