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下剋上マッチ、開幕

カエデさんは言う。



「まずは全員の目標の設定と統一。そこに至るまでの手段を、絶対的に徹底。それを基盤とした上で、使命の自覚、個人の充実、責任を理解、そして団結の強化です。私たち陸奥屋まほろば連合では、そのことごとくが達成されています、ですが、今回のような黒船の登場に際して今まで通りで良いのでしょうか!? それは否です! 陸奥屋まほろば連合は負けてはならない。その使命を自覚するところから、改めて兜の緒を締めなおしましょう!」



そうだ、今日の勝者、明日の敗者とならぬためには常に研鑽。常に稽古、それしかないのだ。

ここまで読み進めてくださっている読者諸兄は、そのようなことなど重々承知。

ガッテンしまくり左衛門であろう。


しかしいま現在は、努力などダサイだけ。

汗もかかずに利益だけ求める世界ではないか。

故に不正がはびこる。



「え〜〜っ? ダサイ努力なんかより華麗に勝つ方が良いじゃん? なんだったら、不正ツール入れた方が楽に勝てるっしょ」



嘆くなかれ同志同朋。

これがリアルなのだ。

そしてそれ以上に残念なのは、武門を叩きたいと称しておきながらあれこれと理由をつけ、結局なにもしない者ばかりなのだ。


彼らは汗のひとつもかかず、ネット知識や動画情報だけで達人気分なのだ。

実際私も職場で、「和田さん、古武道やってんですって?」と話しかけられ、私ですら手の届かない領域の神領域な技術論を述べてくださり、「何か納めてらっしゃるので?」と訊けば、「いや、やりたいとは思ってるんですけどね」と、やらない理由を添付してくれる。


やれない理由のある物をに、それでもやれとは言えない。

しかしこのような方々に限って、『ネット達人』になったりするものなのだ。

しかもネット達人の悪いところは、真贋を見極める力が無いものだから、ウソやパフォーマンスにコロリと騙されてしまうのだ。


件の職場の仲間なども、首をかしげるような動画を有り難がり、本物を記録した動画にはミソをつけまくってくれているのだ。

それだけならまだ良い。

私にご意見うかがいをしながら、動画を勧めてくれる者もいる。


彼の者などは私が「良し」の判断をしてから、件の動画を本物と判断する始末だ。

何が悪いのか?

自分は素人なのだという自覚が無いことだ。


彼らはすでに達人、反省することなど無いのが悪い。

幸いんしてこの世界、『王国の刃』というこの世界。

達人がいてホンモノを教えてくれる。


是非とも既存の価値観を捨てて、こうした場に赴いていただきたい。

ズバリと言うならば、我の名誉や腕力を求めるのではなく、だれかの誉れを守れてお言いたいのだ。

強いね、すごいね、カッコイイね、という賛辞を浴びるためではない。この国の名誉や誉れを守るため、剣を執ることはできないものだろうか。


サムライ、いまだ健在。

サムライ・ニッポンここにあり!

胸を張ってそれを世界に述べてもらいたい。

そのような願いは、夢物語なのだろうか。


ま、私の愚痴などどうでも良いか……。





私の憂いなど過去へと押し流し、いよいよプロリーグ戦下剋上マッチの開催だ。

今期からはスポンサーがつき、昇格したチームかその戦績によって賞金まで授与されるということで、今回のリーグ戦は特に世間の耳目を集めることとなった。


特に陸奥屋まほろば連合に所属する日本武術集団『W&A』、その喉笛を食いちぎらんとする西洋剣術チーム。

この対戦はアメリカのギャンブル雑誌、『ブッカーズ』まで賭けの対象にするほどの注目度である。

では、対戦相手の特徴を軽く説明。


西洋剣術チーム『ライオンズ・デン』。

こちらはロングソードを主体にした、攻撃型のチーム。

とにかくぶっ飛ばして殴りつけて斬りつけて。


その攻撃力の高さに苦杯を舐めた一般チームは、数多いと聞く。

中にはプロ廃業。

こんな連中とは闘えないよと、引退するチームもあったそうだ。


そして『スネーク・ピット』。

このチームは防御からのカウンター中心。

技巧派の流派である。もちろん『ライオンズ・デン』とは別流派だ。


クリティカルやキルの数こそ少ないが、勝率は驚きの十割。

レコードはパーフェクトなのだ。

腕自慢の集うプロリーグで、この記録レコードはスネーク・ピットとW&Aしかいない。


そして最後に『シルバー・コンドル』だ。

こちらは攻防一体、穴の少ないチームと言えよう。

我らがW&Aは、こうした難敵を下さなければならないのだ。


下剋上マッチ開幕。

我らがW&Aは、序盤を危なげなく闘った。

その出来を見ながら、賭け率も変動する。


そして日本武術対西洋剣術のゴング三分前、投票は締め切られた。

カエデさんが出した対応策は少ない。

小隊長ライを中心に、小隊参謀さくらさんと連絡を密にして。

それと軽快な攻防、軽く速くまとめて。


たったのそれだけであった。

入場前、円陣を組むプロチーム。

いわゆるキャプテンのライが声をかける。



「普通ならここでデカイ声出すんだろうけど、参謀どのの言うとおり。だからここは含み気合いでいこう」



グッと声を抑える選手たち。

そして戦場へ。

最初の敵はライオンズ・デンの六人。


あちらサイドは一人ひとりが、気合いの声をかけながら入場してきた。

『W&A』は全員稽古着姿。ゴー・ウェストの三人娘は白い上衣に朱の袴、悪羅漢の三人はカラスのように黒一色の稽古着。


袴の裾を絞ってスネ当てを固め、剣道の胴と垂れ。

手甲にハチマキ、そしてタスキをかけている。

もちろん足は、地下足袋である。当然のように得物は、それぞれ得意の物だった。


鎖の着込みの上に貫頭衣。粗末な手甲に足甲。そして簡易な鉄兜。

いわば西洋の足軽スタイルだ。


得物はぶん回し兵器のロングソードが三人。手槍が二人、片手剣レイピアがひとり。

ロングソードの三人は壁役というより戦車だろう。

過去の試合動画を何戦か拝見したが、まずこの三人が突っ込んでくる展開が多い。


試合前の整列と顔合わせ、オフィシャルからのルール確認。

ライオンズ・デンの六人は、足にリズムを保ちながら会場を煽る。

観客たちも「オウッ! オウッ! オウッ!」と声を挙げていた。



そして両陣営に別れて……ゴング!!

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