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押せども押せども

【星影きらら】


こちらは西洋剣術を習ってるのに日本刀所持、あちらは日本古武道を習得してるのに西洋剣を手にしてる。

ほんとどうなっちゃってんの? というスクランブルエッグのような現状。

和風稽古着に西洋剣とか、ボクサーが双剣とかごちゃまぜ状態。



「数で勝ってんだ、おしきっちまえ!!」



イキリ立つ仲間たち。

もうこれは乱戦必至だよね。

そして、敵の『小隊長』は乱戦上等なプレイヤーだった……。



「斬ろうとするな、突け!! 突けーーっ!」

「チキショッ、こいつ速いぞ!」

「チビのくせに、つ、強いっ!?」



キミたち……敵の過去試合、チェックしてなかったの……?

『小隊長』が只者じゃないの、当たり前じゃん。

崩れる前衛、一撃で防具を破壊されたりキルまで取られたり。


とにかく動いて動いて、強烈な一撃を放って去ってゆく。



「なぁきらら、あのチビどうすりゃイイと思う?」



マリ姐ぇが訊いてきた。



「『小隊長』ひとりをどうするかってんなら、脚を狙うべきだね。だけどさ……」



問題は『小隊長』だけじゃない。

ブルマーの『アキラくん』、プラチナブロンドの『白銀輝夜』さん、そして地味に見えて実力者な『ユキ』さん。

片手剣レイピア両手剣ロングソードと得物を問わず、どんどんキルを奪ってゆく。



相棒バディ、相棒はどこだっ!?」

「うわっ、こっち来たぞ!!」

「三人一組!! 三人一組を忘れるなっ!」



無理な話だ。

三人一組というのは正面対正面、つまり真ん中の人間が敵に相対して初めて効力を発揮するんだ。

つまり正面対正面から、左右の人間がポイントを奪いにかかる技。


それなのに右端、または左端のメンバーが一発キルを奪われてしまって、三人体制を維持できなくなってしまっている。

一般プレイヤーと誤字脱字男性陣にとっては、大混乱という有り様。

それでも二人一組というオーバーズ戦法に切り替えて、どうにか足掻こうとするプレイヤーもいた。


しかし、トヨム小隊長に襲いかかればアキラくんがフォローする。

アキラくんを狙えばユキさんのフォローといった具合に、二人一組がたくさん。

あるいは四人一組という戦法を取られてしまい、こちらの軍はきりきり舞いさせられてしまっている。



「なんだってあんなに強いんだ、あいつら!?」

「そうだね、根本的に火力の差が大きい。その火力を存分に発揮できるよう、四人の連携が取れている。ってところかな?」

「じゃあどうすりゃイイってんだよ?」


「数ででゴリ押し、それ以外に勝機があると思う?」

「その数を活かすには?」

「良い質問だねマリ姐ぇ、あの驚異的な機動力……やっぱり脚から攻めて行きたいね」



ボクの方針に変化は無い。

そして奮闘する男性陣に、マリ姐ぇは大きな声。



「脚だ! とにかく数を削られても脚を狙えっ!!」



周りの女性陣も同調して、男性陣を励ます。



「数ではコッチが勝ってるよ!! 敵の脚狙って、脚っ!」

「囲んで動けなくするのも手だ!! 周り込め周り込め!」



すると敵も即座に反応する。

囲まれぬようスッスッと後退を始めたんだ。



「チッキショー、『それにも対策あり』かよっ!」

「だけどマリ姐ぇ、これで敵は『無敵』でも『伝説』でも、『神話クラス』でもなくなった。相手も神の子なんかじゃない、同じ人間で弱点が存在するって分かったよ」



ボクたちの気運がまさにそれ。



「おい、さがったぞ?」

「相手が嫌がった?」

「もしかして、イケんじゃね?」



いわば、手応えあり。

これはこのイベントで初めての出来事だったんだ。

ところがギッチョンチョン。



「アーーッ、ドラゴーーンッ!!」



ノリノリの気分に水を差す悲鳴。

キッズことパンツ一丁の若大将だった。

相変わらず自慢の楯を破壊されている。



「おい、あのバカまたやられてるぞ?」

「え? なんのことマリ姐ぇ、ボクの目には何も映らないんだけど」

「お前ヒデェ奴だな……」

「あ、またパンいちにひん剥かれた」

「映ってんじゃねーかよ、お前の目によぉ」



まあ、カビたステテコほどの役にも立たないパンいち剣士は放っておいて。



「男性陣の攻撃が始まったな」

「うん、でももう少し数が残っているうちに攻勢に転じたかったね」



そう、せっかくの突撃もいかんせん殺られすぎた。

数で押せない。

効果的な集中砲火を浴びせられないんだ。


逆に脆弱なウチの攻撃をくぐり抜けて、敵の護衛部隊四人が攻勢をかけてくる。

ボクシングではヘヴィ・ウェイトのジャブが他階級のストレート、あるいはそれ以上の威力なんて言われてるんだっけ?

陸奥屋まほろば連合の四人がそれだった。


何気ない一撃、軽く見えるショットのひとつひとつが、誤字脱字軍にとって致命傷だったんだ。



「……まさか、ここまで火力に差があったとはね」

「うん、ボクも驚いてるとこさ。事前勉強で敵のネームドが強いってのは分かってたんだけど……」


「予想外?」

「うん、予想外。っていうかあの火力、反則レベルだよ」


「ではきらら先生としては、どのような策を取られますか?」

「三先生を素通りさせたり、大男隊がボクたちを素通りさせたり。敵もオーバーズ対誤字脱字を望んでいるみたいだから。……勝負はそのときだね」



そう、元々がそういう企画のイベントなんだ。

男子や一般プレイヤーには悪いけど、ここで彼らがどれだけ討ち取られてもメインの企画には影響が無い。

むしろここで派手にやられてもらった方が、危機感倍増。


誤字脱字ファンはハラハラし通しで、三日間のイベントから目が離せなくなる。

そこでボクたち女性陣がオーバーズを倒したなら、感動倍増ファイナルシーンとしてはうってつけ。

ここはひとつド派手に行こうじゃないか。



「アーーッ、また殺されたーーっ!! ズルばっかで汚えぞーーっ!」



違う、そうじゃない。



どれだけキッズがキルを取られても、誰も喜ばない。

しかもパンツ一丁。

お願いだからさがってて、発言も不快だし。



「なんのーーっ!! ボクはオーバーズのオッパイちゃんとバトルするまでは、絶対に諦めないぞーーっ!! ホリャ!」



女性視聴者にとって不快な発言をする輩は、ウチの男性陣にもいた……。

お願いだからヤシロくん、あんまり決意を口にしないで……。

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