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容赦の無い戦略

【星影きらら】


1 目的を持つ。

2 目的を達成するための装備をする。

3 目的を達成するための配置をする。

4 目的を達成するための行動をする(作戦を立案し、それに従った行動をさせる)。

5 必要ならばそのための規律を設ける。


集団、あるいは組織を『軍隊』と認めるには、これくらいの条件で十分だろうか?

もちろん『軍隊』なのだから、武装は必要だ。

目的の無い集団は烏合の衆だし、目的達成のための装備をしていなければ『役立たず』でしかない。


目的達成のための配置というのは、『作戦行動』に含まれるかもね。

そして規律が存在しなければ、その集団はただの『愚連隊』か『ならず者』や『与太者』の集まりとなるだろう。

翻ってボクたち、誤字脱字軍を見てみようか。


『目的』はある、オーバーズへの勝利だ。

じゃあ目的達成のための装備はできているだろうか?

残念ながら否としか言えない。


だけど勝つための努力は積んできたし、片手剣などはずいぶんと扱えるようになったはずだ。

扱えるようになったはずだけど、半分の数のオーバーズにずいぶんと痛い目に遭わされてしまった。

反省しよう、これはボクの見積もりが甘かった。


だけでなく、全体的に陸奥屋まほろば連合という軍隊の性格、あるいは特徴を把握していなかったかもしれない。

そうだ、スタッフ・カエデさんなんて、わざわざボクたちの講習会にまで参加してたじゃないか。

では『規律』という面。


これは大丈夫じゃないかな?

先生方が『達人先生』を相手にして、一般参加者と男子部が敵のネームドたちに闘いを挑む。

少なくともオーバーズの女の子と絡みたいからって、こっちに混ざり込んでくる輩はいなかった。


だけど、それでも。

ゲベール銃でミニエー銃に挑んだ第二次長州征伐か、ミニエー銃に甲冑武者が挑んだかのように装備からして違った。

まったく違った。


当然戦法、作戦も異なってくる。

その作戦というのが、今まさに男子部と一般プレイヤーたちを散々に懲らしめている、処刑人エクスキューシュナーズソード

あんなものを両手に持たれたら、しかも風車のようにブンブンと振り回されたら、人間が畑のように耕されてしまう。


そんな戦車タンク役を守るのが、タンク・デサントとでも例えようか。

小柄でキビキビと動ける拳闘家ファイターたちだ。

そして大振りでなくとも、確実に死人部屋へと人数を送り込める決戦要員の剣士と薙刀士も揃っている。


うん、強いよね陸奥屋まほろば連合。

軍隊の条件をもうひとつ加えるならば、それは『強い』ということに尽きるだろう。

そんな『軍隊』に、ボクたちは裸同然で向き合ってしまった。


そして惨劇を招いているんだ。

だけど、しかしそれでも。

オーバーズにだって死に帰りは出ている。


ボクたちの努力は無駄ではなかったんだ。

抗えボク、まだ試合は半ばだ。

絶対に諦めるんじゃないぞ、必ず視聴者さんたちに満足していただくんだ。


カエデ参謀が何を考えているかは分からないけど、幸いにして敵は今、西洋武器を携えている。

西洋武器での戦闘なら、こちらにだって分はあるはずだ。

ならば敵であるオーバーズをよく見て、適格な指示を出そうじゃないか。



「三人一組はダメだ、両端をねらわれる!! 二人一組、二人一組の編制で対応して!」



そうだ、敵が二人一組で来ると思っていたのが間違いの元。

オーバーズは縦横無尽、ひとりが走り回って他のメンバーがその隙に乗じてるじゃないか。

ならばひとりを確実に仕留める戦法、二人一組が最適解だ。


この作戦が功を奏した。

革鎧さえ着けてないオーバーズは、一人また一人と数を減らす。

イケるか!? 思わず願望がにじみ出る。


だが待て、さっきはそれで調子に乗って手痛い反撃を食らったじゃないか。

戦況をよく見るんだ。

本当に有利なのか、それとも罠なのか?


オーバーズの動き……うん、すでにいままでのヒット&ラン戦法は捨てて、三人一組の戦法に切り替えてるね。

どれだけ編隊フォーメーションの練度が高いんだよ、オーバーズ。

でも、それなら。そう来るのなら……。



「付け焼き刃戦法を試してみようよ、みんな。オーバーズのヒット&ラン戦法、丸パクリで試してみて」

「おう、あの打って走って走って打ってかい? 面白そうじゃないか、誰か私とバディ組んでみないか」

「乗った、標的はあの三人組みの手前、海賊艦長だ。いくよ!!」



ここでようやく、戦果らしい戦果が出る。

オーバーズの数が減っているじゃないか。

ようやくだ、ようやく有利な状況が発生した。


と、思ったら。



「敵襲っ、敵襲ーーっ!! 後ろだ、後ろからきたウギャーーッ!」



なんだって!? 今度は何なのさ?

慌ててマップを確認。

あぁっ!! カモメさんにソナタお姉ちゃん、隊長さんにメイドのミナミさん。


いわゆるオーバーズの主力部隊が、後ろから襲いかかって来た。



「みんな気をつけて!! 背後から敵の主力が来たよ!」

「ここまで押してて、まだこんな手があるのかよ!? どうなってんだ、オーバーズはっ!!」



それはボクが言いたいよ。

カエデ参謀、どれだけカードを取っておいているのさ?

と、ここでウチの陣形が俄に崩れた。


いや、そんな攻撃まで許していないでしょ?

崩れたというのは間違いかもしれない。

引きずり出されているんだ、たった一人の道化師に……。


音藤ポルテさん、ピエロキャラの芸達者。

その彼女がたった一人で十人以上の誤字脱字女子部を、引っ張り出しているんだ。

囮作戦。


この期に及んで、まだそんな手を打ってくるのか、カエデ参謀!!

まさか、まさかたった一人の陽動にそそのかされて部隊が崩壊するだなんて……。


守りの隙間からムーニーちゃんが侵入してくる。

海ちゃんが乗り込んで来る。

歌姫さんと巫女さんのコンビも暴れていた。


崩れた陣形の中、随所で戦闘が起こっている。

それはもう、どうにも止められない崩壊の図柄だった。

おのれオーバーズ、おのれカエデ参謀。


だけどボクたちはまだ終わってはいない。

何度でも蘇ってくるんだ。

ただひとつしかない命を奪われて土に還る分け前じゃないんだ。


今度こそ、今度こそ……。

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