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陸奥屋の魂

デリンジャー軍団を迎え討つ、チームW&A、ここまでの展開はまったくの思うツボ。

ここであえて敵軍サイドの視点で話を進めてみたいと思います。

カエデ参謀、もしもカエデ参謀が敵軍所属なら

どのような指示を出しますか?



「敵の先手を許すな。どんなケチなカスダメでも、先に入れて行きたいですね」

「艦長なら逆に大振りを指示するかしら。一発でも入れば面白くない?」

「それもアリかな? 逆転のためには思い切った一発も必用ですからね」



でもそれは博打では?



「そこが私とソナタさんの弱点。苦境を招かないような策は練れるけど、いざ苦境になると手の打ちようが無い」



いいいえ、ボクボクボク、参謀なんてできませんが?



「リュウ先生が言ってましたよ。ソナタさんの稽古は、なぜこれを稽古するのか? どうつかうのか? それをかんがえてる稽古だって」



そんなことありません、って言ったらリュウ先生を否定することになるんですよね?



「そこまで気を使えるから、こういう話をしてるんです♡」



南無阿弥陀仏の暇もない話ですねぇ。(注1



「ですがソナタさん、私たちでは太刀打ちできない参謀候補生もオーバーズにはいるんですよ?」



えぇえ!? カエデ参謀でも敵わないヤツがいるんですかっ!?



「そ、ここ一番で博打を打ってくる艦長さんですね♪」

「あらカエデちゃん、分かってるじゃない。艦長のデキる女っぷり」

「じゃあオーバーズで大きな対戦企画があったら、次の参謀はよろしくお願いしますね♪」

「藪を突いてヘビが出るかじゃが出るか、だったわ」(注2



さて試合に戻りましょう。

ここまでの展開、カエデ参謀の言うカスダメ同然のポイントを積み重ね、W&A軍の優勢となってますが。

どちらのチームもキルを奪っていませんね。



「はい、あらかじめヒカルさんたちに言いつけてありました。無理にキルを奪いに行かず、まずは先制点。敵があせって動き出してから、キルを狙うようにと」



まるで敵の動きまでコントロールしているかのような言い方ですね。



「達人先生方の剣もそうですよね? ここを打っておいでとばかりの構え、それに釣られて打って出ると確実に仕留められてしまう」



あれってホントに理不尽ですよね?



「ですがソナタさん、その理不尽のさらに上を行く理不尽も存在するんです」



そのときコダマする、観客席からのひと声。



「優等生のような試合では、視聴者をときめかせられないではないかっ!! ええいでくの坊二人っ、君たちキルのひとつでも奪われてみないかっ!」



そう、世界の理不尽を集約したような存在。

我らが総裁にして、ミチノック・コーポレーションの会長である鬼将軍だった。



「世界が求めているのはスリルとサスペンス、そしてときめきではないかっ!」



いやもう黙っててください。

というかとなりに目をやると、カエデ参謀と艦長マリナが眉間を指先で押さえて渋い顔してるし。

そして本格的に試合も動き始めました。


カスダメポイントの蓄積、ライ姉さんがいなしてチクチク躱してチクチク。

大型アバターの白人選手、ついに小手が吹っ飛んだ!

さらにはカリムとアキムの二人もたび重なるドロップキック、ビッグフットの影響か。

胸部装甲の耐久値が激減りしている!


白人巨漢、小手を嫌ってカリムとアキムの後方へ避難。

しかしライ姉さん、これを追いかけずカリム選手のスネにクリティカルの一撃!!

またも大きくポイントを奪った!


いやぁ~いつでも強打が出るというのは、本当に頼もしいですねぇ。



「その強打に目を奪われがちだけどソナタ、重要なのはそこじゃないわね」

「さすがマリナ艦長、お目が高い」



ここはカエデ参謀の顔を立てて、マリナにもちょっとイイことを言わせてあげましょうか。



「よろしくって、ソナタ。強打を的確に打ち込むためには、仕込みが重要になってくるのよ。その仕込みというのが、チョコチョコと刻んでるカスダメ。いわゆるジャブが効いてるの」



普段下ネタ語ってるマリナとは別人のような的確な意見だね。



「ではここでカエデちゃんのうんちくに繋げるわね。お願いカエデちゃん♪」

「無茶振りしますね、オーバーズって……。では、ボクシングには褐色の爆撃機と呼ばれたジョー・ルイスっていう名チャンピオンがいましたが、彼のフィニッシュ・ブローは常に右のクロス。これ一本槍。だけど右のクロスを的確に演出したのが、ジャブだったの。ボクシングと剣道は実力差が出やすいと言われてるけど、共通点が見出だせないかな?」



なるほど、『王国の刃』は剣道じゃないけど、カスダメの取り方ひとつで大きく流れを作れるのかな?



「今回の場合は特に、敵が得意な序盤での大量得点、出会い頭のセット・プレイを阻止してるんだから、ぜんべのアメフトファンは今頃ストレスを抱えているよね♪」



すべてはプラン通り、勝利へむかって快速超特急……って、ここでモヒカンが打たれる!

モンゴリアンも力無く後退っ!

二人そろって死人部屋送りになったーーっ!!


なんてこったいルークコンタイ、どういうこったいルークコンタイ!!(注3

ここまで順調だったW&A、いきなり大量得点を献上っ!

しかも巨漢三人を敵に回したライ姉さん、なんとヒカルさんにタッチ交代!!


苦境を幼い剣士ヒカルさんひとりに押し付けたーーっ!!



「来たわね、カエデちゃん……」

「そうよね、マリナさん……」

「「こうでなくっちゃミチノックじゃないわ!!」」



二人ともナニ言ってんの〜〜っ!!





(注1 『南無阿弥陀仏の暇もない』 昭和57年ブルース・リーの『ドラゴン危機一髪』『ドラゴン怒りの鉄拳』が当時のリバイバル・ブームに乗りリメイクされた際のキャッチフレーズ。もちろん作者も前売り券を購入、販促ポスターを手に入れました。ちなみに当時のタイトルは『Return of the Dragon』です。


(注2 『藪を突いてヘビが出るかじゃが出るか』 言うまでもなく藪を突いてヘビを出す、鬼が出るかじゃが出るか、の洒落。


(注3 『どういうこったいルークコンタイ』 リュウ先生の得意技をアレンジしたもの。柳心無双流は、絶えず進化を続けてます。

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